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第5話 一人での食事も『好きなもの語り』でとても楽しく(2)

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 実際、聞いていてちょっと楽しくもあった。

「人にも歴史あり、ですね。ノースビークは領地も屋敷もケルビン様にも、私の知らない歴史がたくさん存在します」
「歴史……そういえば、先程屋敷内をご案内した際にも、そのようなお話をされていましたね。歴史を知るのが好きなのですか?」
「厳密に言うと、歴史を知り、それを元に色々と想像したり考察したりするのが好きなんです」
「なるほど。それであれば、私にも力になれる事がありそうですね。生まれてこの方この領地から出たことは数えるほどしかない身ですから」

 誇らしげにそういう彼は、きっとノースビークの事も好きなのだろう。
 
 自分が好きなものを好きだと思いまっすぐに示せる彼に、私は好感を抱いた。
 彼と話していたお陰で食事中も寂しくなかったし、改めてジョンに確認すると「ケルビン様も時間外れるし自室でだけど、ちゃんとご飯は食べる」と言っていたので、ホッとした。

 実は私、研究に没頭し過ぎた事でついご飯を食べ忘れた事があり、三日目にフラッと来てこけた事がある。
 その時はちょうどミアが四日間の休暇中で、戻ってきた彼女から入れ替わりに私の自室に食べものを運んでいたメイドたち共々、私も合わせて「マリーリーフ様は、放っておくとご飯を食べ忘れるポンコツなんですから! ちゃんと毎食食べてるのを目視確認しないとダメでしょう!」と怒られた記憶がある。

 ケルビン様はそういう事にはなさなさそうなのでよかった。
 長時間のお説教ほどしんどいものはないのだ。

 

 食事を済ませた私は、すぐさま自室――には帰らなかった。

 代わりに直行した場所がある。
 案内してもらっていた時に目星をつけた場所・書庫室。
 先程見た時あそこには、沢山の古書が保管されていた。
 多分私が知らないこの土地や屋敷や人の歴史がある事だろう。

 部屋に入り、手ごろな本を一冊手に取る。
 軽く見てから胸に抱え、次の本に手を伸ばし――。

 サラッと見ただけでもじっくりと目を通したい本がたくさんあって、私の心はワクワクだ。
 今日は徹夜になるだろう。
 そう思い、控えていたミアに言ったのだ。

「もし明日の朝ケルビン様に会ったら、『おはようございます』と伝言しておいて」

 横に積んだ本の冊数的に、きっと明日の朝までには読み切れない。

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