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31.新顔との遭遇と良いものみつけた

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壁に沿ってしばらく進んでいくと、木々の間から小屋が見えてくる。
多分さっきテレサが言っていた森番の小屋だろう。

小屋が近づいてくると、さっきの煙は炊事のモノではなかったらしく小屋の煙突から煙は出ていなかった。
代わりに、庭にある焼却炉のようなところで二人の人が何かをしていた。

「あれは何をしているの?」

ゴミでも燃やしているのだろうか?などと想像しながらメリアに聞いてみると、
「さあ、何をしているんでしょうね。」
と、メリアがボクの頭をなでながら答える。
どうやら、メリアも何をしているのか分からなかったらしい。

ボクはさっきメリアがやったように壁をコンコンとノックして、
「あの人たちは何をしているの?」
と、壁に向かって尋ねた。

すると、突然馬車の前側の壁にかかっていた小さな絵がスライドして小窓が口を開けた。
うっわ!びっくりした!そういう作りになっていたのか!

そこからレーネの顔が見えて、
「失礼いたします。何か燃やしているんだと思いますが、何をしているのか今テレサが尋ねに行きました。」
小屋の方を見ると、テレサが二人の人影に何か話しかけているところだった。

仕事が早いなぁ。
などと、感心しているとテレサが振り返って戻ってきた。
と、同時に、作業していた人たちもこちらに気付いたのだろう、跪いて頭を下げている。

「失礼いたします。あれは粘土で排水管を作って焼いているのだそうです。」
え?排水管を自分で作ってるの?

「そんなの自分で作れるの?」

「寸法が分かっていれば作れるのではないでしょうか。」
と、テレサが答える。

いやいや、焼き物って土の収縮とかあるからそんなに簡単にはいかないでしょう?

「見てみたい!」

元気よく言ったら、メリアは困ったような苦笑いのような顔をしていた。
ん?なんか変なこと言っただろうか?

「それではこちらへどうぞ。」

マルカに手を引いてもらって馬車から降りる。

向こうではテレサが二人の男の人と話をしているが、男の人たちはイヤイヤをするように首を振ったり手を振ったりしている。

「嫌がってる?」

マルカに聞くと、
「その様なことはありませんよ。少し畏れ多いと思っているだけですよ。」
マルカがニッコリ笑って答えたが、考えてみれば、オーナー社長の会社で社長の息子が職場に遊びに来たようなものだし、社員としては嫌かもしれない。

でも、見たいものは見たい。

ボクが二人の前まで行くと、二人は両手を胸の前で交差させ、両ヒザを地面に付けて頭を下げて土下座のような最敬礼の姿勢で待っている。

そこまでしてもらわなくても良いのに。
でも、そうさせたのはボクだ。
わかっていても、どんなことをやっているのか知りたいんだから仕方ない。

「楽にしてよ。それより、どうやって作るのか、教えてよ。」

ボクがそう言うと、二人は恐る恐ると言った感じで上目遣いでチラチラとこっちを見る。
割と若い男性ともう一人は髭もじゃのお爺さんって感じの人だ。

「ご主人様は許すと仰られているのです。答えない方が不敬になりますよ。」
マルカがなんだか迫力のある低い声色で、静かに、ゆっくりと言った。

ヒィイ!怖いから!不敬なんて、そんなに大したことじゃないから!

二人のうち、若い方の男はその一言で涙目になってしまった。

「あ~、排水菅なんて、土こねて形を作って焼くだけでさぁ。」

「灰はかけたりしないの?」

ボクの言葉にお爺さんの目が丸くなる。

「よ、よくご存じで。暖炉の残り灰と粘土を水に溶いてかけて焼きます。」

「そうなのか、これはどんな形のものもできるの?」

「いえ、わしらは専門の職人じゃないんで排水用の管を作るぐらいでさ。」

ふむ、それでも、そんなものを自作できるってスゴイと思うな。

「いいね。また何か作ってもらおう。」

そう言ったボクの言葉を聞いて、お爺さんは目をパチパチして驚いていた。

「名前は?」

「え?サムでさ。」

「ターナーです。」

うん、お爺さんがサム、若い人がターナーさんだね。

「サムさんとターナーさんだね。覚えた。」

サムさんとターナーさんはお互いの顔を見合わせて、なんで覚えるんだろうって顔をしていた。

ボクとしては、コルネロの時もそうだったけど、こういう『なにか作れる人』というのは知り合いになっておきたいのだ。

「またなにか頼むと思うから、よろしくね。」

そう言って、周りを見回すと、小屋の横らへんに緑色をした丸くてつるつるした木のようなものが落ちていた。
あれ?あれって……。

ボクがそちらに歩いていくと、テレサとマルカがついてくる。
サムさんとターナーさんは、どうしたらいいか迷っているようで、跪いた位置でとどまっている。

「これは何?」
さっき見つけた青いパイプのようになった木、おそらくは『竹』を指さす。

「これはカサムという木ですが、これが何か?」
サムさんやターナーさんではなく、マルカが答えた。
どうやら竹はこの世界でも一般的なモノらしい。

良いもの見~つけた。
ボクは思わず笑顔になるのだった。
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