女嫌いな辺境伯と歴史狂いの子爵令嬢の、どうしようもなくマイペースな婚姻

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第6話 何故そんなに怒っているのか(2)

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「え、屋敷内で好きにしていたのですが」
「部屋はきちんとあるのにわざわざ、こんな場所書庫室でか。朝食を食べに来ない事といい、昨日俺が夕食を共にしなかった事への当てつけか」

 どうしよう。
 なぜそういう話になるのか、まったく意味が分からない。

「ケルビン様が『屋敷内では好きにしていい。互いの生活に干渉はしないようにしよう』と言ってくださったので、そのお言葉に甘えていたのですが……」

 もしかして、あれは社交辞令だったのだろうか。
 いやそれか、昨日のアレはすべて私の願望、脳が私に見せた幻だったのかもしれない。

 だとしたら、とてもショックだ。
 なんせノースビークに着たその日の夜から早速没頭するくらいには、ものすごく嬉しかったのだから。

「たしかに言った」

 あぁよかった。
 昨日の記憶が夢幻《ゆめまぼろし》ではなかった。
 ホッと胸を撫でおろし、それから「ん?」とまた首を傾げる。

 じゃあ彼は、一体何が言いたいのだろう。


 メイドのミア曰く「マリーリーフ様は少々鈍感」との事らしいけど、流石に名前は知っていても喋るのどころかきちんと顔を見るのさえ、昨日が初めてだった相手である。
 その内心を察するのは、きっと私でなくとも難しい。


 眉を吊り上げた難しい顔でこちらを見てくる彼は、何か言いたそうにも見えた。
 しかし結局何かを口にする事もなく、ため息と苛立ち交じりの交じりに「もういい」という言葉と共に去っていく。



 結局彼が何をしに来たのか、私には何も分からなかった。
 頭上に幾つもクエスチョンマークを浮かべていると、私の疑問に答えてくれたのはキャラメル色のを後ろで結んだメイドだ。

「マリーリーフ様の言伝をお伝えしたところ『昨日一人で夕食を食べさせたことへの当てつけか。まったく、女というのはいつもいつも……。そんな事をしても無駄だと一言言っておくのが今後のためか』などと言い、わざわざこの部屋まで足を運ばれたのです」
「あらおはよう、ミア」
「おはようございます。先程から辺境伯様と共に、この部屋に来ていたのですけどね」

 彼女は深い紫色の瞳に、私を写しながらそう言ってくる。

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