男爵令嬢が『無能』だなんて一体誰か言ったのか。 〜誰も無視できない小国を作りましょう。〜

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第四章:お披露目の日がやってきました。

第33話 おそらくここが勝負所です。

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 謁見は、私達が座るところに招待客が挨拶をしにやってきます。
 私が座ってみんなに足を運んでいただくなんて、少しばかり烏滸がましいような気もしますが、そんな事を言っていてはこの先やっていけません。
 私もそろそろ、相応の扱いになれなければならないでしょう。

「エラント国王と王女様にお目にかかります。……お元気そうで何よりですな」
「ありがとうございます、ロザリア国王」

 このロザリア国王様とお父様は旧知の仲です。
 こちらに対する呼び名や表面的な言葉遣いは変わりましたが、それでも瞳に宿す親愛の情には、どうやら変わりないようで、私としても少し安心しました。

「ご無沙汰して申し訳ありません。色々と立て込んでいたものですから」
「そりゃぁ一刻を背負う身になったのだ、幾ら準備していたとはいえ忙しいのは仕方がない」

 こちらの言葉にそう言って鷹揚に笑った国王様にお父様も楽しそうに笑っています。
 最近は特に忙しそうにしていましたから、楽しそうで何よりです。

 と、国王様がこんな事を聞いてきます。

「そういえば、以前言っていたアレはもうやったのか?」
「『アレ』……?あぁ」

 最初は疑問を顔に示したお父様ですが、すぐに何のことを言っているのか分かったようです。
 私には理解できなかったので「何の事でしょうか」と思っているとお父様と視線が合います。

「水車の設置上限は、独立と共に解禁しましたからね。最初に取り掛かったことの一つです。実はその件、関係各所の橋渡しから監督・実績確認まで、全てエレンフリーデに采配を任せました」
「ほぅ、それはそれは。で、結果は上々ですかな? エレン姫」

 お父様の言葉を聞いて、国王様もこちらを向きました。
 
 注目された私は、少し緊張してしまいます。
 向けられた瞳には、国王様個人の好奇心と為政者としての鋭さが見て取れます。
 おそらくここは、一つの勝負どころでしょう。

 密かにグッとお腹に力を込めてから、私はゆっくり口を開きます。

「はい。水は農業に必要不可欠なものです。今までも作物が水切れを起こさないように配慮して仕事をしておりましたから、水車による田畑への水引が出来るようになったところで、作物の品質には影響しません。が、手間が省けたことにより収穫高は確実に上がっております」
「因みに如何ほど?」
「今年は前年比の約3倍になりました。おかげで今年は飢饉の心配が全くありません。水車建設にかかった費用も、貿易が始まれば今年で補填可能でしょう」

 私がスラスラと答えると、彼は「なるほど、よく把握していらっしゃる」と言って笑ってくださいました。
 その反応に、私は「どうやら合格をいただけたようですね」とホッと胸を撫で下ろします。

「いや、我が国でも工業の設備投資予算を組む案が出ているのだがな、意見が二つに割れているのだ。これは一つの肯定要素になるかもしれん」

 そう言って少し考える様子を見せた国王様から、私は「どうやら真剣に吟味していらっしゃるらしい」と思いました。
 ですから差し出がましいようではありますが、一応こう付け足しておきます。

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