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第一章:初めての社交で暗躍する。

第17話 無理やり、和解『劇』(2)

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 おそらくコレを指示しただろう侯爵も、そして実行犯となる目の前の彼も、せっかくセシリアがした忠告の意味が全く分かっていなかったと見える。

 ならばもう、セシリアが彼らに対して出来ることは何も無い。

 彼らがセシリアを無理やり『劇』の舞台に上げたのだ。
 ならば彼らには、相応の報いを受けてもらうだけである。

「……それは大変申し訳ありませんでした」

 セシリアの第一声は、そんな謝罪から始まった。
 
 そこには感情と呼べるものが一切込められていなかった。
 セシリアはただ爵位差とここが公の場であることを鑑みて「これも社交の一部だ」と割り切ったに過ぎない。

 
 しかし同時に、そんな心中を彼に悟らせるようなヘマを、セシリアは決して自分に許さなかった。
 そしてクラウンは、そんなセシリアにまんまと騙された。
 割り切りを悟るどころか、むしろ彼は嫌う人間の下げた頭に一種の優越感を得た様だった。

 そして。

(「勝った!」とか思っているんだろうな、きっと)

 セシリアは、彼の表情からそんな心中を読み取った。
 しかしその心は、セシリアには到底理解する事ができない。

 何がどう勝ったのか。
 一体どこに勝ちを見出したのか。

 目の前の、目に見える優劣を基準とするクラウンと、あくまでも未来を成果を見据えるセシリア。
 2人の価値基準は、どうしようもなく食い違っているのだ。
 この時点で相互理解など、得られよう筈も無い。 


 愛想の良いセシリアに、クラウンは大仰にこう言った。

「まぁ良い、今回は大目に見てやろう」

 満足げなその表情は、自分が相手よりも優位に立っている事を全く疑っていない。
 
 上から目線なその言葉を、セシリアはヒラリと華麗に聞き流してみせた。
 
 しかし「そのせい」というべきか、それとも「そのお陰」というべきか。
 彼は早速愚を犯す。

「これからは家としての交流も増えるのだしな」

 流石にこの一言は、セシリアとて聞き流す事は出来なかった。
 そんな決定事項など、少なくともセシリアは初耳だし是非とも遠慮したい。

「そう、なのですか……?」

 セシリアが首を傾げながらそう尋ねると、その反応に優越感を抱いたのか。
 彼は「そんな事も知らないのか」と言いながら満面の自慢顔をセシリアに向けてくる。

「俺とお前は和解した。そして今回の騒動をキッカケに互いの親交を深める事もできた。だから今後は家同士の交流も必然的に増えるだろうって、そうお父様が言っていた」

 そんな彼の言葉に、セシリアは表向きには首を疑問に傾げたままを保ちながら心中では「なるほど」と納得した。

(彼らの中では、そういう事になっているのか)
 
 と。

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