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最終話 ロンバウトと一緒に
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王都滞在最終日、豪華な朝食をコールハース侯爵邸でいただいた後、団長に王宮騎士団本部の広い訓練場へと連れてこられた。
ボンネフェルト騎士団の面々は元気そうで安心したけれど、心なしか王宮騎士団の騎士たちはげんなりしているように見える。
「ロンバウトの仇はとってやりました」
団長の姿を見てこちらに走り寄ってきたデニスが、まるで褒めてほしいと言わんばかりに報告していた。
「やっぱり若い奴は元気だよな」
ゆっくりと近寄ってきたラルスがそんなデニスを見て苦笑している。
「中々面白い合同演習だったみたいだな。参加できなくて残念だ。まあ、魔女の森への立ち入り禁止の強化と王宮騎士による巡回警備を陛下に約束させたから、私の方もそれなりに成果はあったが。訓練費用とアニカとロンバウトへの慰謝料も貰ったし」
団長は少し悔しそうにしていた。
「ねえ、何があったの?」
小声でラルスに訊いてみた。大柄なラルスはちょっと屈みながら答えてくれる。
「我が騎士団は規格外のロンバウトと一緒に訓練するうちにかなりの力をつけていたようだ。特に若手はロンバウトへの対抗意識もあり、全力で頑張っていたからな。腹筋や徒競走などの基礎体力。剣や槍の模擬戦。それらすべてに王国騎士団の若手を圧倒したデニスたちが、ことあるごとに自分たちよりロンバウトの方が凄いのだと言っていたからな。優秀な騎士であるロンバウトを放逐したことを王宮騎士団に後悔させてやりたかったのだろう」
それはちょっと胸のすく思いがするかも。デニスはロンバウトのことを嫌っていると思っていたけれど、ちゃんと認めているのだとわかって、それも嬉しかった。
「それでは、ボンネフェルトへ帰るぞ。その前に王都で買い物だ!」
団長がそう言うと、みんなの顔が一気に明るくなる。やっぱりボンネフェルトが恋しいみたい。
「団長。私への慰謝料、みんなで分けてください。思いきり買い物できるように」
王都は物価が高いらしいので、彼らの手持ちだけでは安物しか買えないかもしれない。訓練を兼ねているとはいえ、私を迎えに来てくれた騎士たちだもの。せこい贈り物をして恋人に嫌われたりしたら困る。
「アニカはそれでいいのか?」
「勿論です。庶民には多すぎる金額ですから」
私が頷くと、騎士たちの野太い歓声が上がった。みんなもお土産を買うのを楽しみにしていたみたい。
王都の商店街は思った以上の賑わいを見せていた。大通りを行き交う人だけで、ボンネフェルトの町の全住民より多い気がする。
沿道には様々なお店が並んでいた。田舎者だと思われそうだけど、きょろきょろと辺りを見回しながらゆっくりと歩いて行く。こんな賑やかなところで必要ないと思うのだけど、ラルスとデニスが護衛についてくれている。その他に、半数くらいの騎士が一定の距離を保って護衛してくれているとのこと。大げさすぎると思うけれど、訓練だから受け入れるしかない。
そうしてぶらぶら歩いていると、雑貨屋の店先に貼られたちらしが目に入ってきた。
『すり減らない金属のペン先新発売! 羽ペンはもう古い』
『植物から作った安価な紙あります』
ロンバウトへのお土産はこれしかない。だって、紙とペンがあればロンバウトが書く美しい文字を残すことができるもの。
早速雑貨に入ることにした。ラルスとデニスもついてくる。他の騎士は外で待っているみたい。それほど大きくないお店なので、全員入ったら確実に業務妨害になってしまうものね。
確かに価格はボンネフェルトよりも高い気がする。でも、見たこともないような商品が多くて、見るだけで楽しい。
「アニカ。あっちに髪飾りが置いてあるんだけど、気に入ったものはあるか?」
新発売だという金属のペンを見ていると、そわそわしながらデニスが訊いてきた。
「恋人に贈るものを選んでほしいの?」
「違うよ。ほら、慰謝料を分けてくれただろう? その礼をしたくて」
