婚活したい魔王さま(コブつき)を、わたしが勝手にぷろでゅーす! ~不幸を望まれた人質幼女が、魔王国の宝になるまで~

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第一章:リコリス、王さまをモッテモテにするって決めました!

第4話 リコリス、一世一代の交渉(1)

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 気がついたらそう口にしていた。
 でも後悔は全然してない。


 力いっぱい出した声は、広いこの部屋中にとてもよく響いていたと思う。なのに王さまは片眉を上げ、見下ろしながら「は?」と言ってくる。

 最初は王さまの反応の意味があまりよく分からなかったんだけど、宰相さまに「紹介する伝手も持たない子どもが、実に大きく出たものですね」と言われてやっと分かった。

 そんなことできる筈がない。そう思われてしまっているんだ。

「まだ子どもだけど、わたしだってレディです。王さまの近くに女の人が一人もいないんなら、『王さまの近くで唯一の』です! 助言できることもあると思います!」
「貴女のようなちんちくりんの助言が、一体何の役に立つのか」
「わたしには、お母さまから教えてもらった『愛され十か条』もあります!」

 宰相さまの一言に、思わずムキになって言い返す。


 まるでお母さまの教えまで、それを通してお母さま自身まで「役に立たない」と言われたような気持ちになった。

 お母さまはすごいのだ。お母さまは最強なのだ。

 そもそもこの王さま、ちょっと目つきは悪いかもしれないけど別にカッコいいと思う。
 それにお母さまだって「お父さまは、この国で一番偉い人だから周りの女性が放っておかないの。その証拠に、お父さまにはたくさんの側妃がいるでしょう? モッテモテよ」って、言っていた。

 実際に、お父さまにはたくさんの側妃さまたちがいたのだ。王さまも、『王さま』であるっていう時点でモッテモテの土台の上にいる筈。
 お母さまの言っていた通りにすれば、王さまにだって側妃の三十人くらいすぐにできるに決まっているのだ。


 お母さまを嗤うことは許さない。そんな気持ちを語気に乗せると、何故か宰相さまの目の色が変わった。
 呟くような「ほう?」という声は、少し面白がっているように聞こえる。

「貴女の亡き母親は、たしかあのリリー・ジャピネーザですよね」
「えっ、お母さまのことを知ってるんですか?!」

 突然お母さまの名前を言われてビックリした。でも、お母さまのことを知っているんなら、お母さまのお話ができるかもしれない。そう期待して、身を乗り出す。
 しかし。

「いえ、まったく」

 違った。
 目線を床に落とし、シュンとする。

「しかし有名でしたので。『怠け者だった国王を改心させた才女』だと」
「えぇっ?!」

 思わず座ったまま飛び跳ねてしまったのは、そんな話初めて聞いたからだ。

 っていうか、お父さま昔は怠け者だったの? 全然想像がつかない。
 その話も、ちょっと聞きたい!

「ダメ王を改心させた人物の『愛され十か条』ともなれば、少しは期待もできそうですが」
「はっ! そうです! 必ず愛されます!!」

 宰相さまの思案声で「そういう話だった!」と思い出し、わたしは強く主張する。と、宰相さまが猫のような目をやんわりと細めた。
 多分笑ったのだと思う。でもそれは、たぶんわたしに向けた笑みではない。

「どうされますか? 陛下」

 彼の視線が流れた先には、「うぅん……」唸る王さまがいた。
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