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36.水鉄砲とダンス
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「次は水鉄砲を作ってよ」
「ミズデプォ?なんですかい?そりゃあ」
「水を飛ばすオモチャ」
「どんな玩具ですかい?」
「えっとね。」
足下を見回すとサムがさっき節と節の間で切った竹筒が転がっていたので、先ず節の辺りを指差して、
「簡単だよ。ココに穴を開けて。」
次いで反対側の節のない切り口を指差して、
「コッチから布を巻いた棒を突っ込むだけ。」
「?」
ボクの言葉にサムが目を丸くする。
う~ん、伝わらないかな。
仕方ないのでマルカが机の上に広げた羊皮紙に図を描く。
図とは言ってもピストンを横から見ただけの簡単な図である。
そこに矢印と『シュコシュコ動く』と動き方を書いてもらう。
その図を見たサムは訳がわからないといった顔をしながら竹を切っていく。
まあ、見た事ないとわかんないだろうね。
ボクはサムが切ってくれた竹の中から片方だけ節の残った太い竹と節のある適当な細い竹を拾うと、細い方の竹にサムにもらったボロ布の切れ端を巻きつけてピストンになる部分を作っていく。
ボクが竹の棒に布を巻き付けていると、途中からマルカが手伝ってくれて何とか適当な太さのピストンが出来上がった。
次いで片方だけ節のある太い方の竹の節を指さして、
「ココに小さい穴開けて。」
と、サムに水の吐出口を開けてもらう。
そしてボロ布を巻いた細い方の竹の棒を反対側の筒状になった部分に押し込む。
「む?入らない?」
細い方の竹にボロ布を撒きすぎたのか、なかなか押し込めない。
「貸して頂けますか?」
見かねてテレサが横から手を出し、ボロ布の部分を手でギュッと握る。
と、思ったら、ボロ布の部分が圧縮されたのか、すんなりと太い方の竹の筒になった部分に収まった。
「おおー!」
なるほど、そうやれば良かったんだね。
感心しながらもボクは竹筒に突っ込まれてピストンになった細い竹を押し引きしてみる。
シュコシュコとピストンを押し引きすると、太い竹の節に開けた穴から風がヒューヒューと吐き出されてボクの前髪をくすぐる。
「おおー!」
上手く作れた様だ。
押し引きが少し重いが、これなら水を吸いこんで棒を押し込めば水を飛ばす事が出来そうだ。
「サム、水有る?」
「へい?飲み水ならそこの水甕に……。」
「飲み水でしたら私どもでご用意させていただきます。」
マルカがサムの言葉を遮ったが、今欲しいのは飲み水ではない。
「飲むんじゃないからどんな水でも良いよ?」
「そ、それなら井戸水を汲んで来まさぁ。」
そう言ってサムが立ち上がったので、ボクも一緒に立ち上がる。
「ボクも行く。」
水鉄砲で遊ぶためには屋外へ行かなければならないのだし、何よりも井戸の近くなら水の補給もやりやすいだろう。
4人で井戸の近くまで移動し、サムがロープが結えられた手桶で汲み上げてくれた水に水鉄砲の先を浸けて水を吸い込ませると、先を広場に向けてピストンを押し込む。
すると水鉄砲の吐出口から水が噴き出してピューッと勢いよく水が飛んでいく。
成功だー!
「やったぁ!飛んだよ!」
「ぅわっぷ!?」
「あっ!?」
しまった。
テンションが上がってそのまま振り返ったら、サムの顔に水がかかってしまった!
「あ、ご、ゴメ、ゴメン……。」
慌ててサムに駆け寄って謝る。
「ふぇ?あ?あいや!大丈夫でごぜえますよ!」
「で、でも……。」
「コレを使いなさい。」
ボクがオロオロしていると、マルカが横からハンカチをサムに差し出してくれた。
「いや、このくらいすぐに乾きま……。」
「使い、なさい。」
「へ、へい。」
サムは断ろうとしたがマルカの圧に負けてハンカチを受け取ってそそくさと顔を拭う。
「ごめんね。サム。」
ボクがもう一度サムに謝ると、
「いやいや、本当に大丈夫でごぜえますよ。皆さん方みたいに上手く避けられんかっただけでごぜえますから、気にせんでくだせえ。」
「だけど……。」
こういう時、サムみたいな立場の人は怒るに怒れなくて我慢してるんじゃ無いだろうか?
