14 / 29
一部 プリステラ王国編
14 ジェメイ視点
しおりを挟む「貴方がロンメイの弟なの? あまり似ていないのね」
そう言って臥せっている母親に代わり挨拶に出てきたファルナ様。
姉と二人で商会をデルーナに設立し、メイファ様方に金銭的な援助をと話していた時だった。
「本拠地はウーステラのシェステ辺りに置いた方がいいわ。税率を考えればそのほうが収益は多くなるもの。デルーナには支店という形で規模は小さめにして。資金調達という面ではウーステラ方面への販路もあったほうが良いのでは?」
目の前で税額をざっと計算して示す姿は、御年八歳とは思えなかった。
メイファ様の体調改善のために持ち込んだ魔力吸収の魔道具を見て、魔石商売の提案をしたのもファルナ様だ。
空魔石の再充填は、下級貴族の小遣い稼ぎで、積極的に行われているわけではなかった。
俺や姉、姪のシャオメイも平民だが魔力を持っている。だが魔力消費はもっぱら魔道具に流すことにして、空魔石に再充填してそれを売ることまで考えていなかった。
帝国外に売った魔石を回収する手間の方がかかるが、帝国内まで運ぶのではなく、デルーナまでならたいしてかからない。
タダ同然で回収された空魔石は、メイファ様とファルナ様によって再充填され売られていく。
元手いらずの高収入だった。
魔石の買い付け金を計上することでメイファ様たちの生活を支えるための金が溜まっていった。
お二人の魔力によってもたらされた金だ。お二人のために使うことに問題はない。
俺はデルーナの商業ギルドに登録する際、ファルナ様に色かえの魔道具を装着し、ウーステラの平民服を着せて娘のファルとして登録した。
侯爵令嬢でありながら、領地から出ることのできないファルナ様にかりそめの身分をこしらえ、何度かウーステラまでお連れした。
ウーステラ共和国はスーシェン帝国と違って入国審査がゆるい。もともとスーシェン帝国だけではなく、西の半月大陸や多くの国との商いで成り立つ商業国だ。商人を拒んでいたら商売の種を拒むようなものだからな。
最終的にウーステラに作ったプラムブル商会の会頭はファルナ様になっている。
ファルナ様発案の〝振動吸収〟〝空間拡張〟〝状態保存〟機能付加のゴーレム馬車の売れ行きは国内外問わず好調だ。
スーシェン帝国の特許庁には他にもファルナ様の名で登録した魔道具はいくつもある。
魔道具製作は下級貴族の仕事だ。だが下級貴族であるため、多くの魔法を付加することができない。
「なぜ一人で作るの? 魔力が足らないから? なら大勢で付加すればいいじゃない」
スーシェン帝国民としての常識の薄さが、ファルナ様の発案の元になっているのかもしれない。
さらに再充填された魔石を使うことで下級貴族でも潤沢な魔力で付加を行えるのだ。
0
お気に入りに追加
91
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
(完)妹が全てを奪う時、私は声を失った。
青空一夏
恋愛
継母は私(エイヴリー・オマリ伯爵令嬢)から母親を奪い(私の実の母は父と継母の浮気を苦にして病気になり亡くなった)
妹は私から父親の愛を奪い、婚約者も奪った。
そればかりか、妹は私が描いた絵さえも自分が描いたと言い張った。
その絵は国王陛下に評価され、賞をいただいたものだった。
私は嘘つきよばわりされ、ショックのあまり声を失った。
誰か助けて・・・・・・そこへ私の初恋の人が現れて・・・・・・
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません
たろ
恋愛
処刑されたエリーゼ。
何もしていないのに冤罪で……
死んだと思ったら6歳に戻った。
さっき処刑されたばかりなので、悔しさも怖さも痛さも残ったまま巻き戻った。
絶対に許さない!
今更わたしに優しくしても遅い!
恨みしかない、父親と殿下!
絶対に復讐してやる!
★設定はかなりゆるめです
★あまりシリアスではありません
★よくある話を書いてみたかったんです!!
王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる