銀狼公子の導き手

竜胆 琳

文字の大きさ
上 下
29 / 29
二部 

しおりを挟む
 
 なんだか周りが慌ただしく動き出した。
 何事かとシャオメイが船長のフォウシュンに確認へ行った。

「スーシェン帝国の軍船がこちらにまっすぐ向かってきているそうです」
「軍船?」

 そう行っているところにジェメイがやってきた。

「メイファ様、お嬢、ここでしたか」
「ジェメイ、何事ですか?」
「わかりません、軍船がこちらに停船指示を出してきたそうで」

 そこに見張りの船員の報告の声が聞こえた。

「確認しました。明州州軍旗です!」
「明州軍の……ああ」

 ジェメイが何かに納得したように緊張をといた。

「ジェメイ?」

 ロンメイが弟を訝しげに見ると、ジェメイも姉をみた。

「はあ、あれ、ガオミン様ですよ、多分」
「……ああ」

 姉弟は共にため息を付いて近く軍船の方を見るのだった。

「母さん、よくわからないんだけど?」

 シャオメイが二人だけでわかり合っている母親と叔父を見る。
 メイファも二人を見て小首をかしげる。

「俺が、お嬢のために医者を港に待機させるよう手紙を飛ばしたせいです。きっとガオミン様はメイファ様の具合が悪くなったとでも思って飛び出してきたんでしょう」
「ガオミン様とは明家の?」

 名前から明家の人間で、自分たち親子を援助してくれた人物だとわかるが、ファルナにはなぜ軍船と関係があるのかわからなかった。

 ジェメイが言うにはガオミン様は明家当主の兄、元帝国禁軍将軍で、現在は州軍将軍の地位にあるという。

「ガオミン様がこちらに?」
「お母様はご存知なのですか」
「ええ、子供の頃、チァンミン様とよく遊んでいただきました」

 チァンミンは現明家当主でガオミンの弟である。通常兄のガオミンが当主を継ぐはずだが、当時のガオミンは禁軍将軍の役職にあったため、弟のチァンミンに当主の座を譲ったとされている。
 だが先王が崩御され、現皇帝が即位された後、職を辞し民州にもでってきたそうだ。

「でもどうしてそんな方が?」

 ファルナの疑問にジェメイが耳打ちする。

「先代の明家と華家当主との間で、メイファ様とガオミン様の結婚話があったんですよ。メイファ様の卒業を待ってガオミン様に嫁入り予定でした」

 それが皇帝の指示で卒業を待たず、メイファはプリステラ王国に嫁ぐことになってしまった。

「数年後、ガオミン様もご結婚なされましたが、まあ色々あって現在は独り身です」

 ジェメイは愚直で脳筋な将軍が、初恋の女性を忘れられず現在独り身を貫いているなどと、その女性の娘にはいい辛い。

 メイファ様は三十五歳、ガオミン様は四十一歳で再婚は十分可能だな、なんて考えるジェメイだった。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

百合佳
2019.06.21 百合佳

更新楽しみにしております。

解除
シロハタ
2019.05.03 シロハタ

6話の家督争いが過酷争いになってました

竜胆 琳
2019.05.04 竜胆 琳

修正しました、ありがとうございます。

解除

あなたにおすすめの小説

魔法使いに奪われたい~夫が心を入れ替えてももう遅い。侯爵夫人は奪われて幸せになります~

山夜みい
恋愛
ユフィリアは政略結婚した夫との冷え切った関係に悩んでいた。 一年の夫婦の務めを果たらず、お化粧をしても気付いてもらえない。 義母に虐められても「お前が悪いんだろう」の一点張り。 パーティーではエスコートされず、社交界で笑い物にされる日々。 「私、なんで生きてるんだろう」 実家の両親の顔を立てるため離婚も出来ない。 思いつめたユフィリアは買い物の最中に偶然、一人の男と出会う。 ルガール・ガンタール。 彼は世間で『狼閣下』と恐れられている冷酷な侯爵様だった。 ユフィリアの境遇に同情した侯爵様は言った。 「俺が奪ってやりましょうか」 「え……」 当初こそルガールを拒絶したユフィリアだが、他の男性と仲良くしたら夫が振り向いてくれるかもしれないと思い、デートをすることに。 「もっと早く出会っていたら、君に寂しい思いはさせなかったのに」 ルガールはユフィリアの健気な優しさと寂し気な瞳に惹かれ、ユフィリアまた夫にはない頼もしさと男らしさを感じて二人は惹かれ合う。ある日とうとう一夜を共に過ごしてしまいユフィリアは苦悩していたが、夫が後輩騎士と歩いているのを見たことで関係の終わりを悟る。 「あなた……私たち、離婚しましょう」 「待て。待ってくれ……俺が悪かった」 「さようなら」 ゴミ夫が心を入れ替えても、もう遅い。 あの手この手でユフィリアを取り戻そうとしても無駄だった。 「迎えに来ましたよ、ユフィリア」 傾いた心は、もう戻らない。

私の恋が消えた春

豆狸
恋愛
「愛しているのは、今も昔も君だけだ……」 ──え? 風が運んできた夫の声が耳朶を打ち、私は凍りつきました。 彼の前にいるのは私ではありません。 なろう様でも公開中です。

【完結】王子妃教育1日無料体験実施中!

