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26.テレサの仕置き
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水場へ入ってから4日が過ぎ、ボクは何とか復活した。
天気は雨のようで薄暗い。
まだ食欲は湧かないけど昼食は食べる。
食べないと元気になれない。
ボソボソと昼食をとったあと、館の中へ散歩に行くことにする。
部屋を出ようとしたらメリアにスゴく心配された。
まだ身体が本調子じゃないし大広間を何周か回ったら帰ってこよう。
そう思ってテレサを目で探したが、テレサがいない。
あれ?今日は非番なのかな?
「テレサは?」
そう聞いたボクの言葉にメイド達はひきつり、メリアは怒ったように表情を歪めた。
「彼女は事情があって家に帰ったんですよ。」
すぐに笑顔を取り繕ったけど、メリアの表情から彼女が責任を取らされたのであろうと直感できた。
きっとボクが倒れたせいだ。
「テレサは悪くない。」
メリアもボクの顔を見て何が言いたいのか覚ったのだろう。
だけど、少し怒ったような顔になって言った。
「彼女はご主人様が水場へ入るのを止めませんでした。」
「違うよ。ボクが入るって言ったんだ。」
「それでも、彼女は止めることが出来たのに止めませんでした。」
「違う。テレサもコルネロも止めたんだ!それでも、ボクが入るって言ったんだ!」
「それでも!たとえご主人様に背こうとも!彼女は止めなければなりませんでした!」
メリアの口調が強くなる。
でも、ボクは折れない。
折れるわけにはいかない。
「テレサは悪くない。」
メリアの眼をジッと見る。
しばらくにらみあう。
周りではメイド達がオロオロしているけど、二人とも折れない。
しばらくにらみあっていたけど、メリアも折れる様子がないので、
「テレサが罰を受けるなら、無理に入ったボクも罰を受ける。」
ボクはそう言って寝室へ戻りベッドへ入った。
あんなことでテレサが居なくなるのはイヤだ。
ハンガーストライキだ。
それからはワインを薄めたジュースだけで過ごした。
「ご主人様、お願いですからどうかお食事をお召し上がりください。」
「いやだ。テレサが戻らないなら食べない。」
メリアが何度も説得と懇願に来たけれど、食べ物は食べなかった。
二日目、お腹がグーグー鳴りっぱなしで頭がクラクラしてきた。
「ご主人様、テレサは決して罰してはいません。彼女はちょっと家に帰っているだけなのですよ。ですからスープだけでも食べましょう?」
「そんなこと言ってもテレサは帰ってこないじゃないか。ボクからテレサを取り上げないでよ。」
正直、子供の身体にはキツイ。
だけど『もう取り上げられるのは嫌だ』という想いをバネに踏ん張った。
3日目の朝、さすがにお腹が空いて動けなくなった。
たった3日なのに、子供の身体は脆弱だ。
と、メイドが良いにおいのするスープを持ってきた。
た、食べたい……。
でも、ダメだ。
でも食べたい……。
誘惑に負けじと布団を頭からかぶって抵抗していると、
「ご主人様、お食事をお摂りくださいませんか?」
そう呼びかけるテレサの声が聞こえた。
あれ?テレサ?
え?でも……まぼろし?
