【完結】伯爵令嬢が効率主義の権化だったら。 〜ドレス汚し犯(侯爵子息)の行き着いた先〜

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兆し

第3話 「知りたい」と思う事(2)

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 今にも「ごめんなさい」と言い出しそうな彼女の雰囲気に、レガシーは些か焦りを抱いた。
 彼からすれば、別に謝罪など必要無いのだ。
 それなのに謝られるなんて、そんなのは居心地が悪すぎる。


 確かに彼女の言う通り、聞いた話には不要な情報だって大いに含まれていた。

 そもそもレガシーが欲しかったのは、彼女の人柄や考え方の傾向なんかだけだ。
 噂の的になったアレコレの経緯や裏事情、その考察なんてものは、少なくとも彼にとっては全くの不要なものであり、確かに漏れ聞こえてくる話にはその類の話の方が多かった。

 しかし。

「……見合う収穫もちゃんとあったし」

 これは彼の本心だ。
 彼女がどんなアクションを受けて、どうリアアクションしたのか。
 その根底には彼女が何を好み何を嫌うのか、その片鱗がきちんと見て取れた。
 
 そしてそれを吟味して、レガシーは彼女を『是』とした。
 
 セシリアの言動には、常に一本筋が通っている。
 時には感情で動くこともあるが、それはあくまでもセシリアが持つ権利に逸脱しない。
 直接話していて抱いたそんな印象が決して間違ってはいなかったのだという事を、得た情報はきちんと証明してくれた。


 それに、だ。

「何だか公平じゃないでしょ? 君は僕を見透かすくせに、僕は君の事が分からないなんて」

 セシリアは、人の心を察するのが得意らしい。
 レガシーも、時々彼女に全てを見透かされている様な気持ちにさせられる。
 そして、それは何だか――。

(ちょっと悔しい)

 相手には知られているのに、自分は相手の事が分からない。
 それは何だかズルい様な気がして。
 そんな状況を打開する為には、彼女から直接得る情報だけでは足りないと思った。

 行動する事には、非常に躊躇した。
 しかしそれでも『知っていたい』という気持ちの方が勝ったのだ。

 
 それはレガシーにとって、今までに感じた事のない感情だった。

(何だか無性にこそばゆくて)

 何故そんな気持ちになるのか。
 そして何より「悪くないな」なんて思ってしまっている自分自身が、レガシーにはよく分からない。


 そんな風に思いながら、視線をチラリとセシリアに向けてみると。

「――それは」

 大きく見開かれたベリドットと視線が鉢合わせする。

 そして。

「とても嬉しい事ですね」

 そう言って、まるで花の蕾が綻ぶかのように彼女がフワリと微笑んだ。

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セシリア(4歳)が様々なチャレンジの中で『効率的な生き方』について学んでいく成長ストーリー。 
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