だが、マルカが、
「ご主人様、サムも赦すと言っていますので、よろしいのでは?それよりも先ほどのミズデプォで遊びましょう。ほら、テレサが構えて居ますよ?」
と言ってボクの肩をそっと押してテレサの方を向かせる。
見るとテレサが『私ですか?』といった感じの顔をしている。
「さ、どうぞ。テレサに当ててみてください。この様に。」
マルカはそう言ってボクの手に手を添えてテレサに向かって水鉄砲を発射した。
『いきなり何するの!?』なんていう暇もなく水が発射される。
「え?」
発射される水。
しかしテレサには当たらずに彼女の横の地面に落ちた。
ちなみにボクとテレサは1メートルちょっと位しか離れていない。
え?この距離で避けた?
いや、外れただけか?
もう一度発射してみる。
やっぱり外れた。
というか、テレサが微妙に動いて避けている?
疑問形なのは、テレサの動きがあまりに自然で動いているように見えないほどに優雅だからだ。
「おおっ?!」
なんということだろう!
ピュッピュッと短く連続発射したり、ピューッと長く発射してもテレサはほとんど動かずに避けてみせた。
しかも長いスカートの服を着ているのにスカートは広がったり揺れたりもしていない。
「おお~!?スゴイスゴイ!?」
そう言ってボクが手を叩くとテレサはスカートを摘んで少し持ち上げて優雅に挨拶をする。
飛んでくる水をあれだけ躱したのに全く息も乱れていない様子だ。
もしかしてテレサってものすごく運動神経が良いんじゃないだろうか?
それともみんなそのくらい出来るのだろうか?
「……。」
思わずマルカを見る。
マルカはボクと目が合うとスカートを少し持ち上げて、
「どうぞ。」
と、自信あり気に言った。
結果、マルカにも全く当たらなかった。
というか、マルカは飛んでくる前に避け始めており、水の飛沫が飛ぶ様子さえ演出だと言わんばかりで、まるでダンスの様に華麗に避けていた。
「「おお~!」」
一通り打ち終わった後、ボクとサムが感嘆の拍手を贈る。
「お粗末さまです。」
マルカはそう言って優雅に礼をした。
こ、これはもしかしてこのレベルが普通なのか?
と、驚嘆して今度はサムを見ると、
「む、無理です。ムリです。」
サムはボクと目が合うと即座に手と首をブルブルと振った。
まあ、サムはお爺ちゃんだからなぁ。
その後、サムが用意してくれた的を狙ってみんなで的当てをしたりと楽しい時を過ごした。
ちなみに、意外にも的当てはサムが一番上手だった。
ピストンになっている棒を押す時の力加減が難しく、あまりに当たらないのでテレサなんて力一杯押して吐出口になっている節を破壊してしまったりした。
そんなハプニングもあったが、外で遊ぶのは思いの外楽しくて、レーネが呼びに来た頃には夕暮れ時になっていた。
どうやらメリアはボクたちがすぐに帰ると思っていたらしく、心配しているらしい。
まだまだ遊び足りなかったけど、
「今度は噴水を作るから竹をいっぱい用意しといてね。」
と、サムに頼んで帰った。
余談だが、帰るとメリアは一階まで降りて来ており、
「今度遅くなる時はレーネに言伝てください。」
と叱られた。
どうやら次回からはレーネも来るらしい。
その夜は晩御飯もいつもよりたくさん食べてぐっすり眠った。
いつも寝付きは良いんだけど、身体を動かしたりよく笑ったりしたせいか夢も見ないほどよく眠れた。
やっぱり適度な運動と笑顔は大事だよね。
さあて、次はどんなオモチャを作ろうかな。
「ミズデプォ?なんですかい?そりゃあ」
「水を飛ばすオモチャ」
「どんな玩具ですかい?」
「えっとね。」
足下を見回すとサムがさっき節と節の間で切った竹筒が転がっていたので、先ず節の辺りを指差して、
「簡単だよ。ココに穴を開けて。」
次いで反対側の節のない切り口を指差して、
「コッチから布を巻いた棒を突っ込むだけ。」
「?」
ボクの言葉にサムが目を丸くする。
う~ん、伝わらないかな。
仕方ないのでマルカが机の上に広げた羊皮紙に図を描く。
図とは言ってもピストンを横から見ただけの簡単な図である。
そこに矢印と『シュコシュコ動く』と動き方を書いてもらう。
その図を見たサムは訳がわからないといった顔をしながら竹を切っていく。
まあ、見た事ないとわかんないだろうね。
ボクはサムが切ってくれた竹の中から片方だけ節の残った太い竹と節のある適当な細い竹を拾うと、細い方の竹にサムにもらったボロ布の切れ端を巻きつけてピストンになる部分を作っていく。
ボクが竹の棒に布を巻き付けていると、途中からマルカが手伝ってくれて何とか適当な太さのピストンが出来上がった。
次いで片方だけ節のある太い方の竹の節を指さして、
「ココに小さい穴開けて。」
と、サムに水の吐出口を開けてもらう。
そしてボロ布を巻いた細い方の竹の棒を反対側の筒状になった部分に押し込む。
「む?入らない?」
細い方の竹にボロ布を撒きすぎたのか、なかなか押し込めない。
「貸して頂けますか?」
見かねてテレサが横から手を出し、ボロ布の部分を手でギュッと握る。
と、思ったら、ボロ布の部分が圧縮されたのか、すんなりと太い方の竹の筒になった部分に収まった。
「おおー!」
なるほど、そうやれば良かったんだね。
感心しながらもボクは竹筒に突っ込まれてピストンになった細い竹を押し引きしてみる。
シュコシュコとピストンを押し引きすると、太い竹の節に開けた穴から風がヒューヒューと吐き出されてボクの前髪をくすぐる。
「おおー!」
上手く作れた様だ。
押し引きが少し重いが、これなら水を吸いこんで棒を押し込めば水を飛ばす事が出来そうだ。
「サム、水有る?」
「へい?飲み水ならそこの水甕に……。」
「飲み水でしたら私どもでご用意させていただきます。」
マルカがサムの言葉を遮ったが、今欲しいのは飲み水ではない。
「飲むんじゃないからどんな水でも良いよ?」
「そ、それなら井戸水を汲んで来まさぁ。」
そう言ってサムが立ち上がったので、ボクも一緒に立ち上がる。
「ボクも行く。」
水鉄砲で遊ぶためには屋外へ行かなければならないのだし、何よりも井戸の近くなら水の補給もやりやすいだろう。
4人で井戸の近くまで移動し、サムがロープが結えられた手桶で汲み上げてくれた水に水鉄砲の先を浸けて水を吸い込ませると、先を広場に向けてピストンを押し込む。
すると水鉄砲の吐出口から水が噴き出してピューッと勢いよく水が飛んでいく。
成功だー!
「やったぁ!飛んだよ!」
「ぅわっぷ!?」
「あっ!?」
しまった。
テンションが上がってそのまま振り返ったら、サムの顔に水がかかってしまった!
「あ、ご、ゴメ、ゴメン……。」
慌ててサムに駆け寄って謝る。
「ふぇ?あ?あいや!大丈夫でごぜえますよ!」
「で、でも……。」
「コレを使いなさい。」
ボクがオロオロしていると、マルカが横からハンカチをサムに差し出してくれた。
「いや、このくらいすぐに乾きま……。」
「使い、なさい。」
「へ、へい。」
サムは断ろうとしたがマルカの圧に負けてハンカチを受け取ってそそくさと顔を拭う。
「ごめんね。サム。」
ボクがもう一度サムに謝ると、
「いやいや、本当に大丈夫でごぜえますよ。皆さん方みたいに上手く避けられんかっただけでごぜえますから、気にせんでくだせえ。」
「だけど……。」
こういう時、サムみたいな立場の人は怒るに怒れなくて我慢してるんじゃ無いだろうか?
