追放殿下は定住し、無自覚無双し始めました! 〜街暮らし冒険者の恩恵(ギフト)には、色んな使い方があってワクテカ〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!

文字の大きさ
上 下
2 / 48
第一章:マイペースに生きてると、たまにはオークに囲まれる。

第2話 クイナは『的当て』練習中

しおりを挟む


 今から3時間ほど前、俺達は森の中で狩りをしていた。

「クイナ、そっちに行ったぞ!」
「はぁい、なの!」

 小さな影を俺が負い込み、クイナが討伐。
 これが最近――特にクイナが魔法を覚えて以降の、俺達のお仕事スタイルだ。


 今日の獲物は、獣・リトルボア。

 大きさにしておよそ30センチほどのただのイノシシで、魔物という訳では無いのだが、ヤツらは畑を荒らしてしまう。
 その間引き依頼を俺達は、冒険者として今回請け負っていたのである。

 難易度・Eと設定されているこの依頼は、先日Eランクに上がったばかりの俺達でも受注可能なものである。
 加えてリトルボアは動きが直線的なので、初心者のクイナにとっては丁度いい練習相手だった。


 ドドドドッと迫ってくるリトルボアに、クイナはバッと両手を出した。
 お気に入りの赤いコートが靡き、構えたその手に魔力が集まる。

「『水よ、穿て、ウォーターボール』!」

 そんな言葉で、水球がポヨンッと現れた。


 大きさはクイナの手のひら大。
 見た目もまるでスライムのように無害そうな水球だけど、魔法なのだから侮ってはいけない。

 可愛らしかったのは一瞬の事。
 それからすぐに放たれたソレは風を切って標的を貫き、見事にその命を仕留めた。


 が。

「あーっ! ちょっとズレちゃったのー!」

 思ったところにちゃんと当たらなかったんだろう、クイナはちょっと不満顔だ。 
 

 クイナが魔法のイロハを教わり始めたのも、1か月ほど前からだ。
 そもそも8歳という幼さでここまで急成長し魔物ではないとはいえ獣を倒せている時点で、十分な魔法的センスがあると言っていい。

「一撃で目標達成出来てるんだから上出来だ。そもそも初歩の魔法とはいえ、だ。実践で使えてるだけでスゴイんだぞ?」

 そう言いながら頭をポンポンと撫でてやると、先程までのあの不満顔はどこへやら。
 「えへへー、なの」と、嬉しそうに笑いながら俺の賛辞――もといナデナデを、素直に受け取ってくるクイナだ。
 

 そんな彼女をひとしきり撫でた後、俺は手早くこの場を立ち去る準備を始める。
 討伐部位を切り取って、肉や毛皮・骨などにも需要があるためそれらも一緒に太ももに巻いているバッグの中へと吸い込んだ。
 
 知り合いの商人に勧めてもらって買ったものだが、こういう時には内容量を気にする必要のないマジックバックの扱いやすさを改めて実感させられる。


 ともあれ、だ。

「これで今日の討伐依頼分は完了だな。あとは採集依頼だけ」

 思ったよりも早く依頼が片付いたのは、討伐対象が探すまでもなく必要数現れてくれたお陰である。
 探すまでに手間取る日もあったりするので、こういう日はラッキーだ。


 まだ時刻は昼下がり。
 チラリとクイナを盗み見たのは、そもそも初心者が魔法を使うにはかなりの集中力が必要になってくるからだ。
 しかも相手は生身の相手。
 となれば、体力・魔力面はともかくとして神経をすり減らすのは必至である。

「その前に、クイナちょっと休んでいくか?」
 
 時間にも十分余裕があるし、なんて言い訳を添えて俺はクイナに遠回しの休憩を勧めた。

 今日は既にリトルボアを15体。
 魔法の使用回数にして、21回も頑張っている。
 1時間ほど前に一度昼食休憩を挟んではいるが、ここで無理する必要は全くない……と思ったのだが。

「クイナは大丈夫! 早く行くの!!」

 元気のいい声で即答された。

 耳がピピンッ、尻尾がピピピンッ、その上目がキラッキラ。
 せっかくやる気な彼女の気を削ぐのも気が引けて、心の中で「まぁ体力面でも魔力面でも問題はなさそうだし、その上気力もあるんなら……」という言い訳をしてから「よし!」と大きく声を上げる。

「じゃぁ行くか」
「うん、いっくのーっ!」

 俺の声にクイナは「おー!」と拳を上に突き上げる。

「新しい薬草取るの! 楽しみなの!」
「クイナ採集得意だもんなぁ」

 はやる気持ちが余さず顔に出ている様に、俺は思わずフッと笑う。

 が、あまり人の事は言えない。
 正直俺も、新しい薬草を取るためにこれから出向く『俺達未踏の新エリア』にはかなり興味深々なのだから。



 こうして俺達は、森を抜けた先の『目当ての採集物の群生地』へと足を向けた――のだが。

「うわ……」
「すっごいのぉーっ!!」

 ちょうど森を抜けた所で二人して、どちらともなく足を止めた。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

パーティのお荷物と言われて追放されたけど、豪運持ちの俺がいなくなって大丈夫?今更やり直そうと言われても、もふもふ系パーティを作ったから無理!

蒼衣翼
ファンタジー
今年十九歳になった冒険者ラキは、十四歳から既に五年、冒険者として活動している。 ところが、Sランクパーティとなった途端、さほど目立った活躍をしていないお荷物と言われて追放されてしまう。 しかしパーティがSランクに昇格出来たのは、ラキの豪運スキルのおかげだった。 強力なスキルの代償として、口外出来ないというマイナス効果があり、そのせいで、自己弁護の出来ないラキは、裏切られたショックで人間嫌いになってしまう。 そんな彼が出会ったのが、ケモノ族と蔑まれる、狼族の少女ユメだった。 一方、ラキの抜けたパーティはこんなはずでは……という出来事の連続で、崩壊して行くのであった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから

ハーーナ殿下
ファンタジー
 冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。  だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。  これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

処理中です...