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第2話 王弟殿下の嫌味に触れて(1)
しおりを挟むと、不服そうな声で父親がこんな事を言う。
「アイツらの言う事は一々気にしない事だ。例え何を言われても、お前は『よく分からない』という顔をしていれば良い。あんなのに一々付き合っていたらただの時間が無駄だからな」
バッサリと吐き捨てる様なその声に、ワルターは素直に「はい」と頷いておく。
するとちょうどその時後ろに他貴族が並んだので、この話はどちらともなく終了となった。
それからは2、3他愛もない会話を交わしていたのだが、そうしている内に順番が回ってきた。
深いため息を吐皮切りにして階段を上がっていく父の背中に、ワルターもまた続く。
赤い絨毯の敷かれた長い階段を登りきると、あらかじめ聞いた通りそこは小さな広間の様になっていた。
正面には椅子に座った王族たちがおり、その周りには護衛騎士や使用人服を着た人々がいる。
その正面が広間になっていて、その真ん中まで歩み出ると父の隣で彼と同じ様にすぐさまワルターも最敬礼の所作を取った。
「陛下に措かれましてはご健勝のこと、何よりでございます。オルトガン伯爵家当主、レグルム・オルトガン、本年度の御挨拶に伺いました」
先程までの盛大なため息などまるで嘘だったかの様に、スルスルと口上を述べた。
その言葉は普段のイタズラ好きの彼とも先程までのイヤイヤだった彼とも違う、まるで別人かの様な凛々しさだ。
その様に思わず感心している間にも、口上はまだ続く。
「そして此処に居りますのは私の息子・ワルターにございます。今年で齢10歳となりましたので、国王並びに王族の方々へのご挨拶に伺いました。末永く、よろしくお願い致します」
此処までの一通りが、子供が社交界デビューをする際の挨拶の定型文だ。
しかしここまで聞けば、残念ながら先程までの感心を押しのけて苦笑の方が勝ってしまう。
というのも、だ。
(お父様の事だから、心中では「誰がお前らなんかと『末永く』などと願うものか。こちらから願い下げだコノヤロウ」なんて思っていても決しておかしくはない)
容易にそんな造像が出来てしまうのだから仕方がない。
今にも出てきてしまいそうな笑いを噛み殺す事に内心必死になりながら、表面上はどうにかこうにか何事も無かった体を保ち続ける。
しかし、表情筋を無理やり別の筋肉で押し留めているのだ、もしかしたら明日は顔面筋肉痛になるかもしれない。
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●この作品の本編(第2部)は、こちらから。
↓ ↓ ↓
伯爵令嬢が効率主義の権化になったら 〜厄介事(第二王子と侯爵子息)が舞い込んできたので、適当にあしらいました〜
セシリア(10歳)が、社交界デビューをきっかけに遭遇した様々な思惑と面倒事を『効率的』に解決していくウィニングストーリー。
●本編の前日譚(主人公・セシリアの幼少期(第1部))から読みたい方は、こちらから。
↓ ↓ ↓
幼伯爵令嬢が、今にも『効率主義』に目覚めちゃいそうですよ。
セシリア(4歳)が様々なチャレンジの中で『効率的な生き方』について学んでいく成長ストーリー。
↓ ↓ ↓
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