男爵令嬢が『無能』だなんて一体誰か言ったのか。 〜誰も無視できない小国を作りましょう。〜

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第五章:お見合いの季節(?)がどうやらやってきたようです。

第52話 ローレンツにちょっと相談してみましょう。

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 という訳で、リズの強い勧めがあり、一気に結婚が秒読み状態になりました。

 確かに彼女は、国が独立した時にこの事を気にしているようでした。
 が、あれ以降特に何も言わなかったですし、私自身「時が来れば」とは思っていたものの、そもそも私には現在特定の相手も居なければ「結婚を急がなくては」という気持ちもなかったのです。


「――という事なのよ、ローレンツ」
 
 他の者の意見も聞きたいと思って、私の護衛についてくれているローレンツに私は事の一部始終を話しました。
 因みにリズは、今は別の用事で居ません。
 逆に言うと、この時を狙って話しています。

「私は別にそれほど急ぐ事もないと思うのですが、リズから『そろそろ国務のアレコレにも、ひと段落着いたでしょう。これからは国の事ばかりにではなくご自分の事もお考えなさいませ』と言われてしまい……」

 ハァとため息を吐きながらそう言えば、ローレンツは「うーん」と小さく唸ります。

「私としては、リズさんの気持ちも分かります。あくまでもこの1年間姫様の御身の護らせていただいている私の印象ですが、姫様はどうにも自分を後回しにしすぎる気がします」
「そう、でしょうか?」

 私が思わず首を捻ると、彼は「そうですね、例えば……」と言葉を探します。

「例えば休憩中に、『最近少し手こずっている作物の新品種開発に、嬉しい成果が出た』言われたら?」
「それはもちろん、ブラウンのところに急ぎます!」

 国の繁栄の一端を担う品種改良とブランド化。
 それに光明が出たとなれば国としても喜ばしい事ですし、何よりそれに携わっている方々がどれだけ心血を注いでそれに取り組んでいるかを、私はよく知っています。
 そんな彼らと成功の喜びを分かち合い労う事は、私が姫としてすべき事です。

「では、例えば昼食に入る5分前にアントニオから『作物の栽培スケジュールについて緊急で話がしたい』と打診があったら?」
「もちろんすぐに会う事にします。アントニオがそう言うのなら、本当に緊急なのでしょうし」
「昼食は?」
「後で食べれば良いでしょう?」

 そう答えると、ローレンツはハァと小さく息を吐きました。

「……姫様、だからです」
「え?」

 言っている意味が、よく分かりません。

 すると彼はこう指摘します。

「先程の話、成果を上げた臣下を労いたいのなら、この場に呼びつければ良いのです。そしていくら急ぎとはいえ、話したい内容は『作物の栽培スケジュール』。きっちり食事を召し上がられた後でも十分間に合います」

 そんな彼の主張を聞いて、私は「確かにそれはそうですが」と思わず反論したくなります。

 それでもやっぱり本当に労うのなら現場の人間全てに一人一人声をかけていきたいですし、食事だってまだ摂り始める前なのですから早めに片付けておいた方がお互いのためでしょう。


 が、そんなことを伝えると、ローレンツは苦い顔もしました。

「姫様、私はそうやって理由をつけては自分よりも仕事を優先する人種と、今まで何度も出会った事がありまして。そういう人間を、世間一般で何と呼ぶかも知っています。姫様はご存じで?」
「い、いいえ」

 まるで微動だにしていないにも関わらず、何故かローレンツに詰め寄られているような気持ちになります。
 思わず一歩後ずさりたくなりましたが、椅子に座っていましたから後退りは出来ません。

 そんな私に彼が言います。

「姫様。貴女の様な方を俗に『ワーカーホリック』と言うのです!」

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