【完結】伯爵令嬢が効率主義の権化だったら。 〜ドレス汚し犯(侯爵子息)の行き着いた先〜

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エピローグ

第1話 甘い措置(2)

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 彼はセシリアの友人であり、彼女に仕える執事でもある。
 だからこそ、せっかくの安らぎの時間をたまには満喫してほしいと、本心から思っている。
 これまでセシリアが頑張っていた事は、一番近くに居たゼルゼンが、誰よりも分かっているのだから。

 しかし「本当は水を差したくはないんだけど」と前置いてから、彼はこんな風に言葉を続ける。

「俺もあの助言は、クラウン様に対して甘すぎる措置だと思った」

 友人であり、執事である。
 だからこそあえて口に出さねばならない事だって、呈さなければならない苦言だってあるのだ。


 不服そうに、しかしその一方で少し申し訳なさげに告げられたその言葉に、セシリアは思わず苦笑した。

 例え口には出さなくとも、その言葉の裏にあった葛藤も心配してくれているからこその苦言も、内心を読み解こうとするまでもなく分かったからだ。
 

 そしてだからこそ、セシリアは「何という事もない」と口調で示す。

「別に甘やかしたつもりなんて無いよ。ちゃんと『自分で考えろ』って突き放したじゃない」
「助言の方が、直接的な指摘よりも余程頭を使うんじゃないのか」
「だからそんなの大した労力じゃないってば」

 そんな労力を使っておいて、一体どこが「甘やかしていない」んだ。
 そう言いたげなジト目に、セシリアはレガシーにしたのと同じ答えを返した。
 
 しかしそれでも彼は口をへの字にしたままだ。


 それもその筈、ゼルゼンから見ればクラウンは主人のドレスを汚した加害者だ。
 そしてドレスを汚すという行為は明らかな失礼に当たる。
 だからその行為に対して憤る事も「その様な行為を故意にした者にかける情けなど無い」思うことも、彼の立場からすれば筋が通る話だ。

 しかし彼は、セシリアの友人であり執事であるが故に、セシリアという人間の事もよく理解していた。

「どうせお前の事だ、『更生の余地があるなら手を貸してやりたい』とでも思ったんだろうけどな」

 ため息を吐きながら告げられたその言葉は、セシリアの真意のど真ん中を射抜いた。

「流石はゼルゼン」
「『流石』じゃない」

 「よく分かってる」と茶化したセシリアに、彼は呆れながらもしっかりと嗜める事を忘れない。

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伯爵令嬢が効率主義の権化になったら 〜厄介事(第二王子と侯爵子息)が舞い込んできたので、適当にあしらいました〜
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