男爵令嬢が『無能』だなんて一体誰か言ったのか。 〜誰も無視できない小国を作りましょう。〜

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第五章:お見合いの季節(?)がどうやらやってきたようです。

第53話 ワーカーホリック……では無いですよね?

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 その言葉に、私は思わず「え、いえ、そんなまさか……」と答えます。
 すると彼は「自覚が無いとは重症ですね」と口の中で呟きました。

「リズさんが心配するのも無理ありません。この分ですと、普段リズさんから何かしらの忠告があっても『キリのいいところまで』や『コレだけ終わらせるから』などと言っているのではありませんか?」

 この言葉に、私は返す言葉がありません。
 確かに思い当たるからです。

 そしてそういう場合、いつもリズはジト目になりながらもそれ以上は何も言いません。
 おそらくそれは、『従者としての領分を侵さないように』と思っての事なのだと思います。


 すると、おそらくそんな私たちの背景に少なからず思い至ったのでしょう。
 彼が少し諭す年長者の声で言います。

「しかしそれも、例えば『自分の他にも、自分と同等以上の権限を持って動ける相手』や『一緒にご飯を食べる相手』が居ればどうでしょう?それなら姫様も、わざわざご自分で小さな無理をなさろうとは思わないのでは?」

 ……もしかしたら、そうかもしれません。

 例えば自分と同等以上の権力を持つ相手が居たならば、役割分担が出来ます。
 例えば誰かとの約束があれば、よほどの緊急案件でない限り食事は定刻通りに摂る筈です。

 今王族は、私とお父様の2人。
 分担は既にお父様に比重を掛けた形で成されている訳ですし、お父様はお父様の職務がお忙しいですから食事等の約束も、そう頻繁にはしたりしません。



「……そんな仕事に追われる日々ではなく、もっと幸せな毎日を送ってほしいとリズさんは思われているのではないでしょうか」

 と、どうやらこの時ローレンツは言ったらしいです。

 何故『らしい』なのかというと、私は自分の思考にかまけて彼の言葉が全く耳に届いておらず、この事を後で苦笑気味に彼自身から教えてもらったからでした。

 ではこの時の私が何を考えていたのかというと、こういう事でした。

「なるほど、新たな王族職の人員募集と考えれば良いわけですね……」

 こうして私の『婿探し』が始まったのです。

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