【完結】伯爵子息・ワルターは、国を想ってほくそ笑む。

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第7話 噂話の行き着く先は(1)

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 転機が訪れたのは、例の王城パーティーから約一か月後の事だった。

「確かに飢饉なんかは完全なる自然頼りな食糧調達形態を取っている野生動物にはどうにもならんよな」

 おそらくは、語られる中で毎回「飢饉や災害が起きたらハルバーナは絶滅する」という所まで話が為されていたのだろう。
 この頃になると、最早ハルバーナの絶滅問題さえもが噂の一部として昇華されていた。
 そして『飢饉』という言葉から、どこかの誰かが今度はこんな連想ゲームを始めるに至る。

「『飢饉』といえば、グーメルン伯爵領の今回の飢饉はどうやら相当に酷いらしいな」
「あぁ、それなら私も耳に挟んだ。確か通常備蓄の3倍は食料が必要な状況で、国からの補助では全然追いつかないとか」
「3倍か……それは確かに通常の補助では足りないだろうな。しかしそれ、結構な大事ではないのか? 領民の大半が飢え死にするのも時間の問題だぞ、それじゃぁ」

 苦い顔で恰幅のいい男が髭を撫でる。
 
 彼とて領主の1人だ、いざとなれば領民をある程度養わなければならない立場にある。
 真っ当な領主にとって、グーメルン伯爵領の事は決して他人事などではない。

 
 しかし。

「それがオルトガン伯爵が食糧援助しているらしく、そのお陰で何とか持っているらしい」

 そんな苦い顔は、この一言でほんの少し和らいだ。

「あぁ、オルトガンはグーメルンと仲が良いから」

 安堵と納得が言葉の中に入り混じり、言葉尻で吐息となって全て吐き出される。
 が。

「それでも綱渡り状態には変わりない様だが……」

 それでも援助は最低限しか施されていない。
 自領も運営もあるのだ、たかが一領主に出来る援助など精々それくらいが関の山だろう。

「国がもう少し領民に対して親身になってくれれば良いんだがなぁ……」

 その嘆きのような呟きは、きっと似たような会話に行き着いた貴族なら誰もが少なからず抱いた思いだっただろう。
 そしてそうだったからこそ、その小さな声は次第に大きくなっていく。

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