銀狼公子の導き手

竜胆 琳

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一部 プリステラ王国編

14 ジェメイ視点

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「貴方がロンメイの弟なの? あまり似ていないのね」

 そう言って臥せっている母親に代わり挨拶に出てきたファルナ様。

 姉と二人で商会をデルーナに設立し、メイファ様方に金銭的な援助をと話していた時だった。

「本拠地はウーステラのシェステ辺りに置いた方がいいわ。税率を考えればそのほうが収益は多くなるもの。デルーナには支店という形で規模は小さめにして。資金調達という面ではウーステラ方面への販路もあったほうが良いのでは?」

 目の前で税額をざっと計算して示す姿は、御年八歳とは思えなかった。
 メイファ様の体調改善のために持ち込んだ魔力吸収の魔道具を見て、魔石商売の提案をしたのもファルナ様だ。
 空魔石の再充填は、下級貴族の小遣い稼ぎで、積極的に行われているわけではなかった。
 俺や姉、姪のシャオメイも平民だが魔力を持っている。だが魔力消費はもっぱら魔道具に流すことにして、空魔石に再充填してそれを売ることまで考えていなかった。
 帝国外に売った魔石を回収する手間の方がかかるが、帝国内まで運ぶのではなく、デルーナまでならたいしてかからない。
 タダ同然で回収された空魔石は、メイファ様とファルナ様によって再充填され売られていく。
 元手いらずの高収入だった。
 魔石の買い付け金を計上することでメイファ様たちの生活を支えるための金が溜まっていった。
 お二人の魔力によってもたらされた金だ。お二人のために使うことに問題はない。

 俺はデルーナの商業ギルドに登録する際、ファルナ様に色かえの魔道具を装着し、ウーステラの平民服を着せてとして登録した。

 侯爵令嬢でありながら、領地から出ることのできないファルナ様にかりそめの身分をこしらえ、何度かウーステラまでお連れした。
 ウーステラ共和国はスーシェン帝国と違って入国審査がゆるい。もともとスーシェン帝国だけではなく、西の半月大陸や多くの国との商いで成り立つ商業国だ。商人を拒んでいたら商売の種を拒むようなものだからな。

 最終的にウーステラに作ったプラムブル商会の会頭はファルナ様になっている。
 ファルナ様発案の〝振動吸収〟〝空間拡張〟〝状態保存〟機能付加のゴーレム馬車の売れ行きは国内外問わず好調だ。
 スーシェン帝国の特許庁には他にもファルナ様の名で登録した魔道具はいくつもある。
 
 魔道具製作は下級貴族の仕事だ。だが下級貴族であるため、多くの魔法を付加することができない。

「なぜ一人で作るの? 魔力が足らないから? なら大勢で付加すればいいじゃない」

 スーシェン帝国民としての常識の薄さが、ファルナ様の発案の元になっているのかもしれない。
 さらに再充填された魔石を使うことで下級貴族でも潤沢な魔力で付加を行えるのだ。
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