男爵令嬢が『無能』だなんて一体誰か言ったのか。 〜誰も無視できない小国を作りましょう。〜

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第二章:生産品を改革しましょう。

第15話 アイツラの吠え面は俺が見てやる。〜王太子・カインズSide〜

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 次のページをただ開くだけ。
 そんな作業をほんの数回続けた所で、俺はもう飽きてしまった。

 そもそも、だ。
 一体何を探すべきなのかも分からないのに、「読んで理解しろ」と言われた所で土台無理な話だろう。

「なぁおい、お前。この歴史書内のエラント男爵家に関する記述は何ページに書かれているんだ」

 聞いた相手は、後ろに控えている10も年上のベテラン執事。
 次期国王を支える人間の内の一人という特殊な立ち位置のために、例外的にこの歴史書の閲覧が許可されている、少々そっけなくはあるものの仕事に関してはとても優秀はヤツである。

 しかし、それでも俺は本当に教えてくれる事を期待してそんな事を言った訳ではなかった。

 だって相手は分厚い歴史書。
 冴えない男爵家に関する記述が一体どこにあるかなんて、まさか答えられる筈もない。

 それでもそう聞いたのは、父上の言葉の真意に対する好奇心と面倒臭さがあいまったからである。



 だからこれは予想外の展開だった。

「第二部第七章の事だと思われます」
「……は?」

 まともな答えが帰ってきた事に驚いて、思わず変なところから声が出る。
 しかしすぐに我に返り、「え、どこだって?」と聞き返した。

 
 言われたページを開いてみる。
 するとそこには確かに『エラント』の文字が載っていた。
 そしてそこをピンポイントで読む内に、父上があの時一体何のことを言っていたのか理解する。
 が。

「こんなの単なる過去じゃないか」

 そう言って、歴史書を強く閉じる。

 
 そう、『エラント』が一体どういう家だったとしても、所詮は全て過去。
 今の話ではないのである。

 父上が怒っているのは、多分今学校でもちょっとした話題になっている『エラント』の独立のせいだろう。

「あの口ぶりだと、俺のあの言動のせいだと思っているんだろうけど」

 もしあの国の建国の原因が本当に俺にあるのなら、むしろ感謝して欲しい。

 邪魔なヤツらが自ら出ていってくれたんだから、この国は間違いなくこれから良い方向へと向かっていくに決まっている。
 この俺の、類まれなる手腕によって。

「男爵家に似合わぬ土地の広さだとしても国にしてはかなり小さいし、そもそも大した収益を出せていなかった領地だったのだ、国としての収益なんて上げられる筈もない。国を動かすノウハウも金もコネも、何も無いのだから上手くいく通りなど無い。良い見世物だ」

 アイツらが吠え面をかく姿が目に浮かぶ。
 それを俺は、特等席で見てやるのだ。

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