【完結】伯爵子息・ワルターは、国を想ってほくそ笑む。

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第1話 王族としてダメなやつら(2)

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 パーティー会場に入場して少し経った頃、王族達が入場してきた。
 定位置までやってくると王が何やら横柄な挨拶を述べてから王座へと着席し、すぐに『王族への謁見』が始まった。

 爵位の高い順に挨拶という形で王に謁見する。
 これはどうやら出席者なら必ず行わねばならない毎年恒例の事らしい。

 基本的には各貴族家の当主が王族と謁見するのだが、これには幾つか例外がある。
 その内の一つが、『その年に社交界デビューを果たした子供』だ。

 つまりそれはワルターの事であり、この後彼は父と一緒にその場に立たねばならないのだった。



 謁見のための列に並んで、その順番を待つ。
 その合間に、父親がポロリと言葉をこぼした。

「先程の挨拶を見てお前も思ったろう。ヤツ等に持たせるには、あの権力は重すぎる」

 辺りには歓談の声が沢山ある。
 しかもワルター達の後ろにはまだ人が並んでいない。
 だから絶妙に調整されたこの音声は、おそらく他の誰の耳にも届いていないだろうと思われた。


 一聞するとそれはあたかも野望に満ちた言葉にように聞こえたかもしれない。
 しかしそこには明らかに「権力などどうでもいいわ」と吐き捨てる様な空気があった。

 彼のこの言葉は、権力の在処を語ってなど居ないのだ。
 ただヤツ等にはふさわしくない、そう言っているだけなのである。

「その癖その権力を嵩にきて威張り散らす脳だけは持っているんだから面倒極まりない。今日もおそらく、何かしら当てつけてくるだろう」
 
 そうに違いない。
 更にそう言葉を重ねた父親に、ワルターは思わず苦笑する。

「お父様は、確か王弟殿下と特に仲が悪いんでしたっけ?」
「仲が悪いなどど、そんな可愛いものではない」

 今日のための予習として予め我が家に因縁のある家や人については何となく頭に入れてきた。
 だから王族とのアレコレについてもおそらく間違っていはいない筈なのだが、どうやら表現が父親好みではなかったようだ。
 そんな父の大人気なさに、ワルターは「お父様らしい」とまた一笑する。

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