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衝撃②
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オリヴァーは再びベッド横の椅子に座った。
「あのネックレスは――」
「知ってるよ。クロエだろう? あんな珍しくて高価な宝石を持っているのはあいつしかいない。今、リチャードが取り調べしてるよ」
今回の件に婚約者が関与していると思っているオリヴァーは、きっと心苦しいだろう。
「クロエさんは良い人ですよ。だからきっと何かの間違いです」
オリヴァーの手がおでこにポンと置かれる。
「サクラは優しいなぁ」
「さっきと真逆のこと言ってるじゃないですか。婚約者さんを信じてあげてください」
オリヴァーはきょとんとした。
(私が知ってること知らないんだっけ)
「何を言ってるんだ? 僕は婚約なんてしていないよ?」
オリヴァーの返答は私を混乱させる。
「だってクロエさんが――」
「君はクロエの嘘に騙されたんだ。僕たちはそんな関係じゃない」
あれほど泣き悩んだことが、今覆された。
病み上がりの私は誤魔化しも見栄を張ることもできず、ただただ涙が流れた。
(――――すごく嬉しい)
安堵感か独占欲なのか分からないが、自分が彼岸から帰って来たことよりオリヴァーがこれからもオリヴァーでいることが嬉しかった。
そして随分と自分を騙していたことに気付いた。
ハラハラと泣いているだけの私を見てオリヴァーは慌てる。
「どうした、サクラ!? どこか痛いの?」
「ううん。何でもないです」
涙を拭っていると荒々しく研究所の扉が開く。
「オリヴァー! 今いいか?」
来訪者はリチャードのようだ。
部屋に入ったリチャードは、泣いている私とそれをあやすオリヴァーを見て押し黙った。
「サクラが目を覚ましたんだよ!」
嬉しそうなオリヴァーを見て、修羅場ではないと察したリチャードは続ける。
「心配したぞ。またお前の減らず口が聞けるんだな」
相変わらずのリチャードににっこりと微笑む。
「オリヴァー、ちょっといいか? 2人だけで話したい」
リチャードはオリヴァーを連れて研究室に移動した。
(何だろう。気になる)
2人が研究室に入ってまもなく、私は重だるい体を引きずって研究室に隣接する扉に耳を当てる。
盗み聞きは悪いことだが、きっと今回のことについてだろう。
私も無関係ではないから、聞く権利はあるはずだ。
扉の向こうで声がする。
「あのネックレスは――」
「知ってるよ。クロエだろう? あんな珍しくて高価な宝石を持っているのはあいつしかいない。今、リチャードが取り調べしてるよ」
今回の件に婚約者が関与していると思っているオリヴァーは、きっと心苦しいだろう。
「クロエさんは良い人ですよ。だからきっと何かの間違いです」
オリヴァーの手がおでこにポンと置かれる。
「サクラは優しいなぁ」
「さっきと真逆のこと言ってるじゃないですか。婚約者さんを信じてあげてください」
オリヴァーはきょとんとした。
(私が知ってること知らないんだっけ)
「何を言ってるんだ? 僕は婚約なんてしていないよ?」
オリヴァーの返答は私を混乱させる。
「だってクロエさんが――」
「君はクロエの嘘に騙されたんだ。僕たちはそんな関係じゃない」
あれほど泣き悩んだことが、今覆された。
病み上がりの私は誤魔化しも見栄を張ることもできず、ただただ涙が流れた。
(――――すごく嬉しい)
安堵感か独占欲なのか分からないが、自分が彼岸から帰って来たことよりオリヴァーがこれからもオリヴァーでいることが嬉しかった。
そして随分と自分を騙していたことに気付いた。
ハラハラと泣いているだけの私を見てオリヴァーは慌てる。
「どうした、サクラ!? どこか痛いの?」
「ううん。何でもないです」
涙を拭っていると荒々しく研究所の扉が開く。
「オリヴァー! 今いいか?」
来訪者はリチャードのようだ。
部屋に入ったリチャードは、泣いている私とそれをあやすオリヴァーを見て押し黙った。
「サクラが目を覚ましたんだよ!」
嬉しそうなオリヴァーを見て、修羅場ではないと察したリチャードは続ける。
「心配したぞ。またお前の減らず口が聞けるんだな」
相変わらずのリチャードににっこりと微笑む。
「オリヴァー、ちょっといいか? 2人だけで話したい」
リチャードはオリヴァーを連れて研究室に移動した。
(何だろう。気になる)
2人が研究室に入ってまもなく、私は重だるい体を引きずって研究室に隣接する扉に耳を当てる。
盗み聞きは悪いことだが、きっと今回のことについてだろう。
私も無関係ではないから、聞く権利はあるはずだ。
扉の向こうで声がする。
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