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兆し
第2話 気になって当然(1)
しおりを挟む違うのならば、とっとと否定してしまえばいい。
しかしそれをすると、それはそれでちょっと困った事になる。
(説明したら、今度は「では一体何の為に?」って聞かれるよね、多分)
別に問われる事自体が嫌な訳ではないのだが、出来れば言いたくない。
だって何だか、気恥ずかしい。
そういう訳で言い渋ったレガシーだったが、その躊躇いを見逃すセシリアでもない。
否、その様子がむしろセシリアの好奇心をくすぐった様だった。
視線を彷徨わせるレガシーに、真っ直ぐと熱視線を向けるセシリア。
2人の攻防は、結局1分程で終わりを告げた。
レガシーは、深い深い息を吐きながらこう思う。
(……そもそも僕じゃぁセシリア嬢には勝てないよ)
そんなの、最初から分かってた。
そんな風に独り言ちる。
少なくとも今のレガシーの対人スキルでは、彼女の攻撃を避けきる事など出来はしない。
加えていなす為の方便も何一つとして思いつきはしないのだからお手上げだった。
だから、ここは。
「その噂、お父様の耳にも入っちゃったんだよね。そのせいで『出来ないのでは無いのなら、きちんと周りと交流しなさい』って言われてさ……」
早々に白旗を上げ、遠回しに肯定する代わりにちょっぴり愚痴を零しておく事にした。
どうやらその話を聞いて、レガシーの父親は元々自身が抱いていた『極度の内向的性格なレガシーには、周りとの交流は出来ない』という考えを改めてしまったらしい。
それは、事実かそうでないかと言えば事実だろう。
しかし正しく認識される事が必ずしも良い事とは限らない。
「全く、面倒な事になっちゃったよ」
レガシーは、悲壮感を漂わせながら、ため息交じりにそう言った。
するとその声に、セシリアも苦笑で「では、もしかして」と尋ねてくる。
「いつもは必ず持っている本を今日お持ちでない理由は――」
「御明察」
そのせいですか?
おそらくそう続く言葉を先回して、レガシーは言葉を被せるように肯定した。
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本作著者の異世界ざまぁセレクション
◆ 『野菜の夏休みざまぁ』(全4作品)◆
●この作品の前編(第2部)は、こちらから。
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伯爵令嬢が効率主義の権化になったら 〜厄介事(第二王子と侯爵子息)が舞い込んできたので、適当にあしらいました〜
セシリア(10歳)が、社交界デビューをきっかけに遭遇した様々な思惑と面倒事を『効率的』に解決していくウィニングストーリー。
●この作品の裏話を読みたい方は、こちらから。
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【裏話】伯爵令嬢が効率主義の権化になったら。
本作の設定秘話や執筆の裏話などを書き連ねています。
※一部ネタバレを含みます。
●主人公・セシリアの幼少期(第1部)から読みたい方は、こちらから:
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幼伯爵令嬢が、今にも『効率主義』に目覚めちゃいそうですよ。
セシリア(4歳)が様々なチャレンジの中で『効率的な生き方』について学んでいく成長ストーリー。
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