6 / 20
第一章:リコリス、王さまをモッテモテにするって決めました!
第4話 リコリス、一世一代の交渉(1)
しおりを挟む気がついたらそう口にしていた。
でも後悔は全然してない。
力いっぱい出した声は、広いこの部屋中にとてもよく響いていたと思う。なのに王さまは片眉を上げ、見下ろしながら「は?」と言ってくる。
最初は王さまの反応の意味があまりよく分からなかったんだけど、宰相さまに「紹介する伝手も持たない子どもが、実に大きく出たものですね」と言われてやっと分かった。
そんなことできる筈がない。そう思われてしまっているんだ。
「まだ子どもだけど、わたしだってレディです。王さまの近くに女の人が一人もいないんなら、『王さまの近くで唯一の』です! 助言できることもあると思います!」
「貴女のようなちんちくりんの助言が、一体何の役に立つのか」
「わたしには、お母さまから教えてもらった『愛され十か条』もあります!」
宰相さまの一言に、思わずムキになって言い返す。
まるでお母さまの教えまで、それを通してお母さま自身まで「役に立たない」と言われたような気持ちになった。
お母さまはすごいのだ。お母さまは最強なのだ。
そもそもこの王さま、ちょっと目つきは悪いかもしれないけど別にカッコいいと思う。
それにお母さまだって「お父さまは、この国で一番偉い人だから周りの女性が放っておかないの。その証拠に、お父さまにはたくさんの側妃がいるでしょう? モッテモテよ」って、言っていた。
実際に、お父さまにはたくさんの側妃さまたちがいたのだ。王さまも、『王さま』であるっていう時点でモッテモテの土台の上にいる筈。
お母さまの言っていた通りにすれば、王さまにだって側妃の三十人くらいすぐにできるに決まっているのだ。
お母さまを嗤うことは許さない。そんな気持ちを語気に乗せると、何故か宰相さまの目の色が変わった。
呟くような「ほう?」という声は、少し面白がっているように聞こえる。
「貴女の亡き母親は、たしかあのリリー・ジャピネーザですよね」
「えっ、お母さまのことを知ってるんですか?!」
突然お母さまの名前を言われてビックリした。でも、お母さまのことを知っているんなら、お母さまのお話ができるかもしれない。そう期待して、身を乗り出す。
しかし。
「いえ、まったく」
違った。
目線を床に落とし、シュンとする。
「しかし有名でしたので。『怠け者だった国王を改心させた才女』だと」
「えぇっ?!」
思わず座ったまま飛び跳ねてしまったのは、そんな話初めて聞いたからだ。
っていうか、お父さま昔は怠け者だったの? 全然想像がつかない。
その話も、ちょっと聞きたい!
「ダメ王を改心させた人物の『愛され十か条』ともなれば、少しは期待もできそうですが」
「はっ! そうです! 必ず愛されます!!」
宰相さまの思案声で「そういう話だった!」と思い出し、わたしは強く主張する。と、宰相さまが猫のような目をやんわりと細めた。
多分笑ったのだと思う。でもそれは、たぶんわたしに向けた笑みではない。
「どうされますか? 陛下」
彼の視線が流れた先には、「うぅん……」唸る王さまがいた。
10
🌟カクヨムで先行公開中🌟
⇒ 婚活中の魔王さま(コブつき)を、わたしが勝手にぷろでゅーす!
⇒ 婚活中の魔王さま(コブつき)を、わたしが勝手にぷろでゅーす!
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説

三度の飯より犬好きな伯爵令嬢は田舎でもふもふスローライフがしたい
平山和人
恋愛
伯爵令嬢クロエ・フォン・コーネリアは、その優雅な所作と知性で社交界の憧れの的だった。しかし、彼女には誰にも言えない秘密があった――それは、筋金入りの犬好きであること。
格式あるコーネリア家では、動物を屋敷の中に入れることすら許されていなかった。特に、母である公爵夫人は「貴族たるもの、動物にうつつを抜かすなどもってのほか」と厳格な姿勢を貫いていた。しかし、クロエの心は犬への愛でいっぱいだった。
クロエはコーネリア家を出て、田舎で犬たちに囲まれて暮らすことを決意する。そのために必要なのはお金と人脈。クロエは持ち前の知性と行動力を駆使し、新しい生活への第一歩を踏み出したのだった!
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした
楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。
仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。
◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪
◇全三話予約投稿済みです
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です

ギルドの小さな看板娘さん~実はモンスターを完全回避できちゃいます。夢はたくさんのもふもふ幻獣と暮らすことです~
うみ
ファンタジー
「魔法のリンゴあります! いかがですか!」
探索者ギルドで満面の笑みを浮かべ、元気よく魔法のリンゴを売る幼い少女チハル。
探索者たちから可愛がられ、魔法のリンゴは毎日完売御礼!
単に彼女が愛らしいから売り切れているわけではなく、魔法のリンゴはなかなかのものなのだ。
そんな彼女には「夜」の仕事もあった。それは、迷宮で迷子になった探索者をこっそり助け出すこと。
小さな彼女には秘密があった。
彼女の奏でる「魔曲」を聞いたモンスターは借りてきた猫のように大人しくなる。
魔曲の力で彼女は安全に探索者を救い出すことができるのだ。
そんな彼女の夢は「魔晶石」を集め、幻獣を喚び一緒に暮らすこと。
たくさんのもふもふ幻獣と暮らすことを夢見て今日もチハルは「魔法のリンゴ」を売りに行く。
実は彼女は人間ではなく――その正体は。
チハルを中心としたほのぼの、柔らかなおはなしをどうぞお楽しみください。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~
石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。
食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。
そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。
しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。
何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。
扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる