【完結】伯爵令嬢が効率主義の権化だったら。 〜ドレス汚し犯(侯爵子息)の行き着いた先〜

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兆し

第13話 準備と誠意をきちんと示せば(2)

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 覚えておけばいい。
 そんなセシリアの言葉に、クラウンは少しホッとした様な表情になった。

「それなら俺にも出来そうだ」
 
 小さな声でそう言ったのが、微かにセシリアの耳まで聞こえてきた。


 そんな彼を視認しながら、セシリアは「最後に」と4本目の指を立てる。

「自身で考えた後は、きっと誰かの助言が欲しくなるでしょう」

 先ほども少し言ったが、何も相手に何かを尋ねる事自体は別に悪くない。

 何かの答えを他人に求めるのではなく、「自分はこう思ったのだけど、どう思うだろう?」と相手に尋ね、その答えをまた自分の糧にする。
 その行いは、むしろ自分の視野を広げる為にも必要な措置だとセシリアは思っている。

 しかし今の彼には、おそらくそういう類の話をできる相手が居ない。
 だから彼に、好助言をしてやる事にした。

「その時はまず、侯爵家の執事を捕まえると良いと思いますよ」

 執事とは、本来主人の身の回りの世話をするのが仕事だ。
 しかし彼らの職務はそれだけではない。
 特に男性貴族に付く執事は、その他に『主人の執務の補助をする』という物が含まれる。

 その為他の使用人とは違い、執事は社交に関する一定のノウハウや貴族の慣例を叩き込まれるものなのだ。
 だから政治の絡んだ貴族同士の人間関係に関する相談は、メイドよりも執事相手にした方が効率的だ。


 特に筆頭執事の彼は、間違いなく優秀だ。
 でなければ、見栄と権力をかさにきて社交場を謳歌する当代の当主が今まで社交界で大きなポカをしなかった理由が付かない。

 優秀が故にきっと彼も、現在は主人の手伝いで今回の火消しに回っているだろう。
 だから明らかに忙しい身だろうが、同時にもしかしたら侯爵以上に現状を理解できているかもしれない。

 そんな事をつらつらと説明すると、クラウンはひどく顔を曇らせた。

「しかしバエルは、俺に厳しいんだ。いつだって俺の話を聞いてくれない。……俺の相談になんて、きっと乗ってもらえない」

 彼が過去に筆頭執事の彼からどういう対応を取られていたのかは、セシリアには知りようもない。

 しかしそれでも彼のこの表情や声を聞けば分かる。
 彼がその執事に「拒絶された」と思うような何かが、きっと一度ならずともあったのだと。


 しかしそれでも、セシリアは動じない。
 むしろ自信満々に「大丈夫」と口を開く。

「遊び半分で忙しい執事の時間を浪費させるならば未だしも、きちんと自身の考えを纏め、彼の空き時間を探して、『どうにかしたいのだ』というその気持ちを伝える事が出来れば、彼は答えてくれるでしょう」

 それが例え大きな失態を演じた子供でも、彼は自身が仕える侯爵家の子息だ。
 邪険にするにも限度がある。
 仕えるべき家の、しかもきちんと準備をしてきた子供の真面目な相談事に誠意を示さねばならない立場に、彼はあるのだ。

 セシリアがそう伝えると、クラウンは噛み締めるように「そうか」と言った。
 そしてぎゅっと手を握りしめて「その時が来たら、一度やってみる」と言って頷いた。

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