婚活したい魔王さま(コブつき)を、わたしが勝手にぷろでゅーす! ~不幸を望まれた人質幼女が、魔王国の宝になるまで~

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第一章:リコリス、王さまをモッテモテにするって決めました!

第4話 リコリス、一世一代の交渉(2)

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 そうだ。すべては王さまの決定があってこそだった。

 お願い、王さま。きっと王さまの役に立つから、ご飯ください! おやつも本当はほしいけど、なくてもいいからお願いです!!
 あとは、屋根つきの寝床があればいいです! 本当はフワフワな毛布に包まれて眠れるのが一番いいけど、我慢するのでお願いします!!

 心の中でそう祈りながら、祈りのポーズをしてギュッと目をつぶる。
 すると、やがて苦渋とため息交じりの低い声が頭の上から降ってきた。

「……まぁ、国内の情勢は芳しくない。王国も、今はこの娘の処遇を気にしていないようだが、いつ手のひらを返してくるか分からない。両方を一度に相手にするのは、現状あまりにも無謀だからな」
「つまり?」

 閉じていた目を片方だけ開けてチラッと王さまを盗み見れば、明確な答えを促している宰相さまの声と同時に、王さまの眉間に更に深い皺が寄った。
 王さま自身もそれを自覚したのか、眉間を摘まみもみほぐす動作をする。

「王城内に留め置く」
「やったー! ……あ」

 とりあえず生きていけそうだ。それはつまり、お母さまのようになるという自分の夢をこれからも追い続けられるということ。そう思うと、気がつけばバンザイをして喜んでいた。
 やらかした後で、レディあるまじき行動だったと気がつく。
 王さまからの視線がとても痛い。ゆっくりと両手を下ろすと、宰相さまから「それ程までにこの娘からの提案が魅力的だったとは」と言われて「違う」と即答した王さまが、わざとらしいため息と共に言う。

「周りには一応『俺の客人だ』と、改めて触れを出しておけ」
「畏まりました」
「あと、お前」
「はい! リコリスです!!」

 呼ばれたら元気よく返事をすること。名前は憶えてくれるまで、それとなくアピールし続けること。お母さまの教えに則って、わたしはハキハキと彼に応じる。

 置いてもらえるとなれば、あとは王さまの気が変わる前に、王さまにどれだけ貢献できるかが勝負だ。

 置き続けてもらうためには、気に入ってもらうためには、王さまの願いを叶えないと。王さまをモッテモテにしないとね。
 弾む心でそう考える。

 お母さまの『愛され十か条』、どれからやっていこうかな。あれにしようか。それともこっちに――。

「お前にはまったく期待してない。お前の仕事は誰にも危害を加えられず、それなりに食べ、それなりに眠り、五体満足で生きる事だ」
「えっ」

 そう言うと、王さまは椅子から立ち上がった。
 こちらにずんずんと歩いてきて、わたしの何倍もの背があると初めて知る。

 その大きさに思わず目を丸くしていると、首の後ろの服を摘ままれた。
 そのまま軽々と持ち上げられる。足がプラーンして、視界が今まで見たこともない程高くなる。王さまの顔と同じ高さだ。

「案内はさせる。部屋にいろ」

 え、それじゃあすぐに十か条を試せない……。

 わたしは思わず眉尻を下げた。
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