そうっと布団から頭を出すと、そこには、ベッド横の台にスープ皿をのせたトレイを置いてこっちを見ているテレサがいた。
「テレサ、帰ってきたの?!」
ボクは飛び起きて、そのままヘニャっと、前のめりに崩れる。
ダ、ダメだ、お腹が空きすぎて立てない。
「ご主人様、大丈夫ですか?私は戻ってきましたので、これを食べてください。」
そう言ってボクを助け起こすと、スプーンにスープを少し掬ってボクの口元へ持ってきてくれた。
そのスプーンにボクは遠慮なくかぶりつく。
歯がスプーンに当たってガキッって音がするが、そんなのはおかまいなしだ。
2日ぶりに口に入れた食べ物は、とても甘く感じた。
ボクはテレサの持ってきてくれたスープ皿を手に取ると、すごい勢いでスープを飲み干す。
「テレサ、良かった……。」
お腹に食べ物が入ったことで少し安堵できた。
そして頭がすっきりしたと同時に、急に気持ちが盛り上がってきた。
「ごめんね……テレサ。ごめんね……ウッ、ウィッ…ック。」
空になったスープ皿にレーネがスープを注いでくれる。
「ご、ゴメ、ウィッっく…ズルズル……。」
ボクはボロボロと涙と鼻水を流しながら、その注いでくれたスープを飲み干していく。
「何を謝られることなどございましょうか。ご主人様は私を助けてくれたのですから、私がお礼を言わなければなりません。」
そういうテレサも目が潤んでるじゃないか。
でも、良かった。
もう取りあげられなくてよかった。
失わなくてよかった。
ボクは泣きながらスープを飲んで、そのまま寝てしまったのだろう。
次に気が付いた時には、テレサの膝の上で彼女の服を掴んで寝ていた。
泣きながら寝ていたのか、テレサのスカートは涎と鼻水と涙でグチャグチャになっていた。
傍らにはメリアもいる。
「メリア、ありがとう。テレサを呼び戻してくれて。」
そう言うと、メリアは少し怒ったような顔をして、
「何をおっしゃいますか。彼女の罰を自分がお受けになるとおっしゃったのではございませんか。呼び戻したのはご主人様です。」
メリアはそう言ってツーンと目をそらしたけれど、
「ありがとう、メリア。だいすきだよ。」
そう言ってボクはメリアのおなかに抱き着いた。
結局、メリアはボクの頭をなでてくれたのだから、丸く収めてくれたということなのだろう。
ホッとしたボクのお腹からグーという音が鳴った。
安心したら、またお腹が空いてしまった。
「とにかく!顔を洗ってから夕餐といたしましょう!」
ボクたちは、そういったメリアと一緒にリビングへ向かうのだった。
テレサが戻ってくれた。
居なくならなくて良かった。
本当に良かった。
天気は雨のようで薄暗い。
まだ食欲は湧かないけど昼食は食べる。
食べないと元気になれない。
ボソボソと昼食をとったあと、館の中へ散歩に行くことにする。
部屋を出ようとしたらメリアにスゴく心配された。
まだ身体が本調子じゃないし大広間を何周か回ったら帰ってこよう。
そう思ってテレサを目で探したが、テレサがいない。
あれ?今日は非番なのかな?
「テレサは?」
そう聞いたボクの言葉にメイド達はひきつり、メリアは怒ったように表情を歪めた。
「彼女は事情があって家に帰ったんですよ。」
すぐに笑顔を取り繕ったけど、メリアの表情から彼女が責任を取らされたのであろうと直感できた。
きっとボクが倒れたせいだ。
「テレサは悪くない。」
メリアもボクの顔を見て何が言いたいのか覚ったのだろう。
だけど、少し怒ったような顔になって言った。
「彼女はご主人様が水場へ入るのを止めませんでした。」
「違うよ。ボクが入るって言ったんだ。」
「それでも、彼女は止めることが出来たのに止めませんでした。」
「違う。テレサもコルネロも止めたんだ!それでも、ボクが入るって言ったんだ!」
「それでも!たとえご主人様に背こうとも!彼女は止めなければなりませんでした!」
メリアの口調が強くなる。
でも、ボクは折れない。
折れるわけにはいかない。
「テレサは悪くない。」
メリアの眼をジッと見る。
しばらくにらみあう。
周りではメイド達がオロオロしているけど、二人とも折れない。
しばらくにらみあっていたけど、メリアも折れる様子がないので、
「テレサが罰を受けるなら、無理に入ったボクも罰を受ける。」
ボクはそう言って寝室へ戻りベッドへ入った。
あんなことでテレサが居なくなるのはイヤだ。
ハンガーストライキだ。
それからはワインを薄めたジュースだけで過ごした。
「ご主人様、お願いですからどうかお食事をお召し上がりください。」
「いやだ。テレサが戻らないなら食べない。」
メリアが何度も説得と懇願に来たけれど、食べ物は食べなかった。
二日目、お腹がグーグー鳴りっぱなしで頭がクラクラしてきた。
「ご主人様、テレサは決して罰してはいません。彼女はちょっと家に帰っているだけなのですよ。ですからスープだけでも食べましょう?」
「そんなこと言ってもテレサは帰ってこないじゃないか。ボクからテレサを取り上げないでよ。」
正直、子供の身体にはキツイ。
だけど『もう取り上げられるのは嫌だ』という想いをバネに踏ん張った。
3日目の朝、さすがにお腹が空いて動けなくなった。
たった3日なのに、子供の身体は脆弱だ。
と、メイドが良いにおいのするスープを持ってきた。
た、食べたい……。
でも、ダメだ。
でも食べたい……。
誘惑に負けじと布団を頭からかぶって抵抗していると、
「ご主人様、お食事をお摂りくださいませんか?」
そう呼びかけるテレサの声が聞こえた。
あれ?テレサ?
