男爵令嬢が『無能』だなんて一体誰か言ったのか。 〜誰も無視できない小国を作りましょう。〜

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第三章:あの国の状況を聞きました。

第25話 国のためにも急ピッチです。

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 ジェイン様が帰られてから、もう1ヶ月が経ちました。
 今日は国を起こして以降に始めたアレコレの報告書を見ています。
 
「水車の設置はどうやら順調な様ですね。流石はルーイです、手際が良い」
「そこがあの者の長所ですからね」

 私の言葉にリズがそう言って頷きます。

 ルーイは職人です。
 殊更、水車を作る手際の良さと正確さは群を抜きます。
 しかし彼の長所はそこだけではありません。

 彼がとっている弟子たちは大なり小なり彼と同じことが出来ますし、各地への人の割り当て方も正確。
 人を使う事にも長けているからこそ、このように仕事が早いのでしょう。

「もう優先度Cに着手したとか。そしてどうやらその成果が着実に現れてきている様です」

 そう言いながら私が次に見ているのは、各地域から上がってきた収穫予測値データです。
 どうやら時間が空いた分、余らせていた田畑に手をつける事が出来たらしく、稲を始めとしてその他作物の収穫予定数が例年の1.3倍にまで上がっています。
 今までに無かった急上昇です。

「まだ予測値ではありますが、ここまで綺麗に成果が見えるとちょっと嬉しくなってしまいます」

 思わず私がフフフッと笑うと、リズが「それもこれもお嬢様の采配のお陰ですよ」と言ってくれます。
 しかし私はただ指示を出しただけです。
 実際にやってくれる方々が居なければ、どれもなし得ない事でした。

「もちろん私も頑張りますが、我が国は一部だけが頑張るのではなく、みんなが頑張るからこそうまく回るのです。アントニオに任せている例のブランド米の栽培なんてその最たるものでしょう」

 あのお米は美味しさを改良した分、育てるのに少し手のかかる品種になっています。
 それを経験でカバーしているのがアントニオです。
 彼は、若いながらもただ漫然と仕事をするのではなく『何故それが必要なのか』を考えて作業する事が出来る人ですから、この件には適任でした。

 私がそのように言うと、リズが頷いてくれます。
 しかしその他人事さに、私は思わず笑ってしまいました。

「それは貴女もですよ? リズ」

 そう言えば、彼女は「私も……ですか?」と不思議そうに首を傾げます。


「えぇ、貴女が身の回りの事をしてくれるから、私は国の事にだけ心を傾ける事が出来るのです」
「お嬢様……!」

 リズが感激したような顔でそう言いました。
 私は特に感激されるような事は言っていないのですが……おかしな子です。

「ともあれ、です。ジェイン様が言っていた事を鑑みて、様々な事を各所急ピッチで進めてもらっています。負担でしょうが、頑張ってもらわねばなりません。全ては我が国の未来の平和を守るためです」

 現在はあの王太子の言動も国内に止まっていますが、早く我が国の国力を示さねば、いずれあちらに同調し我が国を下に見て貶める国もあるかもしれません。
 そうなれば小国一つ、簡単に潰せてしまう事も事実です。

 私のその言葉に、リズは深妙な顔で「承知しています」と頷いてくれました。

 彼女もおそらく、同じような懸念を抱いているのでしょう。
 ただ私の言葉に従うだけのメイドより、こうして問題の根本を知ってくれている方が方々に目端が効きます。
 現に彼女は、私が指示を出すまでもなく他のメイド伝手に現場に気を配ってくれています。
 そういう人材は貴重です。

「リズ、今後もよろしくおねがしいますね」

 私が笑みを浮かべてそう言えば、彼女も笑顔で「勿論です」と言ってくれました。

 このまま突っ走ろうと思います。

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