だが、マルカが、
「ご主人様、サムも赦すと言っていますので、よろしいのでは?それよりも先ほどのミズデプォで遊びましょう。ほら、テレサが構えて居ますよ?」
と言ってボクの肩をそっと押してテレサの方を向かせる。
見るとテレサが『私ですか?』といった感じの顔をしている。
「さ、どうぞ。テレサに当ててみてください。この様に。」
マルカはそう言ってボクの手に手を添えてテレサに向かって水鉄砲を発射した。
『いきなり何するの!?』なんていう暇もなく水が発射される。
「え?」
発射される水。
しかしテレサには当たらずに彼女の横の地面に落ちた。
ちなみにボクとテレサは1メートルちょっと位しか離れていない。
え?この距離で避けた?
いや、外れただけか?
もう一度発射してみる。
やっぱり外れた。
というか、テレサが微妙に動いて避けている?
疑問形なのは、テレサの動きがあまりに自然で動いているように見えないほどに優雅だからだ。
「おおっ?!」
なんということだろう!
ピュッピュッと短く連続発射したり、ピューッと長く発射してもテレサはほとんど動かずに避けてみせた。
しかも長いスカートの服を着ているのにスカートは広がったり揺れたりもしていない。
「おお~!?スゴイスゴイ!?」
そう言ってボクが手を叩くとテレサはスカートを摘んで少し持ち上げて優雅に挨拶をする。
飛んでくる水をあれだけ躱したのに全く息も乱れていない様子だ。
もしかしてテレサってものすごく運動神経が良いんじゃないだろうか?
それともみんなそのくらい出来るのだろうか?
「……。」
思わずマルカを見る。
マルカはボクと目が合うとスカートを少し持ち上げて、
「どうぞ。」
と、自信あり気に言った。
結果、マルカにも全く当たらなかった。
というか、マルカは飛んでくる前に避け始めており、水の飛沫が飛ぶ様子さえ演出だと言わんばかりで、まるでダンスの様に華麗に避けていた。
「「おお~!」」
一通り打ち終わった後、ボクとサムが感嘆の拍手を贈る。
「お粗末さまです。」
マルカはそう言って優雅に礼をした。
こ、これはもしかしてこのレベルが普通なのか?
と、驚嘆して今度はサムを見ると、
「む、無理です。ムリです。」
サムはボクと目が合うと即座に手と首をブルブルと振った。
まあ、サムはお爺ちゃんだからなぁ。
その後、サムが用意してくれた的を狙ってみんなで的当てをしたりと楽しい時を過ごした。
ちなみに、意外にも的当てはサムが一番上手だった。
ピストンになっている棒を押す時の力加減が難しく、あまりに当たらないのでテレサなんて力一杯押して吐出口になっている節を破壊してしまったりした。
そんなハプニングもあったが、外で遊ぶのは思いの外楽しくて、レーネが呼びに来た頃には夕暮れ時になっていた。
どうやらメリアはボクたちがすぐに帰ると思っていたらしく、心配しているらしい。
まだまだ遊び足りなかったけど、
「今度は噴水を作るから竹をいっぱい用意しといてね。」
と、サムに頼んで帰った。
余談だが、帰るとメリアは一階まで降りて来ており、
「今度遅くなる時はレーネに言伝てください。」
と叱られた。
どうやら次回からはレーネも来るらしい。
その夜は晩御飯もいつもよりたくさん食べてぐっすり眠った。
いつも寝付きは良いんだけど、身体を動かしたりよく笑ったりしたせいか夢も見ないほどよく眠れた。
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