え?でも……まぼろし?
そうっと布団から頭を出すと、そこには、ベッド横の台にスープ皿をのせたトレイを置いてこっちを見ているテレサがいた。
「テレサ、帰ってきたの?!」
ボクは飛び起きて、そのままヘニャっと、前のめりに崩れる。
ダ、ダメだ、お腹が空きすぎて立てない。
「ご主人様、大丈夫ですか?私は戻ってきましたので、これを食べてください。」
そう言ってボクを助け起こすと、スプーンにスープを少し掬ってボクの口元へ持ってきてくれた。
そのスプーンにボクは遠慮なくかぶりつく。
歯がスプーンに当たってガキッって音がするが、そんなのはおかまいなしだ。
2日ぶりに口に入れた食べ物は、とても甘く感じた。
ボクはテレサの持ってきてくれたスープ皿を手に取ると、すごい勢いでスープを飲み干す。
「テレサ、良かった……。」
お腹に食べ物が入ったことで少し安堵できた。
そして頭がすっきりしたと同時に、急に気持ちが盛り上がってきた。
「ごめんね……テレサ。ごめんね……ウッ、ウィッ…ック。」
空になったスープ皿にレーネがスープを注いでくれる。
「ご、ゴメ、ウィッっく…ズルズル……。」
ボクはボロボロと涙と鼻水を流しながら、その注いでくれたスープを飲み干していく。
「何を謝られることなどございましょうか。ご主人様は私を助けてくれたのですから、私がお礼を言わなければなりません。」
そういうテレサも目が潤んでるじゃないか。
でも、良かった。
もう取りあげられなくてよかった。
失わなくてよかった。
ボクは泣きながらスープを飲んで、そのまま寝てしまったのだろう。
次に気が付いた時には、テレサの膝の上で彼女の服を掴んで寝ていた。
泣きながら寝ていたのか、テレサのスカートは涎と鼻水と涙でグチャグチャになっていた。
傍らにはメリアもいる。
「メリア、ありがとう。テレサを呼び戻してくれて。」
そう言うと、メリアは少し怒ったような顔をして、
「何をおっしゃいますか。彼女の罰を自分がお受けになるとおっしゃったのではございませんか。呼び戻したのはご主人様です。」
メリアはそう言ってツーンと目をそらしたけれど、
「ありがとう、メリア。だいすきだよ。」
そう言ってボクはメリアのおなかに抱き着いた。
結局、メリアはボクの頭をなでてくれたのだから、丸く収めてくれたということなのだろう。
ホッとしたボクのお腹からグーという音が鳴った。
安心したら、またお腹が空いてしまった。
「とにかく!顔を洗ってから夕餐といたしましょう!」
ボクたちは、そういったメリアと一緒にリビングへ向かうのだった。
テレサが戻ってくれた。
居なくならなくて良かった。
本当に良かった。
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