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第二章:初めて貴族の友人を作る。
第1話 母からのエールを受けて
しおりを挟むエドガー達の後ろ姿を見送りながら、クレアリンゼがこんな風に聞いてきた。
「先程は何やらダリアさんと話し込んでいたようだけれど……何か楽しいお話は聞けましたか?」
そんな母からの話題振りに、セシリアは少し困ったように苦笑する。
「当たり障りのない会話ばかりでした」
「あら、そうなのね。まぁダリアさんもきっと、レレナ様辺りからセシリアの話は聞いていたでしょう」
相手が警戒していたのなら仕方がない。
そう告げたクレアリンゼに、しかしセシリアはニヤリと笑った。
そして「しかし」と言葉を続ける。
「釘はしっかり刺せたと思いますから、再発防止の布石にはなったのではないでしょうか」
セシリアは『何の』とは言わなかった。
しかし言わなくても、彼女にはそれだけで十分伝わる。
「そう、それなら良かったわ」
そう言って、彼女は綺麗に微笑んだ。
しかし次に発せられた言葉の裏にあった感情は、あまり綺麗なものではない。
「あの方に少々誇張が過ぎる癖がある事はあの短時間でもよく分かりました。全く……見栄の上の誇張など、本当に聞くに耐えません」
そう言い置いた上で、「まぁあれが彼本来の性格なのでしょうから、無くなるとまではいかないでしょうが」と言葉を続ける。
「せめて今回の『釘』でその頻度が少しでも減ってくれれば嬉しいですね」
クレアリンゼのそんな物言いに、セシリアは思わず苦笑を浮かべた。
今日のクレアリンゼは少し毒舌だ。
来て早々機嫌が悪くなったりもしたからもしかしたらその余韻が残っているのかもしれないが、そんな事情があっても普通ならばこんな強化はしないだろう。
これは、どうやら。
(エドガー様との会話がどうしようもなくつまらなかったみたいだなぁ)
そう心中で独り言ちる。
まぁしかし、ダリアと話し始める前に2人がしていたあの話題がずっと続いていたのだとすれば、クレアリンゼが「得た情報に対するロスが多すぎる」と思っても、何ら不思議はない。
そんな風にクレアリンゼに同情まじりの共感を向けると、彼女はすぐにそのことに気がついたようだ。
微笑を浮かべて話題を方向転換させてくれる。
「この後は、同年代の子達のところに?」
「はい。他は全て終わりましたので、あとはお友達が作れればいいな、と」
セシリアは、今日最後のノルマを告げる。
するとクレアリンゼは頷いて。
「そう、頑張ってね」
「はい!」
母親からのエールに元気よく応じると、クレアリンゼは「じゃぁまた後でね」と言って去っていった。
そんな母親の後ろ姿を数秒間見つめた後で。
「よし」
そんな言葉と共に、セシリアは再び動き出した。
目指すは最終目的地、同年代の子達の社交場だ。
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