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睦言
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体を洗い、ベッドに入る頃にはもうクタクタだった。
ハンスの腕枕はどんな枕よりフカフカで安定感がある。
少し硬いが、俺は硬い枕が好みだ。
「お前に渡したい物がある」
「?」
ハンスが見せたのは、以前俺にくれたピアスだ。
「あーっ! それ失くしたと思ってたんだ!」
フレデリクによって北の台地に連れて行かれた時、既になかったものだ。
「騒動後、判決が出た際に、俺が受け取った。装飾品を持って流刑地に行ける者などいない。宰相に取られるくらいならと、俺が預かることにした」
「そうだったのか! でもよく許してもらえたな? あの時はハンスだって大罪人だったのに」
「もう一度つけてくれるか?」
ハンスは俺の右耳にピアスをつけてくれた。
「恋人の形見が欲しいと言ったら、すんなり渡してもらえた。まあ、お前が流刑地で3日と持たず死ぬなどと、妄言を吐かれたがな」
「本当に形見にならなくて良かったな……」
「なあ、ハンスは俺のどこが好きなわけ?」
ずっと聞きたかったことだ。
こんなに美麗な男に愛される覚えなんてないからな。
ハンスは俺の頭を撫で、額にキスをした。
「全てだ。初めて会った時から、ずっと。俺は一目惚れする質ではないと思っていたが、案外惚れっぽいのかもしれない」
「ちょっと待てよ! じゃあ、ハンスは俺の顔が好きで、俺に似てれば別のヤツを好きになるかもしれないってことか!?」
クスクスと笑う余裕のある大人なハンスに対し、俺は嫉妬丸出しである。
もしかしてヤリモクか!?
1回ヤったから、もうポイッてことか?
俺の発想はどんどん飛躍し、眠気で赤みを帯びた目を潤ませた。
ハンスが本当にそのつもりなら、俺はここで王宮中に聞こえるほど大泣きしてやる!!
「そうじゃない。俺はお前以外を好きになることはない。お前のその目に、俺だけが映れば良いと常日頃思っている。お前が思うより、俺は嫉妬深く幼稚だ」
ハンスの目には、俺が映っている。
同じように今の俺の目には、ハンスがいるんだ。
「じゃあ、ずっとこうして見つめ合っとけばいいじゃん。俺は死ぬまでやっても良いぜ?」
「ダメだ」
チュッと触れるだけのキス。
「見つめ合っていると、キスできない」
「ハハッ、何だよそれ!! 俺はずっとハンスが好きだって言いたかっただけだよ!」
この世界に来る前。
一度ヤったら愛情が冷めるとか、自称恋愛マスターのヤリ珍ヤリ満の方々が言っていた。
人を好きになって性欲が沸き起こるってのは当たり前で、やることやった後には心が変わってしまうものだと思ってた。
だが、そんなことはないんだと、今の俺は分かる。
ハンスの温もりを全身で感じて、こうやって話してる時、愛情の木がグングン成長している。
それはきっとハンスも同じで、だから俺たちは寝る間も惜しんで時間を共有している。
けれど、それももう限界。
なんせ、俺は流刑から帰ってきたばっかなんだ。
ハンスだって疲れてるだろうに、訓練を積んだ騎士様は違うねぇ。
久しぶりにフカフカベッドで過ごす夜は、俺を眠りへと引きずり込む。
「純、真実の愛のことだが」
「う~ん、俺……眠くなっちゃったぁ。……また、明日ぁ……」
朝起きて、ハンスがいなくなってたらどうしよう。
何かの間違いで、俺たちの関係はやっぱり罪だと言われたらどうしよう。
この幸せが永遠に続けば良い――。
俺はこれを恋だの愛だのと言い出した人に言いたい。
こんなめんどくせぇ感情に名前をつけてくれてありがとうって。
ハンスの腕枕はどんな枕よりフカフカで安定感がある。
少し硬いが、俺は硬い枕が好みだ。
「お前に渡したい物がある」
「?」
ハンスが見せたのは、以前俺にくれたピアスだ。
「あーっ! それ失くしたと思ってたんだ!」
フレデリクによって北の台地に連れて行かれた時、既になかったものだ。
「騒動後、判決が出た際に、俺が受け取った。装飾品を持って流刑地に行ける者などいない。宰相に取られるくらいならと、俺が預かることにした」
「そうだったのか! でもよく許してもらえたな? あの時はハンスだって大罪人だったのに」
「もう一度つけてくれるか?」
ハンスは俺の右耳にピアスをつけてくれた。
「恋人の形見が欲しいと言ったら、すんなり渡してもらえた。まあ、お前が流刑地で3日と持たず死ぬなどと、妄言を吐かれたがな」
「本当に形見にならなくて良かったな……」
「なあ、ハンスは俺のどこが好きなわけ?」
ずっと聞きたかったことだ。
こんなに美麗な男に愛される覚えなんてないからな。
ハンスは俺の頭を撫で、額にキスをした。
「全てだ。初めて会った時から、ずっと。俺は一目惚れする質ではないと思っていたが、案外惚れっぽいのかもしれない」
「ちょっと待てよ! じゃあ、ハンスは俺の顔が好きで、俺に似てれば別のヤツを好きになるかもしれないってことか!?」
クスクスと笑う余裕のある大人なハンスに対し、俺は嫉妬丸出しである。
もしかしてヤリモクか!?
1回ヤったから、もうポイッてことか?
俺の発想はどんどん飛躍し、眠気で赤みを帯びた目を潤ませた。
ハンスが本当にそのつもりなら、俺はここで王宮中に聞こえるほど大泣きしてやる!!
「そうじゃない。俺はお前以外を好きになることはない。お前のその目に、俺だけが映れば良いと常日頃思っている。お前が思うより、俺は嫉妬深く幼稚だ」
ハンスの目には、俺が映っている。
同じように今の俺の目には、ハンスがいるんだ。
「じゃあ、ずっとこうして見つめ合っとけばいいじゃん。俺は死ぬまでやっても良いぜ?」
「ダメだ」
チュッと触れるだけのキス。
「見つめ合っていると、キスできない」
「ハハッ、何だよそれ!! 俺はずっとハンスが好きだって言いたかっただけだよ!」
この世界に来る前。
一度ヤったら愛情が冷めるとか、自称恋愛マスターのヤリ珍ヤリ満の方々が言っていた。
人を好きになって性欲が沸き起こるってのは当たり前で、やることやった後には心が変わってしまうものだと思ってた。
だが、そんなことはないんだと、今の俺は分かる。
ハンスの温もりを全身で感じて、こうやって話してる時、愛情の木がグングン成長している。
それはきっとハンスも同じで、だから俺たちは寝る間も惜しんで時間を共有している。
けれど、それももう限界。
なんせ、俺は流刑から帰ってきたばっかなんだ。
ハンスだって疲れてるだろうに、訓練を積んだ騎士様は違うねぇ。
久しぶりにフカフカベッドで過ごす夜は、俺を眠りへと引きずり込む。
「純、真実の愛のことだが」
「う~ん、俺……眠くなっちゃったぁ。……また、明日ぁ……」
朝起きて、ハンスがいなくなってたらどうしよう。
何かの間違いで、俺たちの関係はやっぱり罪だと言われたらどうしよう。
この幸せが永遠に続けば良い――。
俺はこれを恋だの愛だのと言い出した人に言いたい。
こんなめんどくせぇ感情に名前をつけてくれてありがとうって。
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