健康で文化的な異世界生活

三郎吉央

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46.スライム水槽の設置と浄化能力

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日向ぼっこさせた翌日、スライムを飼育させている甕の蓋を取ると、昨日と違ってスライムは大人しく水中に沈んている。
やっぱり、逃げ出そうとしたのは日向ぼっこさせていなかったかららしい。

「マルカ、実験をするからスープの残りを持ってきて。」

昼食で出てきたなんだかよくわからない肉の味スープの残りを持ってきてもらうと、スライムの飼育甕に中身を空ける。
スープ皿1杯のスープによって甕の中の水は濁ってしまい、スライムの姿は見えなくなった。

「これで、しばらく様子を見よう。明日までにはスープの具材も沈んでスライムが見えるようになるだろう。」

スライムは放置して日課の屋敷内探検に出かけようかと思ったら、マルカがメリアに手紙を持ってきた。

手紙が来るところなんて初めて見た。
この世界でも手紙はあるんだね。

などと思ったら、
「ご主人様。トマスからご依頼の品が出来上がったので、面会したいともうしれがございました。トマスになにか作らせていたのですか?」
と、メリアが不思議そうな顔をして聞いてきた。

「え?何のこと?」

はて?トマスとは先日のトイレ設置をお願いした時以来会っていないけど、何のことだろう?

ボクが首を傾げると、すかさずマルカが、
「ご主人様。例のガラスで作らせたスライムの飼育器のことではございませんか?」
と、教えてくれた。

というか『作らせた』?

「え?無いって言ってたんじゃないの?
え?新しく作ったの?」

たしか聞いたときに無いって言って、それから……。
あれ?どうしたんだっけ?

「ご主人様、申し訳ございません。ご主人様が残念そうになさっておられたので、私がトマスに作れないかと頼んでおきました。勝手なことをいたしまして申し訳ございません。」

そう言ってマルカが頭を下げる。
その言葉にメリアがスイっと目を細める。

ヤバイ、このままじゃマルカが勝手に発注したことになっちゃう。

「ああ、思い出したよ。そういえば『何とかならないか?』って頼んだんだった。」
ボクが大げさに手を打って同意する。

ちょっとワザとらしかったかもしれないけど、メリアは軽い溜息をつき、
「それでは、どういたしますか?手紙には設置のため、面会させていただきたいとも書かれておりますよ?」

「わざわざ手紙なんて書かなくても持ってきてくれれば良いのに。」

ボクがそう言ったら、メリアが、
「ご主人様、トマスは許可無く入れないのです。今回はマルカが取り次ぎましたが、通常なら手紙も届きません。」
と、教えてくれた。

わざわざ『マルカが』と強調したのは、まだマルカが勝手にトマスに依頼したことが気に入らないのかな?

「でも、トマスは水槽を作ってくれたんでしょ?ボク、早く持ってきてほしいな。お願い、メリア。」

メリアに駆け寄ってメリアのスカートの裾を掴んで小首を傾げ、可愛らしく見えるように上目遣いに頼んでみる。

メリアはボクの顔を見て、
「!?、ま、まあ良いでしょう。トマスに持ってこさせましょう。」
と言って目を逸らした。

顔を逸らしてはいるが、耳まで真っ赤である。

おや?ゴマカシと面白半分であざとらしい演技をしてみたが、この『ぶりっ子』作戦は結構効果があるのかもしれないぞ?

やったね!と、マルカを見ると口元を手で隠し、同じく真っ赤になった顔でプルプルしている。

なんだ?マルカ、お前にも効いたのか?

「すぐに持ってきてくれるの?」

「いえ、手紙で来た依頼は1日以上空けて返すのが作法です。トマスが来るのは早くても3日後ですね。」

「えー、もっと早くなんないのー。」

ボクがブーブーと頬を膨らませて抗議したが、
「作法です。」
と、さすがに折れてはくれなかった。

何度か『ぶりっ子』作戦を実行してみたが、途中からメリアとマルカの二人が喜んでいる感じがあったので、逆効果だったかもしれない。
『ぶりっ子』作戦は使い時が難しいかもしれないなぁ。

ちなみに、スライムの甕に入れたスープは翌日にはキレイさっぱり消えており、底にも沈殿物さえ無かった。

スライムの見た目は全く変わっていなかったが、何故だろう?心なしか満足げな様に見える。

日向ぼっこさせてもらえる上、エサが毎日投入される飼育甕。
自由とか退屈とか意識しなければ居心地良い場所ななかもしれない。

だけど、捕まえてから甕の中を掃除したことは無いのに、甕の中にはゴミとか全く無い。

コイツ、ウンチとかしないのだろうか?
つくづく変な生き物だなぁ。
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