真夜中の独り言

papiko

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野ざるを檻にいれてはいけません!(2)

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 うつ病は体の不調からじわじわと始まるものだったのだと、今は理解できる。毎日下痢、毎日頻尿、毎日寝不足、毎日肩や背中に激痛。他にも、人混みにいると呼吸が浅くなって息苦しくなるとか、やたらと人目が気になって、体がビックってなるとか、かすかな音や人の話し声に常に体がピリピリしているとか…。その状態でKちゃんは、<真面目な子>という仮面をかぶり続けるが、本性、野ざる。外から眺めたら、ときどきボロがでていたことは、後々判明していくのだった。

 いじめの話をもう少ししてもいい?
「いいよ。アレだろ?部活のやつ」
 そう、入部したときは部室で三年生様がタバコ吸ってて、二年生様と対立してたと…。
「見事なまでの、ヤンキー集団だったね。目をつけられたことは、幸いにして一度もなかったけど。その反動で、二年生様たちが、三年生様になったときは、いろんな悪しき体育会系ルールを変えてくれたけど、どうしてだか、一学年違うと対立します構造は、なくならなかったな」
 Kちゃんは近所のお姉さんと仲良しだったから、先輩との仲は良かったよね。
「う~ん。それもあるけど、基本的にルール変更後も挨拶とか、服装とか、言葉遣いとか、部室使用の暗黙のルールとかはきっちり守ってたな」
 先輩の言動を信用していなかったわね。
「してないね。ときどき、愚痴られてたもんw」
 アレとか、アレとか、アレね(苦笑)
「だからといって、いじめまでにはならず、彼女たちは卒業していきまして、同級生たちが変貌するというか、もともとの猿山大将マウンティング大会がしたくてたまらなかったらしい子たちが、ヤンキー化というか高圧的態度を当たり前のように晒し始めたんだよ。うわぁ、うざって思ってたけどw」
 一年の時から、傾向としてはあったよね。
「うん、同級生に対してね。弱小チームなのに、自分は上手でアイツは下手だからパシリにしていい的な」
 Kちゃんは、大きな被害はうけなかったわね。
「そりゃ、野ざるの運動神経は伊達じゃない!ってやつだからな。どのポジションでもこなせたし。まあ、ときどき文句言うやつもいたけど、何言ってんだか弱小チームの一員のくせにさって思って気にしてなかったな。あと、父子家庭の子がいて、よく部活休んでたけど、その子に対してやたらライバル心燃やしてる子がブリブリ愚痴ってくるから、うざいなぁと。とりあえず、<仕方ないだろ?父子家庭なんだから>って言ったら、<だったら、部活やめればいいのよ!>なんてこというもんで、<そう思うなら、本人にいえば?戦力落ちるけど>って言ったら、<なんでKちゃんは、あいつをかばうのよ>とか言って拗ねられたけど。正直、なぞでしかなかったんだよね。親が一人しかいないってことは、家のことは自分でしなきゃならないことが当然あるわけで、両親とか爺様、婆様がいる家庭とは違って自己負担が大きいことくらい中学生なら想像できるだろうに。なぜ、できない?みたいな(苦笑)」
 あの頃って、Kちゃんは先生に対しても、同級生に対しても、なぜに馬鹿?って思ってたよね。
「思ってたよ。一年生の時は、クラスがわりと男子も女子も仲が良かったから、そこまでの思いはなかったけど、二年生でクラス替えになって、担任も副担も残念な大人だったし、クラス荒れだしたし…ああ、このパターン知ってるぞってw」
 デジャヴだわね。
「で、部活に目を戻してみれば、マウンティング大会開催のゴングが密かになってましたみたいな」
 Kちゃんは、男子の先輩から受けるしごきとか、全然、平気だったよね。
「だって女子部のために、お相手くださいましてありがとうございますな感じだし、唯一、最強先輩のボール取れますけど何か?だったし、男子部だって人数少ないし、弱小にかわりないしさ。苦痛だったのは、ランニングだな。基礎体力がないという致命的な欠陥はあったんだよね。で、どんなに鍛えてもそこだけ伸びないw」
