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第四話 町へ
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ロンバウトが文字を書くことができると伝えたところ、父は町に行った折に石板と蝋石を手に入れてきた。
大きめの石板は食堂の入り口の壁に打ち付けられて、ロンバウトだけではなく誰でも連絡用に使えるようになった。
そして、昼寝から目覚めたロンバウトに小さな石板と蝋石を手渡した。彼は上着を脱ごうとしていたけれど、それを断って、自分で持ってきた布を地面に敷いて隣に座る。騎士服の下には薄い素材の下着を身に着けているだけなので、隣に座るのが恥ずかしい気がして布を持参していた。
「何か困ったことはない? 何でもここに書いてね。全部の要望を聞くのは無理だけど、できるだけ叶えたいと思うのよ。父はね、ここに住む若い騎士は家族も同然だといつも言っているの。ロンバウトさんだって同じよ」
そう伝えると、ロンバウトは嬉しそうに文字を書き始めた。
さすが貴族の教育を受けた近衛騎士なので、彼の文字はとても美しい。そんな整った文字で『料理が美味い』や『風呂が気持ちいい』と書かれた石板を見せてきた。
「本当に不満はないの?」
貴族の暮らしがどのようなものなのか想像もつかないけれど、ここの暮らしとは大きく違うと思う。そんな貴族の暮らしを二十年以上も経験してきたのだから、こんな田舎での暮らしに不満を持たないはずはない。
でも、ロンバウトはとても優しい性格なのだろう。私の問いに何度も頷いていた。
「ありがとう。私もね、ここが大好きなの」
私はこの地しか知らない。だからここが一番だと思う。
最初は遠巻きに見ていた騎士たちも徐々にロンバウトを受け入れ始めていた。食事も同年代の若い騎士と一緒に食べている。
ロンバウトも毎日楽しそうにしていた。
そんなある日、団長が私に話があるとやって来たのだった。
国境を守る役目を担う辺境伯はとても偉い貴族らしい。そんな辺境伯の弟である団長がわざわざ私に会いに来るなんて、初めてのことなのでとても緊張する。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だから。今日はアニカに頼みがあってやって来たんだ。ロンバウトを護衛にして町へ行ってもらえないだろうか? 別に用がある訳ではないので、買い物でも楽しんでくればいいから」
「何のためなのでしょうか?」
用もないのに町へ行けって、訳がわからないので思わず理由を訊いてしまった。もちろん団長に逆らうつもりはないけど。
「そのうちロンバウトに町の見回りをさせたいと考えている。しかし、あの姿の彼をいきなり町に連れて行っても驚かれるだけだ。だから、町の人に予め彼に馴れてもらいたい。それには、アニカと一緒に行ってもらうのがいいかと思うんだ。ほら、ごく普通の女性であるアニカが恐れていないのであれば、ロンバウトは危険ではないと町の人は感じるだろう? 強い騎士が一緒ではそうはいかない。騎士だから彼を恐れないと思われてしまう。我が騎士団は強いからな」
「ロンバウトさんを働かせるおつもりなのですか?」
ロンバウトは毎日楽しそうにしながら自由に過ごしている。団長はそんな彼に仕事をさせるつもりなのだろうか?