杜野秋人
恋愛
「このような事件が明るみになった以上は私の婚約者のままにしておくことはできぬ!そなたと私の婚約は破棄されると思え!」 ルテティア国立学園の卒業記念パーティーで、第二王子シャルルから唐突に飛び出したその一言で、シャルルの婚約者である公爵家令嬢ブランディーヌは一気に窮地に立たされることになる。 シャルルによれば、学園で下級生に対する陰湿ないじめが繰り返され、その首謀者がブランディーヌだというのだ。 ブランディーヌは周囲を見渡す。その視線を避けて顔を背ける姿が何人もある。 シャルルの隣にはいじめられているとされる下級生の男爵家令嬢コリンヌの姿が。そのコリンヌが、ブランディーヌと目が合った瞬間、確かに勝ち誇った笑みを浮かべたのが分かった。 ああ、さすがに下位貴族までは盲点でしたわね。 ブランディーヌは敗けを認めるしかない。 だが彼女は、シャルルの次の言葉にさらなる衝撃を受けることになる。 「そして私の婚約は、新たにこのコリンヌと結ぶことになる!」 正式な場でもなく、おそらく父王の承諾さえも得ていないであろう段階で、独断で勝手なことを言い出すシャルル。それも大概だが、本当に男爵家の、下位貴族の娘に王子妃が務まると思っているのか。 これでもブランディーヌは彼の婚約者として10年費やしてきた。その彼の信頼を得られなかったのならば甘んじて婚約破棄も受け入れよう。 だがしかし、シャルルの王子としての立場は守らねばならない。男爵家の娘が立派に務めを果たせるならばいいが、もしも果たせなければ、回り回って婚約者の地位を守れなかったブランディーヌの責任さえも問われかねないのだ。 だから彼女はコリンヌに問うた。 「貴女、王子妃となる覚悟はお有りなのよね? では、一度お試しで受けてみられますか?“王子妃教育”を」 そしてコリンヌは、なぜそう問われたのか、その真意を思い知ることになる⸺! ◆拙作『熊男爵の押しかけ幼妻』と同じ国の同じ時代の物語です。直接の繋がりはありませんが登場人物の一部が被ります。 ◆全15話+番外編が前後編、続編(公爵家侍女編)が全25話+エピローグ、それに設定資料2編とおまけの閑話まで含めて6/2に無事完結! アルファ版は断罪シーンでセリフがひとつ追加されてます。大筋は変わりません。 小説家になろうでも公開しています。あちらは全6話+1話、続編が全13話+エピローグ。なろう版は続編含めて5/16に完結。 ◆小説家になろう4/26日間[異世界恋愛]ランキング1位!同[総合]ランキングも1位!5/22累計100万PV突破! アルファポリスHOTランキングはどうやら41位止まりのようです。(現在圏外)

【完結】無能に何か用ですか?

凛 伊緒
恋愛
「お前との婚約を破棄するッ!我が国の未来に、無能な王妃は不要だ!」 とある日のパーティーにて…… セイラン王国王太子ヴィアルス・ディア・セイランは、婚約者のレイシア・ユシェナート侯爵令嬢に向かってそう言い放った。 隣にはレイシアの妹ミフェラが、哀れみの目を向けている。 だがレイシアはヴィアルスには見えない角度にて笑みを浮かべていた。 ヴィアルスとミフェラの行動は、全てレイシアの思惑通りの行動に過ぎなかったのだ…… 主人公レイシアが、自身を貶めてきた人々にざまぁする物語──

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

もうすぐ、お別れの時間です

夕立悠理
恋愛
──期限つきの恋だった。そんなの、わかってた、はずだったのに。  親友の代わりに、王太子の婚約者となった、レオーネ。けれど、親友の病は治り、婚約は解消される。その翌日、なぜか目覚めると、王太子が親友を見初めるパーティーの日まで、時間が巻き戻っていた。けれど、そのパーティーで、親友ではなくレオーネが見初められ──。王太子のことを信じたいけれど、信じられない。そんな想いにゆれるレオーネにずっと幼なじみだと思っていたアルロが告白し──!?

最初から間違っていたんですよ

わらびもち
恋愛
二人の門出を祝う晴れの日に、彼は別の女性の手を取った。 花嫁を置き去りにして駆け落ちする花婿。 でも不思議、どうしてそれで幸せになれると思ったの……?

愛せないと言われたから、私も愛することをやめました

天宮有
恋愛
「他の人を好きになったから、君のことは愛せない」  そんなことを言われて、私サフィラは婚約者のヴァン王子に愛人を紹介される。  その後はヴァンは、私が様々な悪事を働いているとパーティ会場で言い出す。  捏造した罪によって、ヴァンは私との婚約を破棄しようと目論んでいた。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。