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第1話 王族としてダメなやつら(1)
しおりを挟む綺羅びやかな王城のパーティー会場を、深緑の瞳が何の感慨もなく見回した。
今年は10歳の年。
社交界デビューの今日、初めて王城へとやってきたのだが何だろう。
無駄に高そうなものが飾られたり使われたりしている様が、ワルターはどうにも腑に落ちない。
彼の家・オルトガン伯爵家にも確かに装飾品の類があるから慣れていないという事ではないし、王族としての権威を示すために高価な品が有用なのも分かっているが、それでも思うのだ。
(無駄に過剰なんだよ、そんなに金が有り余ってるなら国家運営に使えばいいのに)
と。
10才児の思考じゃないと、そう思うだろうか。
しかし仕方がない。
だってそれがワルターなのだから。
「我が伯爵家の血筋はな、どうしたって思考がマセる」
おそらく呆れの感情が顔に出ていたのだろう、まるで気持ちを見透かしたかのような声が降りてきたので、視線を上げる。
すると隣を歩く父親と目が合った。
「初めてここに来た時、私も似たような事を思った記憶がある」
そう言って笑う父親は、いつも通りのまるでいたずらっ子の様な笑顔を浮かべていた。
本来はここに居る筈のもう1人、母親は今日は欠席だ。
しきりに出たがってはいたのだが、ここ数年はずっと体調を崩しがちで今年もシーズンに間に合わなかった。
いじけた母から「楽しいお土産話を待っているわね」と言われたが、どうだろう。
果たしてお土産になるような話は出来るだろうか。
よく回る頭でそんな風に色々と想定してはみるが、その結果はあまり芳しくない。
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