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新たなる旅立ち編

第1話 信じていたのに。(1)

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 場所は王宮・謁見の間。
 沢山の貴族たちが参列するその場で俺は父である王からこんな事を言われたのだった。

「アルド、お前には失望した。まさかあの様な場で偽りを述べ、自らの婚約者を陥れようとするとはな」
「……は?」

 何を言ってるんだ、この人は。
 そう思った。
 
 確かに俺は、先日沢山の者たちが居る夜会の場で自分の婚約者の悪行を暴露して、婚約破棄を突きつけた。
 だから呼び出された時、その件に触れるのだろうとは思っていた。
 しかしまさか紛うことなき事実をこうして公衆の面前で否定されるとは、これっぽっちも思ってなかった。



 婚約者に成った女が金遣いの荒い人間だということは、前からそれなりに知っていた。
 しかし婚約して以降、その傾向が顕著になり、それが国庫に及んだ所で流石に見逃せなくなったのだ。

「しかし陛下、彼女の国庫の使い込みは本当です」
「バレリーノはあくまでもまだ婚約者、彼女に国庫をどうにかする権限はない」
「ですから、その状態で彼女が俺の后に割り当てられるはずの国家資金に手を付けていたのが問題なのです!」

 しかもその金を、彼女は他の所に寄付――という名の方々への賄賂としても使っていた。
 そうでなくても婚約者の立場で国庫を使うのが問題なのに、そもそも后のために使うから許される資金を自らの利のための賄賂に使うなど、許される筈がない。



 その兆候を掴んだ時、一度国王に本格的な調査を進言した事がある。
 しかしそれは、国王によってナァナァにされた。

 ただ、握りつぶしたのではなく、話題を逸らされた感じだった。
 だから俺は、そこに活路を見出した。



 ここまで事が大きくなれば、流石に国王だって重い腰を上げざるを得ない。
 それを俺のせいにしたっていい。
 大切なのは、王族の権威の下できちんと調査することだ。
 そうすれば、真実は必ず明るみに出る。
 ナァナァには出来なくなる。


 きっと正しい選択をしてくれる。
 だって国王も、俺と同じく国を愛し未来を憂いているのだろうから。

 そう、信じて行動した。


 確かにバレリーノの家は、貴族界に多大なる影響力を持っている。
 だからおそらく、国王もできるだけ事を荒立てたくないのだろう。
 が、それではダメなのだ。

 だって、国庫が完全に食いつぶされてしまってからではもう全てが遅いのだから。

 それなのに。

「その様な事実は無い」
「……それはきちんと調べての事ですか」
「お前は私の采配を疑うのか」

 本当に調べたのか、形だけ調査したのかは分からない。
 しかし一つ分かるのは、国王が国の未来を選ばなかったということだ。
 だって本当に調べたのだとしたら、必ず証拠が出てくるはずだ。
 俺は王に直接決定的な証拠を提示し、それを王が見たことをきちんとこの目で確認したのだから。

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