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それぞれの答え③

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 しばらくの沈黙の後、最初に口を開いたのはイワンだ。

「自分は命を預けられる指揮官に出会ったッス! かつてはオルロフ中将、そして今はリチャード団長ッス。お二人は地位や名誉を求めないから、もらった恩を形で返すのは難しいッス。だから自分は彼らの手足となり、寄せられた信頼を裏切らないと決めてるッス!」

 迷いなく発言したイワンとは対照的に、オリヴァーは深く考えながら話し始めた。

「僕は……初めて外の世界を見て……上手くいかないことばかりだと歯がゆい思いを何度もした。パラスリリーでは考えられないような貧困や人間の奢りは、生きることの本質を何度も考えさせられるものだった……」

 ナリスバーグは各所で明と暗が顕著に現れる国だった。

「ほんの一例に過ぎなくとも、僕の価値観は揺らいでしまった。パラスリリーの話し合いで全てを解決しようという姿勢には限界があるって」

 オリヴァーは両手でギュッと拳を握った。

「いや、もうすでに限界は来ているんだ」

 リチャードが秘密裏に問題を処理しているが、人々は病死や失踪などと聞かされている現状がある。

「話し合いでは誰も傷つかない方法を見つけられない。でも暴力で支配するのはもっとダメだ。研究者として何かできることがあるはずなんだ。あんな風に痩せ細り希望を失った子供を増やしちゃいけない。研究者に必要なのは皆の笑顔だから」

 パラスリリーを出て、オリヴァーの救いたい対象がもっと広がった。

「まだまだ現状に満足しないで、研究を続ける。僕は全ての選択肢を与えられても、やっぱり研究者であり続けるよ」

 
 私の番が回ってきた。

 誰もが静かに耳を傾け、決して茶化すことのない空気の中で、絶対に嘘を吐きたくない。
 虚栄やその場しのぎの言葉で、自分の価値を低めるようなことをしたくない。

 深く息を吸って、思ったことをありのまま話す。

「私は誰かを守れるほど強くありません。ちょっと薬ができたくらいで有頂天になって、勝算もないのに海に飛び出して……本当に自分のことでいっぱいいっぱいなんです」

 人のためを実践できるのは、イワンやオリヴァーのような資質が必要だ。

「だから何ができて、どんな場面で役に立てるかはまだ模索中です。ただどうやって生きていくかを決めました」

 近くにあったジョッキで酒をグイっと飲んで、自らを鼓舞する。

「偉いからとか強いからっていう理由で、盲目的に従うのをやめます!!」

 アルコールが一気に体内を駆け巡ったせいで頭がクラクラするが、私の正直な気持ちを吐露した。

「それが美徳だと思ってた時期もありました。でも失敗して後悔したんです。何も成し遂げられなくても、自分で選んだ道を正解だって胸張れるようになりたいです!!」

 私たちの決意表明を聞き終えると、サイスは満足そうに次のジョッキを手に持った。

「ガーハッハッハー! おめぇらが散る時はまだ来ねぇから安心しろ! 迷い悩み信じ掴み、そうやってデカくなっていくんだ。死神リーパー海賊団とパラスリリーに幸あれ!!」

 ガツンとジョッキ同士をぶつける乾杯は、賑やかな宴の中に溶けていった。


 パラスリリーはもうすぐというところに迫っている。
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