「ロンバウトは誇り高い近衛騎士だった。魔女に獣化の魔法をかけられ、獣の本能に引っ張られているところはあるが、彼は今でも騎士なのだ。だから、できるだけ彼を普通の騎士として扱ってやりたい。我が騎士団に加わった以上、この町を守り、ひいてはこの国を守る騎士の一員だからな」
ロンバウトを他の騎士と同じように遇したいという団長の思いは良くわかった。ロンバウトは優しい騎士だと私も知っている。
「わかりました。ロンバウトさんと町へ一緒に行きます」
少しでもロンバウトや団長の手助けができるのならば、とても嬉しいと思う。
「ロンバウトのあの姿は魔女の森の聖獣を模したものらしい。聖獣は生涯にただ一匹の相手としか番わないという。獣の姿になってしまったので、本能のまま女性を襲うのではないかと心配している者もいるが、それは大丈夫だからな。彼は人間の男より安全なくらいだ」
「そんなこと、心配はしていません」
最初は父も心配をしていたけれど、彼にそんな素振りは微塵もない。
そんな訳で、昼食後にロンバウトと街へ出かけることになってしまった。
辺境伯領の外れにあるここボンネフェルトの町の人口は五千人ほど。町の郊外にある騎士団駐屯地から歩いて一時間もかからないうちに中心地に着くくらい小さな町だ。
私の歩く速さに合わせてくれているのか、ロンバウトはきょろきょろと辺りを見ながらゆっくりと歩いている。
彼は腰に剣を下げていた。それは普通の騎士のようだけど、紐をつけた石板を鞄のように肩にかけているのがちょっと可愛い。
「足の裏は痛くないの?」
相変わらず彼は裸足だ。訓練場や独身寮の周りは草が生えていたり柔らかい土だったりするけれど、町の道は石でできている。ぷにぷにしていそうな肉球が傷つかないか心配だった。
私の方を見たロンバウトは、立ち止まって肩にかけていた石板を外して文字を書く。
『大丈夫。痛くない』
「それは良かったわ。ねえ、お菓子は好き?」
『食べる物は全て好き』
「それじゃ、町で有名なお菓子屋さんへ行ってみる? 店内にテーブルがあって、そこで食べることができるの」
そう訊くと、ふさふさの尻尾が激しく左右に揺れた。そして、ロンバウトはニコニコと頷いている。こんなに全身で喜んでいる姿もやっぱり可愛いと思う。
騎士団駐屯地の門を出てしばらく歩くと、ぽつぽつと家が見えはじめた。道を歩いている人たちはロンバウトを見て驚いていたけれど、騎士服を着ているからか、私が一緒にいるせいか、逃げ出すようなことはない。
道端で遊んでいた子どもたちは興味津々でこちらを眺めている。
「こんにちは。いい天気ね」
そう声をかけてみると、数人の子どもたちが走ってやって来る。
「そのしっぽ、本物なのか?」
ゆらゆらと揺れているロンバウトの尻尾を指差しながら一人の子どもが訊いてきた。
「そうよ。耳もね。彼はロンバウトさん。王都からこの町にやって来た騎士なのよ」
「王都の騎士様はこんな姿をしているのか。凄いな」
一人の子どもは納得したように頷いている。王都にはロンバウトのような騎士がいると思ったらしい。私だって王都がどんなところか全くわからないので、王都には彼のような人がいると言われると、そうかと思ってしまったかもしれない。
「大きくて丸い足がかわいい」
まだ幼い女の子がロンバウトの足を指差した。すると、彼は足を上げて裏を見せる。
「キャー! ほんとにかわいい。黒い丸いのがついている」
そう言われたロンバウトはにこっと笑った。女の子も笑い返す。
「ロンバウトさんはこれからも町の見回りをすることになるの。彼はとても強いのよ。よろしくね」
「うん。ロンバウト様みたいな騎士が見回ってくれたら心強い」
一番年長らしい男の子がそう言って礼をした。ロンバウトも小さな礼を返す。
傍で心配そうに見ていた大人たちも、その様子を見て安心したように頭を下げていた。
ロンバウトは思った以上に子どもたちに人気があった。可愛い姿と可愛い動作なので当然かもしれない。