 技術的な戦力が体力ないとか笑えるけど。
「これ、小学生の時からずっとだしな。短距離なら、一番か二番が当たり前なのに、マラソン大会になったらいつまでも帰ってこねぇ的に体力ないw」
 そこは誰もツッコまない?
「ツッコめなかったから、愚痴とか文句とかはときどきいうけど、スルーされるという喜劇。自分的には、弱小チームなんだから、そんな漫画みたいなチーム作ろうとかどんだけ妄想激しいかなって感じ」
 妄想とか得意ジャンルでしょ。オタクなんだから。
「疑似オタクであって、オタクではないんだよ、残念ながら。まあ、それは置いといて、三年生になったら、こっちの知らないところで、二年生とバトルしてたという…結果、引退間近に職員室の近くにあったせっまい畳の部屋に押し込められて、体育教師で顧問の先生が<あんたたちがいじめをやってたことはわかっている>とか言う始末」
 その時もKちゃんは、デジャヴってたわね。
「そ、あれ?このパターンだと…とか、思いつつ二年生たちみたら、<Kちゃん先輩は違いますから!>ってなって…」
 いじめてたやつら、号泣ってパターンね。
「そ。だいたい、説教食らって泣くなら、なぜにいじめなんてつまらんことするかな?って感じだろ?死人が出てないから、今、こんなこと言えるけどさ…正直、ものすごく運がよかったなって思うよ。小学五年生のいじめのときも、部活のいじめも、自殺者が出る前にどういう形にせよ、表に出てきて事なきを得たけどね」
 一時期、いじめられっ子さんの集団に友達認定されてたことあったよね。
「うん、どこ辺の時期かわかんないけど、お家に呼ばれて、本人から<屋上のカギがあいてたら、死んでた>って話を聞かされたこともあったね。そういうこといわれたから、縁は長く続かなかったけど。あと、大人になって五年生の時の仲良しさんが出産で実家に帰ってきてて、赤ちゃん見に来てほしいって言われて、会いに行ったことあったな」
 彼女とはオタク仲間的なつながりあったよね。
「うん、だからさ、ウキウキしながら赤ちゃん見に行って、抱っこさせてもらって<かわいいねぇ>ってデレデレしながら、いろいろ話してたんだけど、おじさんが帰ってきて、五年生の時の同級生だってわかるなり、何しに来やがった的な態度とられちゃって、いそいそ帰って来たけどさ」
 本人とおばさまは、ちゃんとわかっててくれたから、帰るとき<ごめんね>って言ってくれたね。
「まあねぇ、おじさんの気持ちはわからんでもないから(苦笑)」
 そうね。大事な娘さんだもんね。
「それにさ、世の中でいじめ関連の自殺者が増えていって、子供たちだけじゃなく、大人社会でも同じ構造で死んじゃう人が後を絶たなくなったし、隠ぺい体質で問題解決が進まないご時世だけど。それでも、虐待とかいじめとかから立ち直った人もたくさんいることが、自分的には救いになってるよ」
 本当だね。生きててくれてありがとうって気持ちになるよね。
「だから、虐待とかいじめとかすぐにはなくならないのもわかってるから、できるだけ死なないでほしいし、人を追い詰めるようなことはしないでくれって思う」
 思いながらも、行動する勇気はまだない?
「うん、まず、自分の病気とうまく付き合うしかないかなっていうのが現状だしね。ときどき、そういう個人の体験談とか本になってるやつみたりはするけどね…基本的に、空気読めないし、自分は自分、他人は他人(家族も含む)みたいな性格だからなぁ」
 世のため人のため頑張りますっていうの苦手だもんね。野ざるとしては。
「さように野ざる!」
 それ、うまいこと言えてないからね。
「そこはおだてとこうよぉ。野ざるちゃんなんだからさぁ」
 おだてて木に上るのは豚ちゃんよ。
「そうでした…じゃ、朝活してくる」
 はい、いってらっしゃ~い。

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