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第一部 日常の日々の崩壊編
対面
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~壱~
秀吉と歩き始めて十分程経った。俺はどうしても聞きたいことがあった。勇気を出して聞いてみる。
「此処は何処なのですか?」
「此処が何処なのかも忘れたのか。此処は近江じゃ。今から向かうのは信長殿の居城、『安土城』じゃ。」
安土城。本能寺の変のあとに何者かによって焼かれた幻の城。今からそこに向かうなんて…最っ高!!と一人で興奮していると、
「そろそろ着くぞ。」
と秀吉が言った。俺が興奮をやめて前を見ると…そこには想像以上の安土城の姿があった。輝くぐらいに豪華で大きな城。よくこんなに金があったなと驚くぐらいの城だった。
「凄いですね。尊敬します。」
「わしの殿様じゃからな。これぐらいは当然じゃ。」
織田信長とはどんな男なのか。凄く気になる。ウズウズしていると、いつの間にか門の前に立っていた。門番らしき男が秀吉に話しかける。
「秀吉様。お帰りなさいませ。信長殿が話があると。」
「あぁ。分かった。」
「お連れ様は知り合いであられますか。」
「いや、記憶喪失らしくてな。中々気立てが上手いやつじゃ。信長殿と会わせたくて連れてきたのじゃ。」
門番は考えているようだ。確かに俺の服装からして怪しそうに見える。入れなかったらどうしようか。
「では信長殿に許可を取って参ります。」
門番は走って城内に消えていった。秀吉が俺に話しかける。
「殿は新しい物が大好きじゃ。お主のその服、殿は必ず気にいるはずじゃ。大丈夫じゃ。」
そうか。信長は南蛮の物が好きだったっけ。意外と大丈夫かもしれない。
しばらくして、門番が帰ってきた。
「通っても良いとのことです。」
よっしゃァァァ!!
「ありがとうございます!!」
「いや、礼を言われるほどの事はしていません。では、お気を付けて。」
そうして、俺は安土城内に入ることができたのであった!!
~弐~
城内は外観に劣らないレベルの豪華さだった。美しい屏風絵。豪華すぎる黄金の茶室。扉も凄く綺麗だった。見とれていると、
「夜は観覧料を払えば美しい夜の安土城が見られるのじゃよ。」
と遊園地のスタッフばりの宣伝をする。そんな話をしていると、ついに信長がいるという部屋の前に辿り着いた。
「信長殿。入っても宜しいでしょうか。」
「あぁ。入れ。」
カタッ。そこにいたのは、肖像画と全く同じ、切れ長の目、薄い髭でいかにも恐そうな信長が座っていた。
「その小僧が門番が言っておった記憶喪失の者か。」
「ハッ。」
「名はなんと申す。」
「あっ、えっと、赤夢先 来也、歳は十四です。信長殿に会えて光栄です。使えないかもしれませんが、家臣にしてください!!」
此処で過ごせる、となったら最高だ。身分は隠して一家臣となろう。そう俺は思った。
「―して、出身も分からぬのか。」
「はい、名と歳以外は何も。」
「その風呂敷には何が入っておる。」
「あ、書とか日常品とかです。」
そう言ってリュックの中の物を取り出す。すると、
「おぉ!!その珍しい笠、わしは気に入ったぞ!!それをわしに献上したら家臣にしてやろう。」
と帽子を指差して言う。……。
「だ…め…です。これは…俺の大切な、大切な親友との思い出の笠なんです!これだけは、お願いします!」
ヤバイ、献上すれば家臣になれる大チャンスだったのにダメだと言ってしまった。重い空気がながれる室内。俺はもう終わったと思った。…沈黙を破ったのは信長の意外すぎる一言であった。
「…フッ。やはりな。」
「エッ!」
「わしはお前を試した。お前、記憶喪失ではなかろう。」
えっ…何故わかったんだ?俺はそう思った。すると、
「何故か。それはこの帽子だ。わしが貰おうとしたとき、お前は親友の事を出した。記憶はあるのじゃろう。お前、何者じゃ。」
流石信長。もう正体を言うしかないか。信じてもらえないと思うけど。
「…はい。俺はずっと先の世界から来ました。俺はその世界から此処へ時間を巻き戻されて来てしまったのです。…信じてもらえないですよね。」
二人共驚いた顔をしていた。
「時間を…巻き戻された…とな?」
秀吉は状況がよく分かっていないようだ。
「ハッハッハ!!その着物も、笠も、全て先の世界からと云うのか!そなたの世界の話、聞かせるのじゃ。」
俺は現代の話を懸命にした。
~一時間後~
「こんなところですかね。信じて貰えましたか?」
「ミライ、か。お主、面白いやつじゃのう。織田軍にも盛り上げ役が必要じゃ。よし、そなたを小姓に任ぜよう。」
「良かったな。来也。」
「だが、そのミライ?の話は三人だけの話じゃからな。」
「「ハッ!!」」
よっしゃァ!後は手柄を上げるだけ!そんな感じで俺の小姓生活が始まったのであった!!
