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第二章:街の為に働いてみれば、いざこざに巻き込まれる。
第13話 俺達って、ちょっと珍しいですかね?
しおりを挟む個室で俺は、スクロールを彼女に見せた。
すると彼女は「なるほどこれは……」と、驚きを全く隠さない。
「お2人とも、天賦の才に優れているのか、それとも余程の苦難を強いられてきたのか……」
咄嗟に出たのだろうその呟きに、俺は「流石に仕事で人の恩恵をよく見る立場に居るだけあって、良く知ってるな」と感心した。
恩恵には、大きく分けて2種類ある。
先天的に得ているものと、後天的に得たものだ。
前者はいわゆる純粋な才能で、後者は生まれ落ちて以降の環境や努力の結果得た、いわゆる秀才的な力。
後者は頑張り次第で増やす事が出来るが、並大抵の頑張りで神は恩恵を授けてくれはしない。
持って生まれる才能にも限度があるので、人一人が持つ恩恵は通常一つ、二つもあれば珍しいというのが常識だ。
その上で俺とクイナがどうなのかというと、である。
「アルドさんが4つ、クイナちゃんでも3つ……」
信じられないものを見たと言わんばかりに、ミランはルーペで二つのスクロールの隅々までを確認する。
多分鑑定の魔道具なのだろう。
しかし幾ら見た所で、これは紛れもない本物である。
目の前で神父によって作られたものだからニセモノでは無いし、神様だって嘘は吐かない。
一通り確認し、おそらく両方とも本物だという確認が出来たのだろう。
それらから目を上げたミランは「ふぅ」と一つ息を吐いた後、俺を見て苦笑いする。
「個室に通して良かったです。内容まではしっかり見えないにしても、通りすがりに数くらいは分かってしまうでしょうからね」
「やっぱりちょっと珍しいですかね……?」
「えぇ、とっても珍しいです」
キッパリとそう答えたミランは、今後の為にと言わんばかりにまず俺のスクロールを指さした。
「まずアルドさんのは数が異常です。3つは未だしも4つなんて、私でもこんなの初めて見ました」
「あぁいえ、最初は2つだったんですよ? それが今回たまたまクイナの付き添いで受けてみたら増えてたってだけで」
「後天的に2つも新しく恩恵を授かる事も、おそらくかなり珍しいですよ?」
失敗した。
せっかく「俺、そんなにすごくないよ」アピールをしようと思って言った言葉が、俺の異質を更に露呈させてしまった。
「この話、外では絶対にしない様に」
「肝に銘じます」
4つ年上のお姉さんに窘められて、俺は素直に受け入れる。
が、彼女の言葉はまだ終わらない。
「それに加えて、内容です。『魔剣士』と『調停者』、それに『幸運』は――これも十分珍しいですが、まぁ分かります。ですが『破壊者』なんて、一度も聞いた事がありません」
言いながら、彼女は机の上に置いてある本をペラリと開いた。
表紙には『恩恵辞典』と書かれていたので、おそらくどういう効果がある恩恵なのかを調べるためのものなんだろう。
が、調べても果たして出てくるのか。
俺としてもこれについては自信が無い。
「『破壊者』はどうやらかなり珍しい恩恵らしくて、神父様に教会に安置された『加護辞典』にしか載ってないだろうって言われたんですよ。まぁどちらにしてもそれ単体では効力を発揮しない類ものらしいので、恩恵の登録はしないでおこうと思ってるんですが」
詳細への言及は避けて、俺は必要な事だけを彼女に伝えた。
すると彼女も有能なギルド職員だ、これ以上踏み込むつもりは無いらしい。
「そういう事なら確かに登録する必要は無いでしょうね。ではこれはとりあえず置いておいて、他の3つはどうされますか? たとえば『周りには隠しておきたい恩恵』や『あまり受けたくない依頼に繋がる恩恵』は登録しないという方も中にはいらっしゃいます」
そう言われ、また少し考える。
が、『破壊者』は珍しいし名前的に怖がられる気もするので登録しないとして、他は特に隠す必要性を感じない。
「じゃぁ『魔剣士』と『調停者』の登録をお願いします」
結局そんな結論を出せば、「おや」という顔をされた。
何だろう。
「『幸運』は登録しないんですか?」
「えぇ、だって依頼には関係ないでしょう?」
大体『幸運』があるから任せる仕事なんて、全く想像がつかない。
っていうか無いだろう。
だから不要な登録はしない方針で残りの二つを願い出たのだが、それにミランは首を振る。
「意外と関係あるんですよ? 例えばその依頼を受けたいっていう人が2人いた場合、『幸運』がある方がなんか良い事ありそうじゃないですか」
「そんな適当な」
「元々どちらとも初対面の場合なんかは、結構そんなもんですよ」
そんな言葉に思わず笑ってしまったが、彼女がそう言うのだからそういう場面に何度か遭遇しているのだろう。
「じゃぁ『幸運』も、お願いします」
「分かりました。じゃぁ次にクイナちゃんの方ですが……」
そう言って、彼女はもう一つのスクロールへと目を向ける。
「『直感力』と『忍耐』はよく聞きますが、『豊穣』というのは名前だけうっすらと聞いた事があるくらいです。まだ8歳で3つ持ちという時点で既にイレギュラーですが、これも珍しいスキルなのでは?」
そんな風に尋ねてくる彼女に、俺は「そう聞いています」と頷いた。
「神父様は『採集』の恩恵の上位互換だと言っていました」
「『採集』は、収穫物を手早く見つけたり収穫の質が高いお陰でより状態の良いもの――つまり美味しいものや効力の高いものが得られる恩恵ですね」
「はい。それに加えて育てる事にも適性があるらしいです」
「なるほど……あ、ありました。これは方々に需要がありそうですね」
そうなのだ。
クイナのこの恩恵には需要がある。
が、問題が一つ。
「ですが珍しい恩恵でもあります。クイナちゃんは獣人の中でも『輝狐《きこ》』という珍しい血の子ですし、まだ子供。そこに更に付加価値が付くとなると、危険は増えます。登録はどうされますか?」
そう、コレである。
クイナの場合、他の恩恵単体で仕事が来る可能性が低そうな事もあり、悩ましい。
加えて、だ。
「クイナ、限定依頼受けるのー! 絶対やるの!!」
チラリと見た瞬間にクイナ自ら、そんな主張を俺にしてくる。
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