「礼なんていいのよ。それより恋人に贈ればいいわ」
「恋人なんかいない」
不貞腐れたようにデニスは横を向いてしまった。気にしていたらしい。
「そうなんだ。でも、すぐにできるよ。だって、ボンネフェルトの町では騎士は大人気だもの」
慰めなんかじゃない。それは真実だからね。騎士は体が丈夫だし、お給金も高い。それに、絶対に護ってくれそうで安心するから。
でも、デニスは私の話を信用していないのか、辛そうな顔のままだ。
「あのね、ロンバウトのためにペンを買いたいんだけど、この銀製のペン軸のものと、陶器のペン軸、どっちがいいと思う?」
とりあえず話題を変えなければと思って、デニスに訊いてみた。
「どっちでもいいんじゃないか」
そうなんだよね。ちょっと渋い銀はロンバウトに似合うと思うけれど、上品な青い花が描かれた陶器製も捨てがたい。
そうだ。どっちも買えばいいんだ。お金にはまだまだ余裕がある。綺麗な紺色のインクと少しごわごわした紙を束で買った。羊皮紙よりはかなり安くて、気軽に使えそう。
これを使ってロンバウトと話をすれば、あの美しい文字を保存しておける。とっても楽しみだ。
気がつくとデニスが不機嫌そうに睨んでいる。
「いい加減、諦めろ」
ラルスがそんなことを呟いていた。
お土産を選ぶのに時間をかけすぎでしまった。二人の自由時間が少なくなってしまったので怒っているみたい。
「遅くなってごめんね」
誤りながら慌てて店を出た。
太陽が真上にかかる頃、買い物と昼食を済ませて、ボンネフェルトへの帰路についた。
まだ訓練は続いていて、相変わらず私は貴婦人役を務めている。だけど、王都を追われたという設定が追加されたらしく、追手を撒きながらの逃避行のようだった。森の中を走ったり、小さな村で農家の納屋に泊めてもらったりと、それはそれで楽しい旅を経験できた。
王都を出て十日目の夕方、やっとボンネフェルトの町が見えてきた。煙が上がっているのは騎士団食堂の竈だ。夕食の用意で目も回るくらい忙しい時間だから。
ようやく帰ってくることができた。魔女に攫われたのが遠い昔に感じてしまう。
ちょっと涙ぐみながら町の門を眺めていると、ものすごい速さの物体がこちらの方へ向かってくる。
よく見ると、それはロンバウトだった。
「ラルスさん、降ろして」
そう頼むと、ラルスは軽々と私を馬から降ろしてくれた。
町の方へ向かって駆けていくと、近くまで走って来ていたロンバウトが急停止した。毛むくじゃらの大きな足が地面にめり込んでいる。大きく肩で息をしているので、本当に全速力で走ってきたみたい。
「ロンバウトさん、助けてくれてありがとう」
私はそっと右手を差し出した。しばらく家事をしていないので、前よりは綺麗になったと思う。それでもお姫様の手には程遠く、差し出すのはかなり恥ずかしい。
だけど、こうして礼をするのが騎士に助けられた時の作法らしいから、やるしかない。
ロンバウトが一歩前に出て片膝をついた。そして、優雅な動作で私の手をとる。
ゆっくりと彼の顔が私の右手の甲に近づいてきて、触れるだけのキスを落としてくれた。
ロンバウトは物語に出てくる格好良い騎士様そのものだった。
彼の尻尾が激しく左右に揺れている。本気で喜んでくれているみたいなので、やっぱりこれが正解だったらしい。
しばらくすると、口笛の音や歓声が聞こえてきた。
「アニカ、本当にするとは思わなかったぞ」
団長が腹を抱えて笑っているので、私は騙されていたらしい。
「ごめんなさい。団長の冗談を真に受けたみたい」
慌てて手を引き抜くと、ロンバウトは笑顔で首を横に振った。そして、立ち上がって石板に『お帰り』と書いた。
「ただいま」
『一緒に帰ろう』
ロンバウトが誘ってくれたので、私を騙した団長たちのことは無視して、歩いてボンネフェルトの町を目指すことにした。
「今日の夕食は何かな?」
やっとお父さんの料理を食べることができると思うと、すごくお腹が空いてきた。
『鶏を焼く匂いがしていた』
さすがロンバウトは鼻もいい。
「鶏のステーキかな。楽しみだね」
そう言うと、ロンバウトは嬉しそうに何度も頷いていた。
