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第一章:初めての社交で暗躍する。

第13話 たった8言で得られた納得(1)

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 少し遠くでしばらく彼らを観察して分かった事は『どうやら皆で一つの話題を共有しているという訳では無いらしい』という事だった。

 コミュニティー内で幾つかのグループに別れ、各々に別の会話をしている。
 しかもどうやらそのグループにも特に縛りが無いようで、気軽に互いのグループを行き来して会話に参加する遊撃手も存在している。

(まず、遊撃手が上手い。そして何より、その存在を周りがすんなりと受け入れている)

 遊撃手はが元々の話を邪魔しないように努め、実際に配慮できている。
 そして元の住人達は、外からやってくる新たな切り口に聞く耳を持つ。
 ソレが互いに出来ているからこその、この形だ。

 そして何より面白いのは。

(そういう人がたまに別々だった話題の間に接点を見出して両者間をつなげる役割を担っているという事)

 だからたまに、いつの間にかバラバラだった話題が一つになっていたりもする。
 そしてその話題が終わると、また各々の話に戻るのだ。


 同じコミュニティー内だからこそ、そんな事が出来る。
 しかも参加する話題の選択肢が存在する。

 それはセシリアの目には、互いの時間を有効活用し、その上でコミュニティー全体の親交を図る、実に良い手に映った。

 つまり。

(効率的。とっても私好みだ)

 という訳た。
 
 当初の予想よりも、より多くの収穫が見込めそうだ。
 このコミュニティーを選んで、正解だったかもしれない。

 セシリアはそう心中でほくそ笑んでから、ついに彼らの元へと歩いて行った。

「――皆様、お話し中に失礼します。私はオルトガン伯爵家第三子、セシリアと申します。私も皆様のお話の仲間に、入れて頂けないでしょうか……?」

 セシリアが放った第一声に、多くの目が振り返った。

(そんなに大きな声を出したつもりは無かったんだけど……)
 
 集まった視線に、意図せず周りの会話を中断させてしまった事に若干の申し訳なさを感じた。
 そしてその一方で「それとも何か、注目されるような事を言っただろうか」と少し前の自分を振り返る。

 しかし振り返ってみたところで、セシリアに思い当たる節はない。
 だってセシリアは、ただ初対面の相手への挨拶をしただけなのだ。

 結局原因が分からず、分からない以上邪魔への謝罪もできず、セシリアは仮面の外側で優雅に微笑む事を選択した。



 しかし自分の失態の原因には思い至らずとも、セシリアの観察眼は健在だった。

 彼らは、大人達と比べるとやはり未熟さが目立つ様子だった。
 一応取り繕う気はある様なのだが、その未熟さ故に内包する感情がわかりやすく見え隠れしている。


 今セシリアへと向けられているのは、驚きと「珍しいものを見た」という目。
 そして、好奇心。

 数秒の後に、セシリアを冷静な目で観察し始めた物も幾つかある。


 そんな中。

「――そうか、君が『セシリー』か」

 一同を代表したかの様に、とある少年が口を開いた。

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