女嫌いな辺境伯と歴史狂いの子爵令嬢の、どうしようもなくマイペースな婚姻

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!

文字の大きさ
上 下
15 / 27

第7話 『変な女』はアクションか ~ケルビン視点~(1)

しおりを挟む


 最初から片鱗はあった。
 来てすぐに俺が「俺の生活に口を出すな」と言った時、あいつは何故か礼を述べてきたのだ。
 その時から「何だこの女」とは内心思っていたが、まさかここまで変な女だとは流石に思いもしなかった。



 今日の朝、いつも通り早く起きて剣を振って軽く汗を流したた俺は、食堂へと向かった。

 俺に跡目を継いだ後、水を得た魚のように父は母を連れて方々を旅するようになった。
 最早屋敷にいる事の方が少ない。
 だから必然的に、食卓に複数人分の銀食器が用意されている光景を見る頻度も少ない。

 にも拘らずテーブルの上に二セットの銀食器が整えられている光景に、思わず口がへの字に曲がる。


 昼は執務室で、夜は自室で食事を摂ることにしているが、朝は食堂に行くのが俺の食事の通例だ。
 本当は他人と食事など取っても何一つ楽しくなどないのだが、他人がいるからと自らのルーティーンを変えるというのも嫌だったのだ。
 
 しかしこの日は、そんな自分の強情を少し後悔する事になった。
 

 ……テーブルに座って少し経っても、もう一つの席はまだ空いたままだった。

 食事が運ばれてこないのは、使用人の「一緒に食べるだろう」という配慮に違いない。
 しかし俺がいつまでも待つ筋合いもなければ、迎えに行く義理もない。

 この後はいつも通り、執務をする予定になっている。
 時間が押す。
 領主としての義務は果たさねばならない以上、そのしわ寄せは夕方からの剣を振る時間にくるのが必至だ。


 そう思えば、イライラしてきた。

 何故来ないのか。
 いつ来るのか。
 もう一人で食べてしまおう。

 そんな気持ちになった時だった。
 ちょうど食堂の扉の外を、見覚えのあるメイドがスッと通ったのは。

しおりを挟む
作品の続き(最新更新)はこちらから⤵
≪女嫌いな辺境伯と歴史狂いの子爵令嬢の、どうしようもなくマイペースな婚姻≫
※カクヨムの該当ページに移動します。
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完】チェンジリングなヒロインゲーム ~よくある悪役令嬢に転生したお話~

えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
私は気がついてしまった……。ここがとある乙女ゲームの世界に似ていて、私がヒロインとライバル的な立場の侯爵令嬢だったことに。その上、ヒロインと取り違えられていたことが判明し、最終的には侯爵家を放逐されて元の家に戻される。但し、ヒロインの家は商業ギルドの元締めで新興であるけど大富豪なので、とりあえず私としては目指せ、放逐エンド! ……貴族より成金うはうはエンドだもんね。 (他サイトにも掲載しております。表示素材は忠藤いずる:三日月アルペジオ様より)  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

【完】嫁き遅れの伯爵令嬢は逃げられ公爵に熱愛される

えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
 リリエラは母を亡くし弟の養育や領地の執務の手伝いをしていて貴族令嬢としての適齢期をやや逃してしまっていた。ところが弟の成人と婚約を機に家を追い出されることになり、住み込みの働き口を探していたところ教会のシスターから公爵との契約婚を勧められた。  お相手は公爵家当主となったばかりで、さらに彼は婚約者に立て続けに逃げられるといういわくつきの物件だったのだ。  少し辛辣なところがあるもののお人好しでお節介なリリエラに公爵も心惹かれていて……。  22.4.7女性向けホットランキングに入っておりました。ありがとうございます 22.4.9.9位,4.10.5位,4.11.3位,4.12.2位  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

【完結】溺愛婚約者の裏の顔 ~そろそろ婚約破棄してくれませんか~

瀬里
恋愛
(なろうの異世界恋愛ジャンルで日刊7位頂きました)  ニナには、幼い頃からの婚約者がいる。  3歳年下のティーノ様だ。  本人に「お前が行き遅れになった頃に終わりだ」と宣言されるような、典型的な「婚約破棄前提の格差婚約」だ。  行き遅れになる前に何とか婚約破棄できないかと頑張ってはみるが、うまくいかず、最近ではもうそれもいいか、と半ばあきらめている。  なぜなら、現在16歳のティーノ様は、匂いたつような色香と初々しさとを併せ持つ、美青年へと成長してしまったのだ。おまけに人前では、誰もがうらやむような溺愛ぶりだ。それが偽物だったとしても、こんな風に夢を見させてもらえる体験なんて、そうそうできやしない。  もちろん人前でだけで、裏ではひどいものだけど。  そんな中、第三王女殿下が、ティーノ様をお気に召したらしいという噂が飛び込んできて、あきらめかけていた婚約破棄がかなうかもしれないと、ニナは行動を起こすことにするのだが――。  全7話の短編です 完結確約です。

始まりはよくある婚約破棄のように

メカ喜楽直人
恋愛
「ミリア・ファネス公爵令嬢! 婚約者として10年も長きに渡り傍にいたが、もう我慢ならない! 父上に何度も相談した。母上からも考え直せと言われた。しかし、僕はもう決めたんだ。ミリア、キミとの婚約は今日で終わりだ!」 学園の卒業パーティで、第二王子がその婚約者の名前を呼んで叫び、周囲は固唾を呑んでその成り行きを見守った。 ポンコツ王子から一方的な溺愛を受ける真面目令嬢が涙目になりながらも立ち向い、けれども少しずつ絆されていくお話。 第一章「婚約者編」 第二章「お見合い編(過去)」 第三章「結婚編」 第四章「出産・育児編」 第五章「ミリアの知らないオレファンの過去編」連載開始

無口な婚約者の本音が甘すぎる

群青みどり
恋愛
リリアンには幼少期から親に決められた婚約者がいた。 十八歳になった今でも月に一度は必ず会い、社交の場は二人で参加。互いに尊重し合い、関係は良好だった。 しかしリリアンは婚約者であるアクアに恋をしていて、恋愛的に進展したいと思っていた。 無口で有名なアクアが何を考えているのかわからずにいたある日、何気なく尋ねた質問を通して、予想外の甘い本音を知り── ※全5話のさらっと読める短編です。

初夜に「私が君を愛することはない」と言われた伯爵令嬢の話

拓海のり
恋愛
伯爵令嬢イヴリンは家の困窮の為、十七歳で十歳年上のキルデア侯爵と結婚した。しかし初夜で「私が君を愛することはない」と言われてしまう。適当な世界観のよくあるお話です。ご都合主義。八千字位の短編です。ざまぁはありません。 他サイトにも投稿します。

婚約者を譲れと姉に「お願い」されました。代わりに軍人侯爵との結婚を押し付けられましたが、私は形だけの妻のようです。

ナナカ
恋愛
メリオス伯爵の次女エレナは、幼い頃から姉アルチーナに振り回されてきた。そんな姉に婚約者ロエルを譲れと言われる。さらに自分の代わりに結婚しろとまで言い出した。結婚相手は貴族たちが成り上がりと侮蔑する軍人侯爵。伯爵家との縁組が目的だからか、エレナに入れ替わった結婚も承諾する。 こうして、ほとんど顔を合わせることない別居生活が始まった。冷め切った関係になるかと思われたが、年の離れた侯爵はエレナに丁寧に接してくれるし、意外に優しい人。エレナも数少ない会話の機会が楽しみになっていく。 (本編、番外編、完結しました)

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

処理中です...