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二部
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フェステ到着を削除
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ファルナの現在の身分はプリステラ王国の平民であるが、もう一つ商会設立時に作った〝ファル〟としての偽装身分がある。
しかし身分証はプリステラ王国でウーステラ人として作ったものだ。
この偽装身分証はウーステラ共和国では使えない。ウーステラ共和国用にはジェメイの本当の娘である〝リンメイ〟の身分証を使用している。
ジェメイの娘のリンメイは今年11歳でファルナより2歳下なのだが、その辺りは「歳の割に発育がいい」などと言ってごまかしていたりする。
メイファにはジェメイの妻の身分証を使用した。ジェメイの妻はメイファより五歳ほど年下だが、この辺りの女の五歳差は化粧でわからないものだ。
プリステラ王国やスーシェン帝国より、他国の商人の入出国が簡単なウーステラなので、全員下船してフェステの街に宿をとった。
メイファは帰国を目前に精力的に空魔石へと魔力を注いでいるが、街をブラつけるほどは回復していない。
だが、ファルナとシャオメイに異国の地を訪れる機会など滅多にないと二人を送り出した。
そして何事もなくフェステを出発し、海へと出る。
シェステからスーシェン帝国のスーミン州に行くには二つの航路がある。
天龍山脈から伸びる岬とその先にある鼓月島の間にある弧流海峡を通る海路と、鼓月島の南側を回る海路だ。
弧流海峡には四神の結界があり、四神の護符のない船は通過することができないのだ。
したがって護符のない帝国以外の船は鼓月島を大回りしなくてはならない。
この船には当然護符があるので弧流海峡を通る。
そしてこの弧流海峡の結界から南の海はスーシェン帝国の領海となるのだ。
通過してしまえばメイファのギアスは発動せず、魔術の使用が可能となるのだった。
「ようやく、帰ってこれたのね」
帆が風を受け船はスムーズに波をわけ進んでいく。
右手には天龍山脈から連なり、海に突き出す様な形の小龍岬が見えた。
メイファも待ち遠しさを堪え、ファルナたちと揃って甲板で岬を通過するのを待ち構えていた。
「通過しますよ」
どこが教会なのかファルナたちにはわからないが、なんどもここを行き来している船長のフォウシュンにはわかっていた。
楽しみにしている四人に声をかけると、特に景色が変わるわけではないし何かが起こるわけでもないので、ファルナたちの姿に笑みが漏れた。
「え?」
四人のうちで、ファルナの表情だけが曇った。
ドン!!
突然、船が上から押し付けられる様に海に深く沈み、反動で浮き上がる。
「きゃあ!」
「うわっ」
「な、なんだ」
あちこちから悲鳴が上がるが、船は何事もなかった様にそのまま進んだ。
「なんだ、今のは」
フォウシュンは舵を握りしめたままあたりを見回す。
「お嬢!」
「ファルナ!」
「お嬢様!」
フォウシュンの視界に、倒れているファルナと駆け寄るジェメイとシャオメイの姿が映った。
フェステ到着を削除
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ファルナの現在の身分はプリステラ王国の平民であるが、もう一つ商会設立時に作った〝ファル〟としての偽装身分がある。
しかし身分証はプリステラ王国でウーステラ人として作ったものだ。
この偽装身分証はウーステラ共和国では使えない。ウーステラ共和国用にはジェメイの本当の娘である〝リンメイ〟の身分証を使用している。
ジェメイの娘のリンメイは今年11歳でファルナより2歳下なのだが、その辺りは「歳の割に発育がいい」などと言ってごまかしていたりする。
メイファにはジェメイの妻の身分証を使用した。ジェメイの妻はメイファより五歳ほど年下だが、この辺りの女の五歳差は化粧でわからないものだ。
プリステラ王国やスーシェン帝国より、他国の商人の入出国が簡単なウーステラなので、全員下船してフェステの街に宿をとった。
メイファは帰国を目前に精力的に空魔石へと魔力を注いでいるが、街をブラつけるほどは回復していない。
だが、ファルナとシャオメイに異国の地を訪れる機会など滅多にないと二人を送り出した。
そして何事もなくフェステを出発し、海へと出る。
シェステからスーシェン帝国のスーミン州に行くには二つの航路がある。
天龍山脈から伸びる岬とその先にある鼓月島の間にある弧流海峡を通る海路と、鼓月島の南側を回る海路だ。
弧流海峡には四神の結界があり、四神の護符のない船は通過することができないのだ。
したがって護符のない帝国以外の船は鼓月島を大回りしなくてはならない。
この船には当然護符があるので弧流海峡を通る。
そしてこの弧流海峡の結界から南の海はスーシェン帝国の領海となるのだ。
通過してしまえばメイファのギアスは発動せず、魔術の使用が可能となるのだった。
「ようやく、帰ってこれたのね」
帆が風を受け船はスムーズに波をわけ進んでいく。
右手には天龍山脈から連なり、海に突き出す様な形の小龍岬が見えた。
メイファも待ち遠しさを堪え、ファルナたちと揃って甲板で岬を通過するのを待ち構えていた。
「通過しますよ」
どこが教会なのかファルナたちにはわからないが、なんどもここを行き来している船長のフォウシュンにはわかっていた。
楽しみにしている四人に声をかけると、特に景色が変わるわけではないし何かが起こるわけでもないので、ファルナたちの姿に笑みが漏れた。
「え?」
四人のうちで、ファルナの表情だけが曇った。
ドン!!
突然、船が上から押し付けられる様に海に深く沈み、反動で浮き上がる。
「きゃあ!」
「うわっ」
「な、なんだ」
あちこちから悲鳴が上がるが、船は何事もなかった様にそのまま進んだ。
「なんだ、今のは」
フォウシュンは舵を握りしめたままあたりを見回す。
「お嬢!」
「ファルナ!」
「お嬢様!」
フォウシュンの視界に、倒れているファルナと駆け寄るジェメイとシャオメイの姿が映った。
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