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第三章:あの国の状況を聞きました。
第19話 片手間に国関係の書類仕事も手伝います。
しおりを挟む我が家が国として独立し、約一ヶ月半が経ちました。
今私は、思いの外ゆっくりと過ごしています。
「国内の生産について、まだ幾つも課題はありますが、物事には順序とキャパシティーがあることも確かですからね」
後の計画に思いを馳せながらティーカップを片手にそう言えば、リズがおかわりを用意しながら答えてくれます。
「当分の間は成果待ちですね。先日ブラウンに合う機会があったのですが、とても意欲的に研究にとりくんでいまいした」
「そうでしょうね、想像できます。彼ならきっといい結果を齎してくれることでしょう。問題は、没頭するあまり時自らの身体を顧みない事ですが……」
「それなら大丈夫です。実は、彼の幼馴染にその辺は『くれぐれも』と頼んでおいたのです。あの子なら、きっと引きずってでも休ませることでしょう」
「ではその点は心配無用、と。気が利きますね、リズ」
先回りして対策してくれていたリズにそう言えば、彼女は口元を柔らかく綻ばせて「ありがとうございます」と言いました。
可愛らしいです。
確か彼女は私よりも3つ歳上。
こんなに気が利く良い子なのに恋人の影が見えない理由は、やはり私の世話に明け暮れているからでしょうか。
もしかしたら折を見て、誠実な男性を紹介した方が良いかもしれません。
そんな事を思っていると彼女が「そうでした」と、何やら思い出した様な声を上げます。
「旦那様からお仕事の一部を受け取ってまいりました」
そう言って差し出された紙束を、私は「ありがとうございます」と言って受け取りました。
これは国関係の書類仕事です。
予め彼女に頼んでいた事なのですが、それを渡してくれた彼女の顔は不服そうです。
「お嬢様は女性なのですから、政務などせずともお茶を飲んでのんびり過ごしていて良いのではないですか?」
どうやら彼女は、主人が要らぬ仕事で疲労をためる事を歓迎していないようです。
しかし私は笑います。
「そんな心配しなくても、たったこれだけ。これが全体のほんの一部だという事は貴方も知っているでしょう?」
「まぁそれはそうですが……」
「それに、少なくとも現時点では、私はこの国のたった一人の跡取りなのです。結婚相手の力量にもよりますが、もしかしたら王妃ではなく女王になる可能性だってあるのですから、こういう仕事も覚えておいて損は無いでしょう?」
「うぅー……はい」
因みにこれは毎日の事ではありません。
一日中用事がない時に、暇つぶし代わりに手伝うくらいです。
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