追放殿下は隣国で、セカンドライフを決意した。 〜そしてモフっ子と二人、『ずっとやりたかった10の事』を叶える事にします〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!

文字の大きさ
上 下
55 / 105
『勇敢職』になってみた編

第30話 この世で一番の『可愛い』が、今ここに。(1)

しおりを挟む


 例えば回復薬には消費期限が存在するという事。
 初級のもので期限は1年。
 そしてどうやら、上級のものになればなる程その期限も伸びるらしい。

 とりあえずドクや麻痺、睡眠の状態異常に効く薬はそれぞれ初級の物を買うことにして、あとはHPポーションとMPポーションだが。

「これら2つは、本人のHPとMPの総量によるんです。どれだけ上級の物を選んでも回復できる上限は変わりませんし、逆に総量に対して少ないものを飲んだとしても焼け石に水です」
「なるほど。でも俺、自分の総量とか良く分からなくて」
「それなら大丈夫です」

 困り顔の俺にそう言い、ダンノさんはトンッと自分の胸のあたりを指さす。

「先ほど登録した時にもらったプレートはお持ちですよね?」
「あぁそうだった」

 そう言って首に下げたプレートを持ち、「ステータス」と言ってみる。
 と、先ほどギルドでなったようにステータス情報がミョンッと現れた。
 早速必要な情報を確認してみる。
 
「えーっと、HPが『3,246』、MPが『3,599』? ですね」
「え」
「え?」

 驚きの顔になったダンノに、俺は思わず聞き返す。
 すると彼はすぐに「あぁいえ」と言い、目をぱちくりしながら言った。

「凄いですね、3,000台の数値なんてよっぽど厳しい訓練をしていないと到達できないのですが……もしかして軍にでも?」
「あ、いや。ただ確かに、私の師匠が軍関係者だったので」
「なるほど、それで……しかしここまでステータスを伸ばすとなると、相当な訓練だったのですね」
「えぇそりゃぁもう」

 ぶっちゃけ、訓練中に何度「死ぬかも」と思ったか知れない。
 まぁ俺は身分が身分だったから、実際にはちゃんと限界を見極めながら鍛えてくれていたんだと思うけど。

 しかし思い出せばため息が出る。
 するとそこから大変さを察したのだろう、ダンノは「よほど修羅場だったのですね」と労ってくれた。
 そして「それならば」と必要なポーションを選んでくれる。
  
「両方とも上級の物を選んでおいた方が良いでしょう。他のに比べると少し値は張りますが、Fランクの依頼程度なら使う事もないでしょうし上級は10年持ちますからその点でも安心です」

 と、言われた時だった。
 足に何かがヒシッとしがみつく。
 下を見ると、そこにはキツネ耳の少女が引っ付いていて。

「アルドー、お菓子美味しかったー!!」

 満足そうな顔で俺に報告してきた。

「おーそうか、そりゃぁ良かったな」

 そう言って頭を撫でつつ、俺はダンノさんに言っておく。

「クイナの飲み食い代、買い物の会計と一緒で良いですか?」
「構いませんよ。というか、再会のお祝いにサービスにするつもりだったのですが……」
「それは流石にお世話になりすぎて居た堪れないので、今回は払わせてください」

 眉をはの字にしてそうお願いしてみれば、彼は笑いながら「分かりました」と言ってくれた。
 これでちょっと安心だ。

しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~

紅月シン
ファンタジー
 聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。  いや嘘だ。  本当は不満でいっぱいだった。  食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。  だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。  しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。  そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。  二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。  だが彼女は知らなかった。  三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。  知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。 ※完結しました。 ※小説家になろう様にも投稿しています

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

処理中です...