追放殿下は定住し、無自覚無双し始めました! 〜街暮らし冒険者の恩恵(ギフト)には、色んな使い方があってワクテカ〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!

文字の大きさ
上 下
9 / 48
第一章:マイペースに生きてると、たまにはオークに囲まれる。

第9話 出来れば今日のお肉だけは

しおりを挟む


 くそぅ、レングラムめ。
 何が「これくらい出来なくてどうしますか!」だ。

 いやまぁ確かに探索魔法は、主に王城内で会いたくない相手と鉢合わせしない為には重宝したけど、アイツの常識のありかはどこにある。
 お陰で俺は、絶賛非常識な人間扱いされ中だ。


 と、今頃おそらく母国の訓練場で剣を振っているんだろう師匠に、思わず恨み節を向けずにはいられない。
 が、その一方で大いに反省もする。

 この非常識は、――先程ミランも言ってくれたが――クイナの安全にも直結する。
 だって俺がやっかみを買えば、まず最初に武力行使で狙われるのはまだ体も小さく俺より弱いクイナだろうから。

 一緒に行動するというのは、つまるところそういう事だ。
 ましてや俺はクイナの保護者なんだから、特にその辺は気を付けないといけないだろう。
 
 そう思ってちょっと肩を落としていると、ミランはそれを見かねてか。
 それとも最初から全てはここへと話を持って行く為の布石だったのか。
 コホンと一つ咳ばらいをしてからこう、言葉を続けた。

「アルドさん、知っていますか? 冒険者ランクはBまでは、受けた依頼の種類や達成数に応じて段階的に上がっていきます。ですから皆さん、ランクを上げるために地道に依頼を積み重ねるんです。――が、例外というものもあるのですよ」

 なるほど、と俺は思った。

 つまりこれは「俺の常識知らずを他人にとやかく思われない・言わせない為の策として、その例外になってみないか」という打診らしい。
 相応の試験は必要になってくるんだろうが、とりあえず『それに挑戦する意義は認められた』という事なんだろう。

 誰かに認めてもらえる事、それ自体は俺も嬉しい。
 少なくとも俺が王太子の時にはあまり実感する事の出来なかった喜びだ。
 が。

「丁重にお断りしておきます」

 そう答えると、驚いた顔をされてしまった。

「え、どうしてです? 高ランクになった方が仕事の幅も広がりますし、報酬だって増えますよ?」
「えぇまぁそれはその通りなんでしょうが……」

 そう言いながら、隣のクイナに目をやった。
 すると、ちょうどクイナと目がかち合う。


 その目が俺に「ごはん、まだ?」と言っていた。

 そうだった。
 コイツを待たせたままだった、と思い出して苦笑する。

「金や地位や名声よりも、『クイナと一緒』が大切なんです」

 そう言いながら金色の頭を撫でてやると、おそらく難しくて一連の話を理解できていないのだろう。
 「なんか良く分からないけどナデナデ気持ちいい」みたいな顔でクイナが笑った。

 それを見て、ミランの顔もまるで「合点がいった」とでも言いたげに綻ぶ。

「危ない案件はクイナちゃんをどこかに預けてアルドさん一人で、という手もありますが……しかしそうですね。クイナちゃんと一緒に依頼を熟したいなら、同じランクでいる方が面倒事も少ないかもしれません」

 例えば「高ランカーのくせに低ランカーの仕事を奪ってる」とか、「高ランカーのくせに危ない仕事を避けるチキン」とか。
 そんな風に具体例を幾つか出され、そこまで深く考えてはいなかった俺は「確かにそう思われる可能性も大いにあるな」と頷いた。

 特に特例でランクを上げるとなれば、それだけでもう目立つだろう。
 悪目立ちする事、間違いない。

 その上ミランの口からこういった話がスラスラと出てくるのだ。
 程度はともあれ、実際にあったのだろうと思えてならない。


 改めて「すみません」と辞退すれば、彼女は一言「分かりました」と笑って言った。
 多分彼女はこれ以降、この手の話は振ってこないだろう。
 こういうスマートな所も俺は、とっても気に入っている。

「じゃぁリトルボアと同様に、オークもこちらで素材の剥ぎ取りと買取をしますか?」

 そう尋ねられ、条件付きで頷いた。

「オークの肉は全てこちらで持って帰ります。剥ぎ取りと、それ以外の素材の買取をお願いします」
「分かりました。量が量ですので、肉の引き取りは明日以降になりそうですが……」
「あっ、と……出来ればなんですが、今日の晩御飯にしたいんです」

 そう言いながら横を見ると、クイナがキラッキラの目でミランを見ている。
 すると元々多少の融通は利くのだろう。

「じゃぁお2人分の今日のお肉はすぐに捌いてもらいましょう」
「すみません、助かります」

 こうして俺達は、遂にご飯へとありつく算段とつける事に成功したのだった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

パーティのお荷物と言われて追放されたけど、豪運持ちの俺がいなくなって大丈夫?今更やり直そうと言われても、もふもふ系パーティを作ったから無理!

蒼衣翼
ファンタジー
今年十九歳になった冒険者ラキは、十四歳から既に五年、冒険者として活動している。 ところが、Sランクパーティとなった途端、さほど目立った活躍をしていないお荷物と言われて追放されてしまう。 しかしパーティがSランクに昇格出来たのは、ラキの豪運スキルのおかげだった。 強力なスキルの代償として、口外出来ないというマイナス効果があり、そのせいで、自己弁護の出来ないラキは、裏切られたショックで人間嫌いになってしまう。 そんな彼が出会ったのが、ケモノ族と蔑まれる、狼族の少女ユメだった。 一方、ラキの抜けたパーティはこんなはずでは……という出来事の連続で、崩壊して行くのであった。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

生前SEやってた俺は異世界で…

大樹寺(だいじゅうじ) ひばごん
ファンタジー
旧タイトル 前世の職業で異世界無双~生前SEやってた俺は、異世界で天才魔道士と呼ばれています~ ※書籍化に伴い、タイトル変更しました。 書籍化情報 イラストレーター SamuraiG さん 第一巻発売日 2017/02/21 ※場所によっては2、3日のずれがあるそうです。  職業・SE(システム・エンジニア)。年齢38歳。独身。 死因、過労と不摂生による急性心不全…… そうあの日、俺は確かに会社で倒れて死んだはずだった…… なのに、気が付けば何故か中世ヨーロッパ風の異世界で文字通り第二の人生を歩んでいた。 俺は一念発起し、あくせく働く事の無い今度こそゆったりした人生を生きるのだと決意した!! 忙しさのあまり過労死してしまったおっさんの、異世界まったりライフファンタジーです。 ※2017/02/06  書籍化に伴い、該当部分(プロローグから17話まで)の掲載を取り下げました。  該当部分に関しましては、後日ダイジェストという形で再掲載を予定しています。 2017/02/07  書籍一巻該当部分のダイジェストを公開しました。 2017/03/18  「前世の職業で異世界無双~生前SEやってた俺は、異世界で天才魔道士と呼ばれています~」の原文を撤去。  新しく別ページにて管理しています。http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/258103414/  気になる方がいましたら、作者のwebコンテンツからどうぞ。 読んで下っている方々にはご迷惑を掛けると思いますが、ご了承下さい。

処理中です...