【完結】伯爵令嬢が効率主義の権化だったら。 〜ドレス汚し犯(侯爵子息)の行き着いた先〜

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兆し

第6話 瞳の奥の可能性(1)

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 確かに自業自得ではある。
 日頃の行いが悪いから、こういう時に周りに助けてくれる者が1人も居ないのだと言われれば、確かにその通りでもある。

 しかし、それと同時に彼の家に政敵が多いのは確かで、それによる悪意に半ば巻き込まれている節もある。

 でなければ、こんなに状況が悪いのにも関わらず、現状彼を直接的に加害する者が誰1人として居ない事に対して説明がつかない。

 彼に関しては、更に別の噂を投入する気配も無いと、ワルターからも聞いている。
 周りは、良くも悪くも彼を遠巻きにして、ただ除け者にしているだけなのだ。


 しかしそれが彼を精神的に傷つけないかというと、決してそうでは無い。

 理由さえ分からないまま、周りに避けられ続ける。
 そんな現実に対する10歳児のストレスは、計り知れない。

 そして家に向けられた悪意のとばっちりなど、子供の彼が被害を受ける理由としては……あまりに、理不尽だ。
 

 そして、そんな現状にも関わらず彼は社交場への露出を控えてはいないのは。
 
(きっと『こんな事如きで社交場から逃げるなど、侯爵家のする事ではないわ!』とか、侯爵あたりが言ってるんだろう)

 確かにその考えにも一理あるが、間違いなく息子の心を蔑ろにしている。
 そんな現状が、良い筈はない。

 が、それだけではまだ彼に手を貸す根拠としては乏しい。

「……時が経ち、噂が薄れれば、おそらく貴方の周りには人が戻ってくるでしょう。それでも知りたいのですか?」

 以前の様に戻りたい。
 そんな気持ちなのだとしたら、事が『王族案件』にならないと分かればおそらく彼の周りに人は戻ってくるだろう。

 確かにそうして戻って来た者達は、この先また何かがあった時には必ず、クラウンから遠ざかるだろうが、侯爵家という地位自体が揺るがない限りはまた何度だって帰ってくる。

 深く考えずに「そういう物なのだから」と思えば、別に事実を知る必要もない。

 セシリアがそう進言すると、彼はすぐに首を横に振った。

「それでも、ちゃんと知りたいんだ」

 彼は訳の分からない現状を、やり過ごすのではなく自ら行動する事を選んだ様だった。

 それは一種の決意の表れだと、セシリアには思えた。 
 しかし、まだ少しだけ足りない。

「……私がこれからその理由を話したとして、その話の内容は貴方を今以上に不快にし、悲しい気持ちにさせるかもしれません」

 目を伏せながら、セシリアは静かにそう告げた。
 そしてスッと視線を上げて、彼に尋ねた。

「それでも貴方は聞きたいのですか?」

 セシリアは、クラウンをただ真っ直ぐに見据えた。
 その瞳が、言葉と共に彼に問う。

 その勇気と覚悟が貴方にはあるのか、と。


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