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寝落ちてしまったフィーリアは、一宿の恩を彼らに返す。
第10話 誰かに必要とされる事(1)
しおりを挟む私が危険だというのなら、彼らも同じなのではないの? 大人とはどうしても体格差があるのだから、何が起きても不利になる気がする。
でも、思えば彼らは少なくとも今日まで、そういう危険と隣り合わせの中で生活してきた筈だ。昨日ここに来たばかりの私に心配される事は、大きなお世話になりかねない。
「それではどこか、ちゃんと泊まる事ができる場所を探さなくてはなりませんね。ご忠告いただき感謝します」
とりあえず、何か大変な事になる前に教えてもらえて良かった。彼らには本当に助けてもらいっぱなしだ。
そう思いながら、泊まる事ができる場所とはどこにあるのか。とりあえず建物の多そうな所に行けば――などと頭の中で考えていると、またもや深いため息がつかれた。
「はぁー、お前、宿代なんかに無駄遣いするつもりかよ」
「え?」
「どれだけ大金を持ってたって、金だって無限じゃないんだろ。やがては無くなって腹が減る。寝る場所がなくても死なないけど、食えないんじゃ死ぬんだからな」
「わざわざそれ以外の所に金を使う意味が分かんないよね」
思わずキョトンとしてしまった。だって、今まで一度も家を「別に、最低限の生活維持のために必須な訳ではない」とは思った事がなかったから。
これまで私は衣食住は、すべて必要なものだと思っていた。
だからこれまでどれだけレイチェルから辛く当たられたとしても、「屋根のある場所のベッドで寝かせてもらえて、薄汚れたお古とはいえ洋服を用意されているのだから、感謝すべき」という彼女の言葉に異論を抱く事はなかった。耐える事ができていた。
しかし、もしかしたらそれは恵まれた考え方なのかもしれない。
現に、彼らの服を見れば『衣』のクオリティーに重きを置いていない事は言うまでもないし、私だって薄汚れた服を着ていても今、問題なく生きている。
『住』にも彼らはお金を使っていない。放置された空き家という屋根はあるけれど、クオリティーに重きを置いていないし、私自身、一日ここで寝てみたけれど致命的な不足はなかった。
行くべきところも帰るところもない私がこの先生きようとするのならば、これからはきっとそういう考え方をしなければならないのだろう。
でも、住むところの安全面を考慮するなら、彼らと全く同じように『住』を満たす事は出来ない。その上「宿屋に泊まるのは無駄遣いだ」と言われたら、私は一体どうしたら――。
「別にいいんじゃないの、ここでも」
素っ気なく、ノインが言った。
思いもよらない提案に、思わず目を丸くする。
「とりあえず面積はこの通り三人寝ても余ってるわけだし、アンタも世間知らず過ぎだし。出ていくにしても、もうちょっと色々知った後じゃないと、アンタすぐに騙されるか野垂れ死ぬかの二択でしょ。流石にちょっと、寝覚めが悪いよね。っていうか、ディーダが夜中に様子見に行きそう」
「しねぇわ、そんな事!」
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