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とある商人との出会い編
第11話 クイナの尻尾がパタンパタン、フヨンフヨン。(1)
しおりを挟むカタコトカタコトと馬車に揺られつつ、俺とクイナはノーラリアを目指している。
クイナと二人で待ってくれていた馬車へと戻った俺は、御者に「脅威は去った」という事、そして「クイナを拾ったので一緒に乗せていってほしい」という事を伝えた。
勿論彼女が獣人であるという事は伏せて、「襲われていた。どうやら孤児らしい」と言っておいた。
すると俺の言葉を信じた御者は「次の停留所以降は嬢ちゃんの分の運賃もきちんと払う事」という条件で、途中乗車を許可してくれた。
こうして晴れて、二人は一緒に目的地にへと出発したのだ。
それからおよそ3時間後の今、クイナはとってもごきげんである。
途中で馬車が立ち寄った街で買ってやったクッキーを美味しそうに頬張りながら、彼女は尻尾を右にパタン、左にパタンと振り子のようにさせている。
それが果たして喜びを示す行為なのか、最初は分からなかった俺だけど、鼻歌交じりと満面の笑みなので多分間違いないだろう。
その姿は、とっても可愛くとっても和む。
が、本当ならば即刻アウトだ。
だって獣人は入国できない筈のこの国で、獣人であることの証拠である尻尾が丸出しなのだから。
(ホント、今乗ってるのが俺達だけで良かったよ)
せっかく俺が着ていたフード付きの長いコートを貸してやったっていうのに、パタンパタンさせてるせいで尻尾が全く隠れていやしない。
今は良いが、どうやらクイナはクッキーに夢中すぎて自分が隠れないといけない存在であるという事が頭からすっぽ抜けているようだし、これは一度注意しておいた方が良いかもしれない。
「おーいクイナ、ごきげんなのは良いけどな、周りの目も一応は気にしろよー?」
その言葉を聞いたクイナは、まずキョトン顔になり、ゆっくりと首を傾げた後でハッとした。
そして慌ててコートの中に尻尾を押し込み、シュンとした顔になる。
このくらいの年頃の子は、こんなにも表情豊かなものなんだろうか。
ふとそんな風に思いながら、俺は彼女の頭をポンポンとしてニッと笑う。
「怒ってないよ。ちょっと窮屈だろうけど、それも国境を超えるまでの辛抱だからな」
それまで頑張れ。
そんな風に彼女に言えば、彼女はコクリと頷いた。
それにしても、だ。
先程見えていた尻尾を見るに、やっぱり旅の疲れが溜まっているように見える。
おそらくは、身綺麗にする余裕も無かったのだろう。
くたびれた様子の尻尾は、土埃を被って薄汚れていた。
(とりあえず、宿に着いたらまずは風呂かな)
出来れば早く身ぎれいにしてやりたいところだが、下手にどこかに滞在して獣人連れであることがバレれでもしたら、間違いなく厄介な事になる。
クイナ自身の安全のためにも少しの間は我慢してもらうしかない。
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❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
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