団長の思惑通り、私と一緒なのが良かったと思う。他の騎士と一緒だと、こんなに気軽に声をかけてもらえないはずだ。町を守っている騎士は尊敬されているけれど、子どもたちに恐れられてもいる。町の母親たちは『悪いことをすると騎士様に連れていかれる』と子どもに教えているから。
町の人たちに挨拶をしながら歩いていると、随分と時間がかかってしまい、お腹が空いてきた。それはロンバウトも同じだったようで、少し元気がなくなってきている。
そして、ようやく商店街の一角にあるお菓子屋さんに着いた。
三脚用意されているテーブルの一つが空いていたので、私たちはそこで食べていくことにした。
この店で一番人気の果物がたっぷり入ったタルトと、二番人気のチーズケーキを頼む。どちらもあまり甘くなくて素材の味が活かされていると評判になっているものだ。
「どっちが好き?」
運ばれてきたタルトとケーキを前にしてロンバウトに訊くと、かなり悩んだ後、石板をテーブルに置いた。
『どっちも食べてみたい』
「じゃあ、半分こしようか?」
彼は嬉しそうに頷いた。
大きめの石板は食堂の入り口の壁に打ち付けられて、ロンバウトだけではなく誰でも連絡用に使えるようになった。
そして、昼寝から目覚めたロンバウトに小さな石板と蝋石を手渡した。彼は上着を脱ごうとしていたけれど、それを断って、自分で持ってきた布を地面に敷いて隣に座る。騎士服の下には薄い素材の下着を身に着けているだけなので、隣に座るのが恥ずかしい気がして布を持参していた。
「何か困ったことはない? 何でもここに書いてね。全部の要望を聞くのは無理だけど、できるだけ叶えたいと思うのよ。父はね、ここに住む若い騎士は家族も同然だといつも言っているの。ロンバウトさんだって同じよ」
そう伝えると、ロンバウトは嬉しそうに文字を書き始めた。
さすが貴族の教育を受けた近衛騎士なので、彼の文字はとても美しい。そんな整った文字で『料理が美味い』や『風呂が気持ちいい』と書かれた石板を見せてきた。
「本当に不満はないの?」
貴族の暮らしがどのようなものなのか想像もつかないけれど、ここの暮らしとは大きく違うと思う。そんな貴族の暮らしを二十年以上も経験してきたのだから、こんな田舎での暮らしに不満を持たないはずはない。
でも、ロンバウトはとても優しい性格なのだろう。私の問いに何度も頷いていた。
「ありがとう。私もね、ここが大好きなの」
私はこの地しか知らない。だからここが一番だと思う。
最初は遠巻きに見ていた騎士たちも徐々にロンバウトを受け入れ始めていた。食事も同年代の若い騎士と一緒に食べている。
ロンバウトも毎日楽しそうにしていた。
そんなある日、団長が私に話があるとやって来たのだった。
国境を守る役目を担う辺境伯はとても偉い貴族らしい。そんな辺境伯の弟である団長がわざわざ私に会いに来るなんて、初めてのことなのでとても緊張する。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だから。今日はアニカに頼みがあってやって来たんだ。ロンバウトを護衛にして町へ行ってもらえないだろうか? 別に用がある訳ではないので、買い物でも楽しんでくればいいから」
「何のためなのでしょうか?」
用もないのに町へ行けって、訳がわからないので思わず理由を訊いてしまった。もちろん団長に逆らうつもりはないけど。
「そのうちロンバウトに町の見回りをさせたいと考えている。しかし、あの姿の彼をいきなり町に連れて行っても驚かれるだけだ。だから、町の人に予め彼に馴れてもらいたい。それには、アニカと一緒に行ってもらうのがいいかと思うんだ。ほら、ごく普通の女性であるアニカが恐れていないのであれば、ロンバウトは危険ではないと町の人は感じるだろう? 強い騎士が一緒ではそうはいかない。騎士だから彼を恐れないと思われてしまう。我が騎士団は強いからな」
「ロンバウトさんを働かせるおつもりなのですか?」
ロンバウトは毎日楽しそうにしながら自由に過ごしている。団長はそんな彼に仕事をさせるつもりなのだろうか?