ボンネフェルト騎士団の面々は元気そうで安心したけれど、心なしか王宮騎士団の騎士たちはげんなりしているように見える。
「ロンバウトの仇はとってやりました」
団長の姿を見てこちらに走り寄ってきたデニスが、まるで褒めてほしいと言わんばかりに報告していた。
「やっぱり若い奴は元気だよな」
ゆっくりと近寄ってきたラルスがそんなデニスを見て苦笑している。
「中々面白い合同演習だったみたいだな。参加できなくて残念だ。まあ、魔女の森への立ち入り禁止の強化と王宮騎士による巡回警備を陛下に約束させたから、私の方もそれなりに成果はあったが。訓練費用とアニカとロンバウトへの慰謝料も貰ったし」
団長は少し悔しそうにしていた。
「ねえ、何があったの?」
小声でラルスに訊いてみた。大柄なラルスはちょっと屈みながら答えてくれる。
「我が騎士団は規格外のロンバウトと一緒に訓練するうちにかなりの力をつけていたようだ。特に若手はロンバウトへの対抗意識もあり、全力で頑張っていたからな。腹筋や徒競走などの基礎体力。剣や槍の模擬戦。それらすべてに王国騎士団の若手を圧倒したデニスたちが、ことあるごとに自分たちよりロンバウトの方が凄いのだと言っていたからな。優秀な騎士であるロンバウトを放逐したことを王宮騎士団に後悔させてやりたかったのだろう」
それはちょっと胸のすく思いがするかも。デニスはロンバウトのことを嫌っていると思っていたけれど、ちゃんと認めているのだとわかって、それも嬉しかった。
「それでは、ボンネフェルトへ帰るぞ。その前に王都で買い物だ!」
団長がそう言うと、みんなの顔が一気に明るくなる。やっぱりボンネフェルトが恋しいみたい。
「団長。私への慰謝料、みんなで分けてください。思いきり買い物できるように」
王都は物価が高いらしいので、彼らの手持ちだけでは安物しか買えないかもしれない。訓練を兼ねているとはいえ、私を迎えに来てくれた騎士たちだもの。せこい贈り物をして恋人に嫌われたりしたら困る。
「アニカはそれでいいのか?」
「勿論です。庶民には多すぎる金額ですから」
私が頷くと、騎士たちの野太い歓声が上がった。みんなもお土産を買うのを楽しみにしていたみたい。
王都の商店街は思った以上の賑わいを見せていた。大通りを行き交う人だけで、ボンネフェルトの町の全住民より多い気がする。
沿道には様々なお店が並んでいた。田舎者だと思われそうだけど、きょろきょろと辺りを見回しながらゆっくりと歩いて行く。こんな賑やかなところで必要ないと思うのだけど、ラルスとデニスが護衛についてくれている。その他に、半数くらいの騎士が一定の距離を保って護衛してくれているとのこと。大げさすぎると思うけれど、訓練だから受け入れるしかない。
そうしてぶらぶら歩いていると、雑貨屋の店先に貼られたちらしが目に入ってきた。
『すり減らない金属のペン先新発売! 羽ペンはもう古い』
『植物から作った安価な紙あります』
ロンバウトへのお土産はこれしかない。だって、紙とペンがあればロンバウトが書く美しい文字を残すことができるもの。
早速雑貨に入ることにした。ラルスとデニスもついてくる。他の騎士は外で待っているみたい。それほど大きくないお店なので、全員入ったら確実に業務妨害になってしまうものね。
確かに価格はボンネフェルトよりも高い気がする。でも、見たこともないような商品が多くて、見るだけで楽しい。
「アニカ。あっちに髪飾りが置いてあるんだけど、気に入ったものはあるか?」
新発売だという金属のペンを見ていると、そわそわしながらデニスが訊いてきた。
「恋人に贈るものを選んでほしいの?」
「違うよ。ほら、慰謝料を分けてくれただろう? その礼をしたくて」
「礼なんていいのよ。それより恋人に贈ればいいわ」
「恋人なんかいない」
不貞腐れたようにデニスは横を向いてしまった。気にしていたらしい。
「そうなんだ。でも、すぐにできるよ。だって、ボンネフェルトの町では騎士は大人気だもの」
慰めなんかじゃない。それは真実だからね。騎士は体が丈夫だし、お給金も高い。それに、絶対に護ってくれそうで安心するから。
