婚活したい魔王さま(コブつき)を、わたしが勝手にぷろでゅーす! ~不幸を望まれた人質幼女が、魔王国の宝になるまで~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!

文字の大きさ
上 下
4 / 20
第一章:リコリス、王さまをモッテモテにするって決めました!

第3話 王さまにあげられる『利』は(1)

しおりを挟む


 たしかにこのトラ耳の人は、人間の国と魔王国との境界までわたしを迎えが来てくれた。

 絵本でしか見たことがないドラゴンに乗ってきた彼に、わたしはとてもビックリした。
 空の上で火を吐きながらグルグル回り、馬車から降りて迎えを待っていたわたしの前に降りてきた時には、ビックリし過ぎて足が動かないどころか、声一つ出なかった。

 そんなわたしを見たこの人は、ちょっとだけ目を丸くした後で、あごに手を当てて「なるほど。この程度ではまったく動揺しませんか。まぁ、いい度胸ではありますね。一応は、この国に送られてくるだけの事はあるのか……?」って呟いてたっけ。

 もしかしたら、あれが魔王国流の『丁重なもてなし』だったのかもしれない。

「お前が自分で立候補して、勝手に出て行ったのだろう。『陛下を篭絡せんとする女狐をけん制する必要があります』などと言って。俺のせいのように言うな」
「そんなことを言いましても、結婚に夢を見ているくせに、見た目の恐ろしさと地位の厳つさのせいで女に免疫もなく、その上近頃は『周りが結婚ラッシュだから』などというよく分からない理由で、結婚を焦ってもいらっしゃる。今の陛下では、すぐに女の綺麗な外面にコロッと騙されてしまうのが目に見えているでしょう」
「うっ……」

 王さまが言葉を詰まらせながら、トラ耳に人から目をそらす。

 そういえば、お母さまが『人は直視したくない事実を言われた時、大体一度押し黙る』って言ってたっけ。

「王さまは、誰でもいいからとりあえず、誰かと結婚したいんですか?」

 答えない。
 でも、時には無言が答えになることもある。たしかお母さまはそうも言っていた。
 なら。

「わたしは、王さまと結婚してもいいですよ?」

 結婚とは、お父さまとお母さまみたいになるということだ。あんまりよくは知らないけど、たぶん王さまと仲よしな関係になるっていうことなんだろう。
 お母さまのようになるために王さまに気に入ってもらいたいわたしにとって、王さまの方から「仲よくしたい」と思ってもらえるのは、とっても助かる。


 しかし王さまは、ハァとまたため息をつきながらこう一言。

「……結婚相手は誰でもいいという訳ではない。お前はあまりに幼すぎる」
「そうですね。精々あと十年は経たねば」
「えっ」

 トラ耳の人も、すぐさま王さまの言葉の後に続いた。

 どうやら王さまは、わたしと仲よくしたいわけではないらしい。じゃあ、どうしよう……。
 シュンとしながら視線を下げると、そこには何の凹凸もない自分の体がある。

 たしかにわたしはお母さまのように、まだ『大人のレディ』ではない。
 お母さまは言っていた。『だいなまいとぼでぃ』は女の武器なのだと。そしてそれは、大人になればわたしにもきっと備わるのだと。

 でも今はまだ、わたしは子どもだ。その武器はもちろん持ってない。

「はぁ……嫁が欲しい」
「そのような事、間違っても外では呟かないでくださいね」
「俺の周りに女が寄り付かないのは、見た目や地位だけではなく、お前が事実を誇張した噂を方々に流したからだろうが」
「王は舐められてはなりません。あれらはすべて陛下を思っての措置であり、宰相としての仕事です」

 シレッとした顔で言う宰相さまに、ムッとしながらも口をつぐむ王さま。目の前でされているやり取りに、わたしはちょっと不思議な気持ちになる。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

三度の飯より犬好きな伯爵令嬢は田舎でもふもふスローライフがしたい

平山和人
恋愛
伯爵令嬢クロエ・フォン・コーネリアは、その優雅な所作と知性で社交界の憧れの的だった。しかし、彼女には誰にも言えない秘密があった――それは、筋金入りの犬好きであること。 格式あるコーネリア家では、動物を屋敷の中に入れることすら許されていなかった。特に、母である公爵夫人は「貴族たるもの、動物にうつつを抜かすなどもってのほか」と厳格な姿勢を貫いていた。しかし、クロエの心は犬への愛でいっぱいだった。 クロエはコーネリア家を出て、田舎で犬たちに囲まれて暮らすことを決意する。そのために必要なのはお金と人脈。クロエは持ち前の知性と行動力を駆使し、新しい生活への第一歩を踏み出したのだった!

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

誰も信じてくれないので、森の獣達と暮らすことにしました。その結果、国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。

木山楽斗
恋愛
エルドー王国の聖女ミレイナは、予知夢で王国が龍に襲われるという事実を知った。 それを国の人々に伝えるものの、誰にも信じられず、それ所か虚言癖と避難されることになってしまう。 誰にも信じてもらえず、罵倒される。 そんな状況に疲弊した彼女は、国から出て行くことを決意した。 実はミレイナはエルドー王国で生まれ育ったという訳ではなかった。 彼女は、精霊の森という森で生まれ育ったのである。 故郷に戻った彼女は、兄弟のような関係の狼シャルピードと再会した。 彼はミレイナを快く受け入れてくれた。 こうして、彼女はシャルピードを含む森の獣達と平和に暮らすようになった。 そんな彼女の元に、ある時知らせが入ってくる。エルドー王国が、予知夢の通りに龍に襲われていると。 しかし、彼女は王国を助けようという気にはならなかった。 むしろ、散々忠告したのに、何も準備をしていなかった王国への失望が、強まるばかりだったのだ。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました

蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。 家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。 アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。 閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。 養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。 ※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。

処理中です...