「ロンバウトは誇り高い近衛騎士だった。魔女に獣化の魔法をかけられ、獣の本能に引っ張られているところはあるが、彼は今でも騎士なのだ。だから、できるだけ彼を普通の騎士として扱ってやりたい。我が騎士団に加わった以上、この町を守り、ひいてはこの国を守る騎士の一員だからな」
ロンバウトを他の騎士と同じように遇したいという団長の思いは良くわかった。ロンバウトは優しい騎士だと私も知っている。
「わかりました。ロンバウトさんと町へ一緒に行きます」
少しでもロンバウトや団長の手助けができるのならば、とても嬉しいと思う。
「ロンバウトのあの姿は魔女の森の聖獣を模したものらしい。聖獣は生涯にただ一匹の相手としか番わないという。獣の姿になってしまったので、本能のまま女性を襲うのではないかと心配している者もいるが、それは大丈夫だからな。彼は人間の男より安全なくらいだ」
「そんなこと、心配はしていません」
最初は父も心配をしていたけれど、彼にそんな素振りは微塵もない。
そんな訳で、昼食後にロンバウトと街へ出かけることになってしまった。
辺境伯領の外れにあるここボンネフェルトの町の人口は五千人ほど。町の郊外にある騎士団駐屯地から歩いて一時間もかからないうちに中心地に着くくらい小さな町だ。
私の歩く速さに合わせてくれているのか、ロンバウトはきょろきょろと辺りを見ながらゆっくりと歩いている。
彼は腰に剣を下げていた。それは普通の騎士のようだけど、紐をつけた石板を鞄のように肩にかけているのがちょっと可愛い。
「足の裏は痛くないの?」
相変わらず彼は裸足だ。訓練場や独身寮の周りは草が生えていたり柔らかい土だったりするけれど、町の道は石でできている。ぷにぷにしていそうな肉球が傷つかないか心配だった。
私の方を見たロンバウトは、立ち止まって肩にかけていた石板を外して文字を書く。
『大丈夫。痛くない』
「それは良かったわ。ねえ、お菓子は好き?」
『食べる物は全て好き』
「それじゃ、町で有名なお菓子屋さんへ行ってみる? 店内にテーブルがあって、そこで食べることができるの」
そう訊くと、ふさふさの尻尾が激しく左右に揺れた。そして、ロンバウトはニコニコと頷いている。こんなに全身で喜んでいる姿もやっぱり可愛いと思う。
騎士団駐屯地の門を出てしばらく歩くと、ぽつぽつと家が見えはじめた。道を歩いている人たちはロンバウトを見て驚いていたけれど、騎士服を着ているからか、私が一緒にいるせいか、逃げ出すようなことはない。
道端で遊んでいた子どもたちは興味津々でこちらを眺めている。
「こんにちは。いい天気ね」
そう声をかけてみると、数人の子どもたちが走ってやって来る。
「そのしっぽ、本物なのか?」
ゆらゆらと揺れているロンバウトの尻尾を指差しながら一人の子どもが訊いてきた。
「そうよ。耳もね。彼はロンバウトさん。王都からこの町にやって来た騎士なのよ」
「王都の騎士様はこんな姿をしているのか。凄いな」
一人の子どもは納得したように頷いている。王都にはロンバウトのような騎士がいると思ったらしい。私だって王都がどんなところか全くわからないので、王都には彼のような人がいると言われると、そうかと思ってしまったかもしれない。
「大きくて丸い足がかわいい」
まだ幼い女の子がロンバウトの足を指差した。すると、彼は足を上げて裏を見せる。
「キャー! ほんとにかわいい。黒い丸いのがついている」
そう言われたロンバウトはにこっと笑った。女の子も笑い返す。
「ロンバウトさんはこれからも町の見回りをすることになるの。彼はとても強いのよ。よろしくね」
「うん。ロンバウト様みたいな騎士が見回ってくれたら心強い」
一番年長らしい男の子がそう言って礼をした。ロンバウトも小さな礼を返す。
傍で心配そうに見ていた大人たちも、その様子を見て安心したように頭を下げていた。
ロンバウトは思った以上に子どもたちに人気があった。可愛い姿と可愛い動作なので当然かもしれない。
団長の思惑通り、私と一緒なのが良かったと思う。他の騎士と一緒だと、こんなに気軽に声をかけてもらえないはずだ。町を守っている騎士は尊敬されているけれど、子どもたちに恐れられてもいる。町の母親たちは『悪いことをすると騎士様に連れていかれる』と子どもに教えているから。
町の人たちに挨拶をしながら歩いていると、随分と時間がかかってしまい、お腹が空いてきた。それはロンバウトも同じだったようで、少し元気がなくなってきている。
そして、ようやく商店街の一角にあるお菓子屋さんに着いた。
三脚用意されているテーブルの一つが空いていたので、私たちはそこで食べていくことにした。
この店で一番人気の果物がたっぷり入ったタルトと、二番人気のチーズケーキを頼む。どちらもあまり甘くなくて素材の味が活かされていると評判になっているものだ。
「どっちが好き?」
運ばれてきたタルトとケーキを前にしてロンバウトに訊くと、かなり悩んだ後、石板をテーブルに置いた。
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