秀吉と歩き始めて十分程経った。俺はどうしても聞きたいことがあった。勇気を出して聞いてみる。
「此処は何処なのですか?」
「此処が何処なのかも忘れたのか。此処は近江じゃ。今から向かうのは信長殿の居城、『安土城』じゃ。」
安土城。本能寺の変のあとに何者かによって焼かれた幻の城。今からそこに向かうなんて…最っ高!!と一人で興奮していると、
「そろそろ着くぞ。」
と秀吉が言った。俺が興奮をやめて前を見ると…そこには想像以上の安土城の姿があった。輝くぐらいに豪華で大きな城。よくこんなに金があったなと驚くぐらいの城だった。
「凄いですね。尊敬します。」
「わしの殿様じゃからな。これぐらいは当然じゃ。」
織田信長とはどんな男なのか。凄く気になる。ウズウズしていると、いつの間にか門の前に立っていた。門番らしき男が秀吉に話しかける。
「秀吉様。お帰りなさいませ。信長殿が話があると。」
「あぁ。分かった。」
「お連れ様は知り合いであられますか。」
「いや、記憶喪失らしくてな。中々気立てが上手いやつじゃ。信長殿と会わせたくて連れてきたのじゃ。」
門番は考えているようだ。確かに俺の服装からして怪しそうに見える。入れなかったらどうしようか。
「では信長殿に許可を取って参ります。」
門番は走って城内に消えていった。秀吉が俺に話しかける。
「殿は新しい物が大好きじゃ。お主のその服、殿は必ず気にいるはずじゃ。大丈夫じゃ。」
そうか。信長は南蛮の物が好きだったっけ。意外と大丈夫かもしれない。
しばらくして、門番が帰ってきた。
「通っても良いとのことです。」
よっしゃァァァ!!
「ありがとうございます!!」
「いや、礼を言われるほどの事はしていません。では、お気を付けて。」
そうして、俺は安土城内に入ることができたのであった!!
~弐~
城内は外観に劣らないレベルの豪華さだった。美しい屏風絵。豪華すぎる黄金の茶室。扉も凄く綺麗だった。見とれていると、
「夜は観覧料を払えば美しい夜の安土城が見られるのじゃよ。」
と遊園地のスタッフばりの宣伝をする。そんな話をしていると、ついに信長がいるという部屋の前に辿り着いた。
「信長殿。入っても宜しいでしょうか。」
「あぁ。入れ。」
カタッ。そこにいたのは、肖像画と全く同じ、切れ長の目、薄い髭でいかにも恐そうな信長が座っていた。
「その小僧が門番が言っておった記憶喪失の者か。」
「ハッ。」
「名はなんと申す。」
「あっ、えっと、赤夢先 来也、歳は十四です。信長殿に会えて光栄です。使えないかもしれませんが、家臣にしてください!!」
此処で過ごせる、となったら最高だ。身分は隠して一家臣となろう。そう俺は思った。
「―して、出身も分からぬのか。」
「はい、名と歳以外は何も。」
「その風呂敷には何が入っておる。」
「あ、書とか日常品とかです。」
そう言ってリュックの中の物を取り出す。すると、
「おぉ!!その珍しい笠、わしは気に入ったぞ!!それをわしに献上したら家臣にしてやろう。」
と帽子を指差して言う。……。
「だ…め…です。これは…俺の大切な、大切な親友との思い出の笠なんです!これだけは、お願いします!」
ヤバイ、献上すれば家臣になれる大チャンスだったのにダメだと言ってしまった。重い空気がながれる室内。俺はもう終わったと思った。…沈黙を破ったのは信長の意外すぎる一言であった。
「…フッ。やはりな。」
「エッ!」
「わしはお前を試した。お前、記憶喪失ではなかろう。」
えっ…何故わかったんだ?俺はそう思った。すると、
「何故か。それはこの帽子だ。わしが貰おうとしたとき、お前は親友の事を出した。記憶はあるのじゃろう。お前、何者じゃ。」
流石信長。もう正体を言うしかないか。信じてもらえないと思うけど。
「…はい。俺はずっと先の世界から来ました。俺はその世界から此処へ時間を巻き戻されて来てしまったのです。…信じてもらえないですよね。」
二人共驚いた顔をしていた。
「時間を…巻き戻された…とな?」
秀吉は状況がよく分かっていないようだ。
「ハッハッハ!!その着物も、笠も、全て先の世界からと云うのか!そなたの世界の話、聞かせるのじゃ。」
俺は現代の話を懸命にした。
~一時間後~
「こんなところですかね。信じて貰えましたか?」
「ミライ、か。お主、面白いやつじゃのう。織田軍にも盛り上げ役が必要じゃ。よし、そなたを小姓に任ぜよう。」
「良かったな。来也。」
「だが、そのミライ?の話は三人だけの話じゃからな。」
「「ハッ!!」」
よっしゃァ!後は手柄を上げるだけ!そんな感じで俺の小姓生活が始まったのであった!!
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