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第二章 第一節:王さまに会いに行ってみる
第5話 届かない……(1)
しおりを挟む案内されたのは、ちゃんと『お客さま』用の部屋だった。
暖かい部屋に、ふかふかのベッド。おいしいお菓子と紅茶も用意されている。
魔族が出してくれる食べ物ってどんなのなんだろうと思っていたんだけど、人間の国で出されていたものとあまり変わらない。
見た目はもちろん、匂いも味も。むしろ今まで食べていたものよりも美味しくまであって、あっという間に食べてしまった。
ちょっと気になることと言えば、用意してあるものがどれも大人サイズだということくらい。でも、必要なものは自分で持ってきているので、それ程不自由に感じたりもしない。
ただ、一つだけ困っているのは。
「ドアノブに手が、届かない」
頑張って背伸びをしてみたんだけど、手は全然ノブに届かない。
シュンと肩を落とす。
部屋にはわたしが使えそうな踏み台にできるようなものもなく、使用人の姿もない。魔王国には一人で来たので、誰も助けてくれたりはしない。
「これじゃあ王さまのところに行けない。王さまをモッテモテにできない……」
考えてみたけど、結局『愛され十か条』の何からするのかは決められなかった。それはたぶん、わたしが王さまのことをまだ何も知らないからだと思う。
お母さまが言っていたのだ。誰かに愛されるようになるための近道は、いいところを知ってもらうことなんだと。
そしてこうも言っていた。
『誰にだっていいところはあって、それは相手を見ていればちゃんと分かるのよ』
お母さまの言葉に、今まで一度も嘘なんてなかった。だから今回も合ってるはず。それなのに、わたしが大人のレディじゃないばかりに。
お母さま、どうしたらいい……? 気持ちがちょっと折れそうになって、心の中で助けを求める。
心の中のお母さまは、胸の前でグッとサムズアップをしながら強く笑う。
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