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フィーリアを追い出した後のドゥルズ伯爵家①
第5.5話 レイチェル・ドゥルズはほくそ笑む(3)
しおりを挟むザイスドート様の役にも立てない女のくせに。派手なのは嫌いだから、と伯爵家に不釣り合いに地味な服を着て、ザイスドート様とまるでお似合いでもないくせに。何故こんな女に負けなければならないの。
屋敷の管理と子の世話だけは熱心にしているようだけれど、家のことばかりなんてこんな女、使用人も同然だわ。子の世話なんて、乳母でもできるのだし。
そう思った瞬間、私の中で何かがカチッとハマった気がした。
そうだ、使用人が私よりも高い位置に居座っているなんてどう考えてもおかしいわ。
欲しいものは、手に入れようとしなければ手に入らない。私に足りないのは努力よ。
正妻の仕事は、他家の夫人と関係を良好に保つ事と屋敷の管理。そして跡取りの育成。
社交については、フィーリアはまるでやっていないのだから普通にやればいい。屋敷の管理は、まずは有力な使用人をこちらに引き入れる所からね。
跡取りについては……邪魔だし排除するという手もあるけれど、フィーリアとザイスドート様のあの愛でようだと面倒な軋轢を生みかねない。ならば利用する事にしよう。
どうやら私には、上っ面だけで相手の機嫌を取る社交に適性があったようだ。他家の夫人たちとすぐに仲良くなり、彼が無視できないくらいには家への貢献ができるようになった。
屋敷でも水面下で動きつつ、表ではフィーリアに私とのザイスドート様への貢献度を見せつけて、己の立場を分からせて「せめて屋敷の管理くらいはきちんとやったらどう?」という言葉で屋敷業務に張りつけにし、その一方で息子・マイゼルを甘やかし、少しずつその耳に毒を仕込み続けた。
努力は見事、結果に結びついた。
屋敷の管理をしていた筈のフィーリアはいつの間にか屋敷の働き手の一人へと成り下がり、マイゼルは私を慕うようになりフィーリアに更なる打撃を与えた。
ザイスドート様は、今や私の意向を無視できない。
お陰で私は、実質的に正妻の地位を手に入れた。
帰る場所などとうに失っているあの女は、今や居場所さえも失って、一人冷たい雨の中ではいつくばっているだろう。
そう思うと、おかしいやら楽しいやら。あの女には、私が嫁いできた時点で私に正妻の座を譲らなかった事を悔いてもらおう。アレが無ければまだ屋敷内にくらいは――いえ、結局目障りになって同じ結果を辿ったかしら。
可哀想なフィーリア。
誰にも必要とされず、ボロ雑巾のように朽ちてしまうがいいわ。
生粋の貴族令嬢だ、突然放り出されてまさか外で生きていける筈もない。
ザイスドート様の寝顔を眺めながら、私は勝利を噛み締めた。
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