でも、デニスは私の話を信用していないのか、辛そうな顔のままだ。
「あのね、ロンバウトのためにペンを買いたいんだけど、この銀製のペン軸のものと、陶器のペン軸、どっちがいいと思う?」
とりあえず話題を変えなければと思って、デニスに訊いてみた。
「どっちでもいいんじゃないか」
そうなんだよね。ちょっと渋い銀はロンバウトに似合うと思うけれど、上品な青い花が描かれた陶器製も捨てがたい。
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これを使ってロンバウトと話をすれば、あの美しい文字を保存しておける。とっても楽しみだ。
気がつくとデニスが不機嫌そうに睨んでいる。
「いい加減、諦めろ」
ラルスがそんなことを呟いていた。
お土産を選ぶのに時間をかけすぎでしまった。二人の自由時間が少なくなってしまったので怒っているみたい。
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太陽が真上にかかる頃、買い物と昼食を済ませて、ボンネフェルトへの帰路についた。
まだ訓練は続いていて、相変わらず私は貴婦人役を務めている。だけど、王都を追われたという設定が追加されたらしく、追手を撒きながらの逃避行のようだった。森の中を走ったり、小さな村で農家の納屋に泊めてもらったりと、それはそれで楽しい旅を経験できた。
王都を出て十日目の夕方、やっとボンネフェルトの町が見えてきた。煙が上がっているのは騎士団食堂の竈だ。夕食の用意で目も回るくらい忙しい時間だから。
ようやく帰ってくることができた。魔女に攫われたのが遠い昔に感じてしまう。
ちょっと涙ぐみながら町の門を眺めていると、ものすごい速さの物体がこちらの方へ向かってくる。
よく見ると、それはロンバウトだった。
「ラルスさん、降ろして」
そう頼むと、ラルスは軽々と私を馬から降ろしてくれた。
町の方へ向かって駆けていくと、近くまで走って来ていたロンバウトが急停止した。毛むくじゃらの大きな足が地面にめり込んでいる。大きく肩で息をしているので、本当に全速力で走ってきたみたい。
「ロンバウトさん、助けてくれてありがとう」
私はそっと右手を差し出した。しばらく家事をしていないので、前よりは綺麗になったと思う。それでもお姫様の手には程遠く、差し出すのはかなり恥ずかしい。
だけど、こうして礼をするのが騎士に助けられた時の作法らしいから、やるしかない。
ロンバウトが一歩前に出て片膝をついた。そして、優雅な動作で私の手をとる。
ゆっくりと彼の顔が私の右手の甲に近づいてきて、触れるだけのキスを落としてくれた。
ロンバウトは物語に出てくる格好良い騎士様そのものだった。
彼の尻尾が激しく左右に揺れている。本気で喜んでくれているみたいなので、やっぱりこれが正解だったらしい。
しばらくすると、口笛の音や歓声が聞こえてきた。
「アニカ、本当にするとは思わなかったぞ」
団長が腹を抱えて笑っているので、私は騙されていたらしい。
「ごめんなさい。団長の冗談を真に受けたみたい」
慌てて手を引き抜くと、ロンバウトは笑顔で首を横に振った。そして、立ち上がって石板に『お帰り』と書いた。
「ただいま」
『一緒に帰ろう』
ロンバウトが誘ってくれたので、私を騙した団長たちのことは無視して、歩いてボンネフェルトの町を目指すことにした。
「今日の夕食は何かな?」
やっとお父さんの料理を食べることができると思うと、すごくお腹が空いてきた。
『鶏を焼く匂いがしていた』
さすがロンバウトは鼻もいい。
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お話が終わって寂しいです。
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ロンバウトは、カッコいいけど、何をしても可愛いんだろうなって、ほっこりしてます!
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