追放殿下は隣国で、セカンドライフを決意した。 〜そしてモフっ子と二人、『ずっとやりたかった10の事』を叶える事にします〜

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とある商人との出会い編

第13話 めっちゃ良い人!(1)

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 先の自分の言動を少し恥ずかしく思いながら、俺は「ははは」と空笑いする。
 と、オジサマが俺に向かって手を差し出した。

「私はこの子・メルティーの父親で、ダンノと言います」
「あぁ、俺はこのクイナの旅の同行者・アルドです」
「おや、この国の王太子殿下と同じ名ですね」

 こんな偶然があるのですね。
 そんな風に言われた時、俺は丁度彼から差し伸べられた手を握っていた。
 まさかそこを指摘されてると思っていなかったので、動揺に思わず握る手に力がこもってしまう。

 その事に首を傾げるダンノさんだが、まさか初対面で「それは正に私です。つい先日廃嫡になったので今はただの平民ですがね。はははっ」とか、言えるはずがない。
 とりあえず引きつる口角を叱咤して、長年培ってきたなけなしの笑顔で往なしておくことにする。
 まぁ元々そういうのは不得意だったし、あまり自信は無いんだが。

「す、すみません。クイナがそちらのお嬢様にご迷惑を」

 引きつっているかもしれない笑顔のままでそう言えば、彼はフッを人の良さそうな笑みを浮かべる。

「いいえ、気にしないでください。こちらもドーナツ、ありがとうございます」
「あぁいえいえ」

 互いにそんな大人のやり取りをしている横で、クイナはダンノさんの娘・メルティーから飴を一粒受け取っていた。

 貰ったそれを口の中にポイッと入れて、コロコロモグモグをすると両手の頬に手を添えた。

「甘ぁー!」

 とても嬉しそうである。

「クイナ、俺は言ったのか?」
「あっ、ありあほ、なの!」
「どういたしまして」

 クイナが慌ててお礼を言おうとして、何だかよく分からない言葉を口にした。
 一瞬「もしかして獣人風のお礼なのか?」と思ったが、多分違う。
 貰った飴が座りの悪いところにあったせいでただ滑舌が残念だっただけである。

 しかしまぁメルティーが返事をしてくれたという事は、おそらく気持ちは伝わったという事なんだろう。
 結果オーライである。


 楽しそうに笑いあっている子供達を微笑ましい気持ちに包まれながら眺めていると、ダンノさんが聞いてくる。

「アルドさんは、ノーラリアにはご旅行に?」
「ご旅行というか、ちょっと見てみて良さげだったら移り住みたいなぁと思っていまして」
「そうなのですね、入国は初めてで?」
「はいそうです」

 そう答えて頷くと、彼は色々と教えてくれる。

「ノーラリアは多国籍で多種多様。その影響で、色々な国の品々が集まる場所ですよ。喧しいのが嫌いでなければ、活気があって住みやすい場所だと思います」
「そうなんですね」

 少し期待が高まった。
 色々な品が集まるとか、ちょっとどんなのか見てみたい。

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