【完結】伯爵子息・ワルターは、国を想ってほくそ笑む。

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第6話 転がる噂(1)

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 その数日後、社交界にはこんな噂が流れ始めていた。

「なぁ知ってるか? 社交界デビューの日、オルトガン伯爵家の息子が許可なく王族に対して口を開いたらしい」
「それはまた……で、処分は?」
「それが何でも『お咎めは何も無し』らしいぞ。しかし失態は失態だ、やらかしたな」

 代々他と隔絶する頭の出来の良さを誇るオルトガン伯爵家の血筋といえど、やはり所詮は子供という事か。
 そんな空気が社交界には流れていた。

 
 伯爵家はその頭脳明晰さで噛み付いてくる他貴族に今まで度々しっぺ返しをお見舞いしてきた。
 そのため伯爵家の事をよく思っていない人間も、一定数存在する。

 そんなヤツらにとってこれは、やっと現れた揚げ足だ。
 声を大にしない筈はない。


 お陰でこの噂はすぐさま広まり「社交界ではもう知らない者など1人も居ない」という所まで行き着いた。

 そしてその噂には、こんな疑問がつきまとう。

「しかし何故王族は、オルトガンの息子に『不敬罪』を適用しなかったんだろう?」
「それが、どうやら息子は『まるでハルバーナのようだ』って言ったらしくてな」

 ハルバーナ。
 それが褒め言葉である事は社交界では常識だ。
 そして。

「おいおい、何だそれ。もしそれが息子の本音なら、伯爵は一体どういう育て方をしてきたんだ?」

 そんな風に、思わず鼻で笑ってバカにする。


 伯爵と王弟の仲が悪い事は、社交界では既に周知の事実だ。
 となれば、その息子が友好的どころか自らの命を危うくしてまで称賛した事がひどく滑稽なものに見えるのは、至極当たり前の事である。

 そんな息子の行いに焦ったのだろうか、それとも腹を立てたのか。
 その答えは分からない。
 が。

「どちらにしても、その時の伯爵の顔はさぞ見物だったろうな」

 どうしたって、人というものは他人の不幸を蜜の味に感じてしまう。
 そんな風に伯爵の事を嗤った者は非常に多かった。


 ――しかし、じきに噂はゆっくりとシフトしていく。


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●この作品の本編(第2部)は、こちらから。
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伯爵令嬢が効率主義の権化になったら 〜厄介事(第二王子と侯爵子息)が舞い込んできたので、適当にあしらいました〜
セシリア(10歳)が、社交界デビューをきっかけに遭遇した様々な思惑と面倒事を『効率的』に解決していくウィニングストーリー。

●本編の前日譚(主人公・セシリアの幼少期(第1部))から読みたい方は、こちらから。
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幼伯爵令嬢が、今にも『効率主義』に目覚めちゃいそうですよ。
セシリア(4歳)が様々なチャレンジの中で『効率的な生き方』について学んでいく成長ストーリー。 
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