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『勇敢職』になってみた編

第30話 この世で一番の『可愛い』が、今ここに。(3)

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「俺一人ならともかく、クイナが一緒に行きますからね。用の無い何者かには見つからないに越した事は無いんですよ」

 そう言って苦笑すれば、彼も「それは確かにそうですね」と割と簡単に引き下がってくれた。

 今言った事も決して懸念していかなった訳じゃないが、実は本命の理由は別にある。

(金の鎧って、王族の色だったんだよなぁー……)

 そんな風に独り言ちる。

 だから、ある意味では「慣れ親しんだ色」。
 しかしそれが王族の色であった以上、俺を嫌っていたあの弟や裏切ったあの父の色でもある。
 せっかく解放されたというのにそれらの色を身に纏うのは、決していい気はしなかった。

 
 ――という影の理由を、まさか正体を明かしていないダンノ相手に話すわけにもいかないだろう。
 だから正直、ダンノがあまり食い下がらずにいてくれて助かった。


 俺が内心でそんな安堵をしていると、クイナが「アルド!」を声を上げる。

「新しいお洋服なのっ!」

 そう言ってクルリとターンした彼女は、やはり保護した後にやってやった平民ルックで中古品の薄汚れたワンピースではない。
 それよりもうちょっと丈夫な生地で作られた、きれいな新品の装いだ。

 白のシンプルなインナーに、動きやすい茶色のズボン。
 何を踏んでも大丈夫なように安全で頑丈な皮ブーツの中に巣本の裾をインしていて、上からはこげ茶色の生地に白い糸でどこかの民族の刺繍が大胆に施されたフード付きのコートを身に纏っている。

 肌を極力晒さない装いなので森に入っても安心だし、服にはすべて防御の魔法陣が織り込まれている。
 それだけに値は張ったが、何よりもクイナに似合っているのでそれでいい。

(金はほぼすっからかんだけど、宿屋には5日間分渡してるしこれから稼ぎに行くんだから当面は大丈夫。最悪、もし5日後までに金が工面できなかったら、その時には別の手を打てばいいだけだし)

 などと、ちょっと楽天的な考え方をしつつ、「似合ってるぞ」と言葉にしながらクイナの頭をナデナデとした。
 くすぐったそうに、しかし嬉しそうに笑う彼女は、元々可愛くて新しい服にはしゃいでたのに更に嬉しくなったようで、耳をピコピコ尻尾をフリフリと無意識的な感情表現に余念がない。

 その姿は、どんなに穿った見方をしても可愛いに違いなく。

(もしかしたら、この子の可愛さは世界一なのでは……?)

 などと、自分の子供でもないくせに、柄にもなくそう思ってしまったのだった。
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